はじめに:NHSの恒常的な赤字のため,在英外国人のGP登録を制限する動きが一部で報じられている.しかし,診療現場で実際に行われていることは,政府の方針やメディアの報道からは推し量れない.正確な実態を把握するには,ここの実際の体験を記録することが最も大切である.一口にGPといっても,患者を薬殺してしまうようなとんでもない奴から,聖人のような医者まで十人十色だから,GP登録も様々な形をとる.一人の体験で全てが推し量れないからこそ,個々のケーススタディが重要だ.ここを読んでいるあなた,GP登録の経験があれば,あなたの経験を是非お寄せ下さい.→ikecell@mail.goo.ne.jp
1.拍子抜けだったMさんの場合:(2001年4月.Southampton)
無事(?)にNHSに登録できました。結果的には簡単だったのですが、私の場合他の人とはちょっと違うスタイルでした。ラボの同僚に一番近いGPを聞くとそこはこの大学病院の関連施設で歩いて5分くらいのところにありました。そこを2001年4月13日に訪ねました。受付でNHSに加入したい旨伝えるとNHSの登録用紙(と臓器提供の登録用紙)をくれ、次の火曜日にもってきてくれとのこと。準備していたhealth
recordを元に病歴やアレルギー、常用薬、vaccinationなど記入し準備万端、いざイースター明けの17日に出頭しました。健康診断に備え、前日は酒も飲まずに、朝はシャワーで身を清め、小便まで我慢して受付に行き登録用紙を手渡すと、なにやら、じゃあ登録しておきます、みたいなことを言われ、非常に焦りました。で、「先生に会わなくて(meet)良いのか」と聞いたら、「Do
you want to see
Dr.?」と聞き返されてしまいました。一瞬何でDrを見なきゃならないんだ?と思い焦りましたが、受診するはseeだったというのを思い出し、「いや、今はどこも悪くはないんだけど。。。(健康診断はいいのかな)」「じゃ、どこか悪くなったら来てください」「じゃぁこれでおしまい?」「ええ」。と言うことで健康診断も問診も何もありませんでした。
登録用紙の内容さえ確認せずにサインだけ確認してました。こんな話聞いたことがないので、ラボの人に聞いてみるとやはり看護婦かDrに会わなきゃいけないと思うと言われ、3日後に改めてGPに行ってみました。再度「先日登録用紙を渡したんだけど健康診断は良いんですか」と聞くと、どうせ初診の時にまたやらなきゃならないからいい、というようなことを言われました。「じゃぁ、これで登録は完了なのですね。後は病気になるのを待てば良いのですね」というと「そう」。何とも不安な登録でしたが、今日5月16日、無事にmedical cardが届きました。これも想像していたより早くてびっくりしました。確かなことは解らないのですが、私が大学の職員扱いになっているからこんなに簡単に済んだのかも知れません。他の学部にちょうど同じ頃、1年間の留学で家族連れできた人も,大学内の診療所に家族分の登録用紙を提出しただけで終わってしまったそうです。NHSも経済的理由から無駄な検査を省いているということはないですかね。よく解りませんけど。BBCニュースでも最近はGP医の登録をやめてプライベート診療を専門にする医者が増えてGPが不足していると報道してました。GPは患者も多いのに書類書き等の業務も非常に煩雑でその割に収入は少なく、実入りの良いプライベートに鞍替えする医者が増えているようです。
池田コメント:受診なしでNHS登録ができたのは,優遇というよりも,GP側の単なる手抜きの可能性を考えます.自分のところに登録した患者の健康管理は,GPの大切な仕事ですから,どこも悪くなくても,患者に実際に会って,既往歴やアレルギー歴などを直接聞きだし(患者の書いたことだけで十分のはずがないのです),実際に診察をして,それをしっかり記録しておく,それが,いざ病気となった時に,役立つのです.