助けてもらう

先日、勤務先の園長が、外来通院している自閉症児を玄関で見送りながら、

園長「あの子は伸びるわよ。助けてくださいっていうサインが出せるようになったから」

私「いつ、誰に向かって、どんな内容をどの程度 ”助けてください”って、言うのか、私もこの年になって、ようやく意識して学び始めたところです」

園長「そうね。”助けてください”というのは、とても高いsocial skillなの。まず、助けが必要な自分の状況を理解する必要がある。その上で、助けてもらう相手の力量、得意分野を理解しなければならない。さらに、自分と相手が現在置かれている状況を把握する必要もある。そういった土台の上に初めて有効なコミュニケーションが成り立つのよ。これは難しいわよね。私なんかもしょっちゅう躓いてるわ」

私「普段の診療でも、問診は患者さんに、いつから、どこがどんなふうに具合が悪いのか教えてもらう作業ですよね。診察も、患者さんの体に問い掛けて、患者さんの体から非言語性メッセージで、どこがどんなふうに具合が悪いのか、教えてもらう作業です。そうやって、患者さんにを助けてもらって初めて診断ができる。治療が始まってからも、やはり問診と診察が最も頼りになる治療効果のモニタリング手法です。」

園長「本来の職業として普段から訓練の機会がたくさんあっても、問診や診察は、職人芸として上達に時間がかかるのに、ましてや家庭や地域社会で、適切な時に、適切な人に対して、適切な内容で、”助けてください”っていうのは、いつまでたっても勉強ね」

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