臨床開発による成長
時間がかかる×→時間をかける○

(ある人から、ある難病の新薬開発希望を持ちかけられて)

臨床開発はもちろん精神力だけでできる仕事じゃありません。モチベーションの高いスタート時点は、大切な教育機会です。ここで、開発とはどういうものか、なぜ規制が必要なのか、現実的なシナリオ、マイルストーンを提示するのが必須です。この機会を逸すると、あと数年後に「やっぱり駄目だった。厚労省が悪いんだ」でおしまいになります。それは最悪です。

下記は事実です。意地悪でも何でもありません。この事実を知らせずに開発話を進めるのは詐欺以外の何物でもありません。
いずれの数字も製薬協のホームページに載っています
○リード化合物が承認に行くまでの確率は1/31064です。
○リード化合物の発見から承認までは9年から17年かかります。
製薬企業がやってこの数字です。

以上を踏まえて初めて、だったら、各ステークホルダーが、
「自分が(ここが非常に大切!学習は当事者意識があって初めて成り立つ)やれるのはどこまでだろう」
と考えるようになります。そんな簡単な事実を提示しただけで、そこまでも行かないようであれば、それまでです。

そうやって、各ステークホルダーに「覚悟」ができて初めて、開発の初歩から学ぼう、そして開発を通して成長していこうという気になり、開発の途中でぶち当たる様々な困難からの学習効率も非常に高くなります。

開発そのものは途中で挫折する確率の方が高いわけです。だとすれば、開発途上で、薬という物以外の、無形の果実を得るスキームをはじめから仕組んでおく必要があるでしょう。それが各ステークホルダーが当事者意識を持って開発に関与することによる成長なのです。

いただいた書類を見ると、患者さんの家族にせよ、研究者、お医者さんにせよ、「お金を積めば”専門家”が働いてくれるだろう、自分たちには、お金だけ集めればいいだろう。開発なんて難しいことはわからない、勉強したくない=成長したくない」
ステークホルダーそのものなのに、今から当事者意識の喪失が見え見えなのです。これでは開発がうまくいくはずがありません。

各ステークホルダーが当事者意識を持って知恵を出し合い、5年10年と時間をかけて困難を克服していって初めて薬を世に出すことができる。この最も重要なことを、各ステークホルダーに叩き込む。これが臨床開発スタートにあたって必須の教育項目です。後で言うと、必ず「約束が違う」となりますから、必ずスタート時点です。

時間がかかる(評論家・主体性のなさ・時間を厄介者扱い)→時間をかける(当事者意識・主体性の復活&時間を投資する) との読み替えは、ここでも威力を発揮します。

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