まずは身近なメディアと関係を

現実を知らない人々の医者叩きの影響は深刻です.何よりも,若い優秀な人たちが,みんな臨床現場を避けて通るようになってしまう.そして,今は辛うじて持ちこたえている中堅層が教育(臨床研修必修化)・診療の両方の負担増大に耐え切れず逃げ出す.このままですと,本当にまともな人間が臨床現場からいなくなってしまって,お金の面よりも人材面から日本の医療は沈没します。

みなさんの所属している学会は,報道関係者にどう対応していますか?あるいは学会のように大きな集まりではなくても,地域で催される小さな研究会や,医師会の地道な活動を,地域の人々により広く知ってもらうために,地元の報道機関に連絡をとるだけでも勉強になりますよ.いきなり修羅場に曝される前に,こういうやさしいところから取り掛かるのも,立派なリスクマネジメントです.天下国家のメディアを論ずるのも結構ですが,医療は地場産業.まず,自分の地域のメディアといい関係を作っていくことが,身近な現実の利益→社会の利益に繋がります.

長期的な目標である一般市民の科学的リテラシーの醸成については10年単位の時間がかかるにしても(そんなもん、100年たってもできるわけがないと悲観的な見方をする人が多いのですが,私はできると思っています.詳細についてはおいおい),その大前提である良質なジャーナリストを守り、育てる仕事に,早急に取り掛かる必要があります.それは皆さんでもできることです.地域で医療をやっているのなら,地域でジャーナリストを育てるのです.

学会開催時の報道対応は,十分な準備時間と,報道内容から考えても,医療事故などの際の防御的対応より,はるかにやりやすいはずです.しかし,そのやさしいはずの対応さえ満足にできていない学会の何と多いことか.普段から,学会のような無難なチャンネルで,ジャーナリストといい関係を作っておけば,修羅場の防御的対応にも役立つというものです.また,どの学会も,自分達の学問の成果を社会に還元しようと必ず考えているはず.ならば,自分達の学問の成果を一般市民に伝えてくれる人々を尊重すべきでしょう.下記は,あるフリーランスジャーナリストの方が,糖尿病学会の優れた対応を評価したコメントです.こういう真っ当な人もいるのです。

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私は自分の所属する出版社や新聞社を持たずに、医療分野を取材しているフリーランスジャーナリストです。生業としては、新聞や雑誌などに企画やコラム連載などを単発で契約して売ったり、単行本を書いたりするという形をとっています。各学会の方々が、大手新聞社の記者の皆様についてどんな対応をなさっているかはわかりません。また製薬会社からの御招待なども来ない立場ですのでその現状なども知りません。この投稿はあくまで、フリーランスジャーナリストの立場で学会に参加した感想を書いたものであることを御理解いただけたらと思います。

今回、有楽町フォーラムで行われた糖尿病学会は、プレスの受け付けの対応がきちんとしていたこと、コンパクトなプログラムや抄録集一式が受け付けで配布されたこと、記事を送るためのパソコンブースなどが設置されていたことなど、記者にとって取材のしやすい環境だったと思います。記事の扱いは、その内容の重要性を記者がどう判断したかで決まることが多いのだと思いますが、取材のしやすさ、情報を提供する側の協力体制などにも影響される部分があるかもしれません。
フリーランスライターとして日頃、医学会を取材して感じていることを書きます。新聞記者の方とは少し立場が違うかもしれませんが、メディアと医療がいい関係をつくるために以下書いてみました。

 学会のすべてをオープンにする必要があるのかどうかは議論があると思いますが、医療の最新情報が全国から集まる機会でもありますので、メディアを積極的に利用することが、今回のように全国に必要な情報を効率よく届ける場合も少なくないと感じています。また私のようにすぐ何かの媒体に書く予定がなくとも少し長期的に医療のテーマを追ってみたいという動機で参加する記者もいることを知っていただけるとうれしいと思います。

1プレスの取材申込み
 普通、学会の事務局に電話をして取材申込みをしますがその時に、「当日はプレス窓口が設置してありますので、そちらに名前を登録しておきます」という対応がベストです。しかし事前の対応がない場合には、当日もプレス窓口がないこともあり、入り口で拒否されたり、目の前で扱いを検討されることもあります。逆に当日、急に受け付けに行っても名刺で確認をとり入れていただける場合もあります。

2費用
私はフリーランスで媒体が1つではないので、窓口で請求されれば必要経費(勉強のための費用)として参加費を払う場合もありますが、お金を払って取材をするということには、心理的に少し抵抗があります。糖尿病学会は窓口があり無料でした。

3窓口での対応
窓口でプレス用の腕章やネームカードをいただけると仕事が楽になります。(糖尿病学会では、招待者のネームカードでした)プレス窓口がしっかりした学会では抄録や会場案内のコンパクトなものや資料一式などをいただける場合が多く、会場でも動きやすいし、取材のやる気も出ます。(ちなみにランチョンセミナーというのは、私がトロいせいだと思いますが仕組みがわからなくていつもうまく入れません)

4記事について
学会発表の内容については、記事の扱いにもよりますが、当日現場で聞いたことをそのまま書いて出せる場合と、周辺取材をしなければならないと判断する場合があります。よくシンポジウムが終了したあとなどにシンポジストの先生に名刺交換などをお願いししますが、マスコミと言った途端にあからさまにイヤな顔をされることがあります。早く正確な記事をと考えていることも多いので、偏見を持たず協力していただけるとうれしく思います。また取材に協力していただいた場合には、協力者だけでなく学会事務局にも掲載誌(紙)を送るなどの礼儀も記者として必要だと思いっています。
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