あなたは厚労省を非難したことがあるだろうか?もし,あるとしたら,次の等式を検討してもらいたい
「厚労省はけしからん」=「厚労省はもっとしっかり働いてもらいたい」=「厚労省さん,どうかよろしくお願いします.あなたが頼りなんです」
相手が一国の首相であれ,役所であれ,配偶者であれ,非難は依存の一表現型に過ぎない.相手に文句を言えば言うほど,相手に対する依存度が高い.相手はそれを見透かしているからこそ,どんなに非難されようとも,平気で存在し続けている.いや,正確に言うと,決して,”平気”ではない.自分が助けている相手から全く評価されず,非難されるばかりだとしたら,誰が平気でいられるものか.
「そんなに文句を言うんだったら,お前がやってみろ」 そう言われないのは、あなたが相手から憐れみをかけてもらっているからだ.あなたは,お上の御慈悲にすがって,初めて商売ができているのだ.霞ヶ関に足を向けて寝ていないかどうか,早速今晩,確認しておいた方がいいだろう.
一億三千万の国民から依存されるお上のお慈悲に限界があってはならない.では,無限のお上のお慈悲を支えるものは何か?それは中で働いている生身の人間である.お上のお慈悲には限界があってはならないとしても,生身の人間の体力,気力,時間には当然限界がある.
一億三千万の国民から依存される役人たちは,家庭も顧みずに,個人の情熱と体力をありったけ投入して,組織として限りない慈悲を維持しようとする.組織であるからには,優秀な人に仕事が集中したり,根回し,尻拭いといった民間会社と共通のメカニズムがあらゆるところで作用する上に,さらに,連日泊り込みの国会待機,夜討ち朝駆けの政治家教育(レク:レクチャー)といった,中央官庁特有のとんでもないおまけがついてくる.なのに給料は民間より高くなることは決してないし,天下りで生涯賃金の低さを補うこともできなくなった.
どこかで似たような話を聞いたことはないだろうか.とぼけないでもらいたい.そう,医療崩壊ならぬ行政崩壊がすでに始まっているのだ.
行政崩壊の進行は、人事院の2006年度国家公務員長期病休者実態調査を見れば一目瞭然だ。2006年度の長期病休の原因となった傷病で最も多いのは、「精神及び行動の障害」3,849人(全長期病休者の63.0%)で、5年前の2001年度の前回調査に比べ1,631人増加している。これを長期病休者率でみると、1.28%となり、前回調査の0.46%の3倍近くと大幅に増加している。グラフを見てもらいたい。
驚くべきことは、この5年間の間に、独立行政法人が増えたため、調査対象の国家公務員数は独立行政法人化によって2001年度の48万人から30万人へ6割に減少した(この削減も国民の皆様のおかげである)にも関わらず、精神及び行動の障害による長期病休者は、逆に、2218人から、3849人,1.7倍に増えている。行政崩壊を示す何よりの証拠である.
彼らは,兵隊さんよありがたうの向こうを張って,役人さんよありがたうと歌ってくれ とは,決して言わない.そんな弱音を吐くような奴に中央官庁の役人は務まらない.うつ病で戦線離脱・敵前逃亡するような奴にも用はない.過労死しても,自殺しても,勲章が出たり神社に祭られることもない,帝国陸海軍よりもさらに厳しい組織,それが厚生労働省である.
淋しいけれど母さまと
今日もまどかに眠るのも
兵隊さんのおかげです
お国のために お国のために戦死した
兵隊さんのおかげです
えっ?戦線離脱・敵前逃亡で前線が崩壊しているなんて知らなかったって?とぼけないでもらいたいですな.だって,厚生労働省を大本営と呼んで誹謗中傷していたのは,あなたでしょ.今更,しらばっくれんじゃないよ.大本営と呼ぶのなら,いずれは崩壊するってことがわかっていたはずじゃないか.
そんなこと言ったって,霞ヶ関に厚労省の建物は建っているし,厚生労働大臣も,事務次官も,局長もいるじゃないかだって?つき合ってられねえな.昭和20年8月の関東軍にだって,8月9日までは,本部の建物もあったし,大将も中将も少将も参謀もいただろうよ.でも,肝心の兵隊さんはいなかった.南方へ引き抜かれ,そこで野垂れ死にしていたからだ.
厚労省を非難し,その結果厚労省を潰しにかかっている人々は,医療崩壊の報いでは飽きたらずに,行政崩壊の自業自得まで欲する点で,自分たちを守ってくれた兵隊さんや大本営に感謝していた大東亜戦争中の帝国臣民よりも,確実に愚かである.