在宅医療の魅力
ーアウェイはホームになるー

「朝 目がさめる。起きて顔を洗う、歯を磨き、ひげをそる。家族と話しながら朝食をとる。コーヒーを飲みながら新聞に目を通す。ネクタイを締め、洋服を着、クツ をはいて出かける。いつも混んだ電車に乗り、幸い足も踏まれずに駅におりる。さあ、会社では山積みの仕事だ。こんな日常のなんでもない生活や動作の、どれ ひとつをとってみても、脳や神経系の働きなしにはうまくできないものばかりです。・・・」
(豊倉康夫 『日常の中の神経学』 より)

も しあなたが在宅医療に携わったことがあるのなら,初めて患者さんのお宅に訪れた時の興奮を今でもはっきり覚えているに違いない.医師免許を持っているとい うだけで,住居侵入罪に問われることなく,他人の家にずかずか入り込むどころか,どんな食事をしているだの,排泄はどうしているだの,家族関係はどうのだ の,警察官でも絶対に聞き出せない秘密を暴露してもらうのだから.

患 者にとってばかりでなく,医師にとっても外来はアウェイだ.なぜなら,肝心の患者の生活が外来では全くわからないからだ.医者は患者から教えてもらわなけ れば商売ができないのだから,どんなに長くてもたかだか30分間の外来が(私が時に初診で任せてもらえるひどく贅沢な1時間という枠は例外中の例外),医者にとってホームのわけがない.

患 者さんは,家族は,自分たちの幸せに協力してくれる人だと思うからこそ,仲間だと思うからこそ,家に入れてくれる.いきなりずかずか自分たちの家に入り込 んでくる人間を暖かく迎え,自分達の大切な秘密を明らかにしてくれる.「アウェイがホームになる魔法」なんてセールストークを聞いたら即座に身構える用心 深いあなただって,在宅医療の魅力には,とてもじゃないけど抵抗できないはずだ.

参考:常に「アウェイ」な環境に身を置くことの大切さ、「強み」に閉じ込められる怖さ

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