日本では医者が余っていると信じて疑わないおめでたい人はこんなところを読んではいないだろうから,この際,読者の対象にはしない.なぜこんなに医者が足りないのか?答えは簡単だ.仕事量に比して,人数が少ないから.では,なぜ,こんなに医者の仕事量が多いのか?それはあなたが医者に何でもやらせようとするから.それをいいことに,”患者様のために”という醜いスローガンのもとに医者はどんどん仕事を引き受けてしまうから.
たとえばターミナルケアなんて,坊主の仕事だったんだ.それを縁起が悪いからとか言って,地域社会から追い出しちまって,医者に任せたのはあんただよ.そこで医者のやってることって,坊主の仕事とどこが違うのさ.心のケアとやらだってそうさ.精神科医なんて,抗うつ薬と抗精神病薬の処方箋書くしか能のない連中ばかりなんだぜ.あんなやつらが心のケアなんてちゃんちゃらおかしい(それより,クロルプロマジンのことをCPとか略称で書いたり,薬剤ごとではなくて,食事ごとに書くのは間違いのもとだから,そういう悪習やめてもらうほうがはるかに世の中の役に立つんだが,危機管理のセンスが全然ないから一向に改めない)
在宅の吸引はヘルパーや家族にどんどんやらせる.挿管は救急車の中で救急救命士に全部やってもらう.一家に一台AED.費用対効果の裏づけのないFDG-PETによる癌検診のボイコット運動を展開し,腫瘍内科医なんていらないよと患者側から声を上げる.
”何かあったら,どうする?”馬鹿言っちゃいけない.何かはあるんだよ.絶対あるの.それをろくろく教育もされていない医者にやらせるのか,きちんと訓練されているヘルパーにやらせるのか,どちらを選ぶのかって問題だろ.ヘルパーにやらせた方がずっと安全で事故が少なくできるんだよ.なのに,お医者様に時代錯誤のパターナリズムを求めようとするから,あいつらつけあがって,もったいぶって,仕事を増やしちゃあ,抱えたおもちゃをコントロールしきれなくなって,人が足りない,事故が起こるのはこんなに忙しくて余裕がないからだ,労働基準法違反だ,過労死だと言いたい放題じゃねえの.
彼らから仕事を奪う時が来ている.勝手に忙しがっている医者から,恩着せがましく仕事を分捕って,あなたの商売にする時期に来ている.医者の負担を軽減し,医者不足解消に貢献するばかりでなく,これであなたもお医者様ってわけだ.ただし商売相手はゼロリスク探求症候群という,不治の病であることをお忘れなく.
参考文献:「医者のいないところで」