検診におけるトレードオフ

検査,、特にその中でも検診は、そのベネフィットがにわかに判断し難いのに過大評価される。その一方でリスクが無視されがちである点、ワクチンと 好対照を成している。このようなリスク認知の歪みがどのような機序で生じるのかは別として、この歪みを是正するためには、こつこつとエビデンスを 積み重ねていくのが、実は一番効率的だろう。検診大国日本でこそ、検診のエビデンスについて質の高い、独創的な仕事ができるはずなのだが、全く出 てこないのは、如何なる機序によるのか、それこそ究明すれば、これもトップジャーナルに掲載できる独創的な論文になる。

---------------------------------------------
【アメリカ】肺がん低線量CT検診、NLSTで過剰診断-JAMA
QlifePro  2014年01月03日
http://www.qlifepro.com/news/20140103/lung-cancer-low-dose-ct-screening-nlst-excessive-diagnostic-jama-intern-med.html

米肺がんスクリーニング有効性試験データを解析
 2011年8月に報告された米国立がん研究所(NCI:National Cancer
Institute)による全米肺がんスクリーニング試験(NLST:National Lung Screening
Trial)のデータを解析した結果、各種肺がんで18.5%~78.9%の過剰診断が生じることが示された。
 デューク大学医療センターのエドワード・F・パッツ氏(Edward F. Patz Jr,
MD)らの研究チームによる今回の報告は、2013年12月9日、米国医師会雑誌(内科)(JAMA Internal Medicine:
Journal of the American Medical Association Internal Medicine)
電子版に掲載された。

NLST、気管支肺胞上皮癌(BAC)の過剰診断率78.9%
 NLSTでは、2002年8月から2004年4月の間に米国33箇所の医療機関において、年齢55~74歳で、年間喫煙量が30箱以上の喫煙者 (過去 15年以内の喫煙経験者を含む)53,452名を登録。胸部CT検査と胸部X線検査を毎年受診する2群にランダム化し、6.4年間(中央値)の調 査により 有効性が比較検討された。
 NLSTの結果、CT検査による肺がん死亡率は、20.0%(95% CI、6.8%~26.7%、P=0.004)の相対的低下を示し、有効性が立証されたとした。
 しかし、パッツ氏らにより、NLSTデータを用いて過剰診断について検討が行われた結果、全肺がんで18.5%(95%
CI、5.4%~30.6%)、非小細胞がん(NSCLC:non-small-cell carcinoma)で22.5%(95%
CI、9.7%~34.3%)、気管支肺胞上皮がん(BAC:bronchioalveolar carcinoma)で78.9%(95%
CI、62.2%~93.5%)となった。
 また、肺がんによる死亡1名を防ぐためには、320名の検診を必要とし、それによる過剰診断は1.38名となることが示された。
 報告書では、定期検診により死亡率減少がもたらされる一方で、無痛性腫瘍・低悪性度腫瘍も検出され、過剰診断はさらなるコスト負担、不安、過治 療による罹患率の上昇といった有害性がもたらされることを訴えている。(本田 基)

▼外部リンク
Overdiagnosis in Low-Dose Computed Tomography Screening for Lung Cancer
http://archinte.jamanetwork.com/
---------------------------------------------

二条河原へ戻る