リトビネンコ毒殺の症例報告
タリウムを始めとして酷似した臨床症状を呈する中毒疾患は多々あるようなので、参考になるかも知れないと思い、投稿する次第です。リトビネンコ氏の毒殺はこれまで様々な媒体で取り上げられていましたが、英国で公聴会が終了し、最終報告書が今年1月に提出されたことに伴い、この報告ができるようになったとのことです。
要約を読んだだけなのですが、Clostridium difficile腸炎で発症し→数日後に血小板減少→好中球減少・骨髄抑制・脱毛・重症の粘膜炎→あらゆる治療に反応しない感染症・多臓器不全で、全経過23日で死亡しています。毒殺の手段は、推定投与量、数ギガベクレル(って想像もつきません)を食塩に混ぜたと推測されています。
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ロシアから英国への亡命者のポロニウム210による毒殺が判明するまでの経緯 BioTodayニュースレター 2016年7月26日
ロシアからイギリスに亡命したアレクサンドル・リトビネンコ(Alexander Litvinenko)氏の死の原因がポロニウム(Po)210であることが判明するまでの経緯や死後解析結果を記した論文が発表されました。Po210中毒の初期症状はタリウムなどの有毒化学物質の症状と見分けがつかず、このため診断が遅れました。ロシアからの亡命者、しかも、粘膜炎・脱毛・骨髄不全などの非定型な経過ということで、放射性物質中毒も疑われたのですが、標準的なガイガーカウンターによる体表放射線検出ではPoからのα線は検出できず、第22病日(死亡前日)にようやく、尿のγ線分光測定によって、Po210中毒と診断できました。
Polonium-210 poisoning: a first-hand account. Lancet. Published Online:22 July 2016
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ポロニウムは「1 mgにつき5gのラジウムとほぼ同数のα粒子を放射する」(Wikipedia)のだそうです。毒性の主体はアルファ線とのことですが、803keVのガンマー線出すそうで、この検出が診断の決め手になったようです。
↓ こんなサイトもあります。御参考までに。
タバコと放射性物質(特にポロニウム210)について
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