ゼロ金利とステロイド
ゼ
ロ金利はステロイドと同様の依存症を起こす.前任者の育てたこの極めて厄介なモンスターを早くどうにかしないと,とんでもないことになる.かつて「ハト
派」と呼ばれたFRB議長もそれは知っている.だから,その依存症から抜け出すタイミングを計っていた.依存症にどっぷりとつかった市場と根気よく対話を
繰り返しながら.
しかし,その依存症の怖さを身をもって示してくれた中国のおかげで,逆に依存症から抜け出す機会を見送らねばならなかっ
た.本来ならば,「ほうら,皆さん,ゼロ金利依存症の怖さがわかったでしょう.だから一刻も早く治療を始めなければならないのです」と言い放ち,NYSE
ばかりでなく,世界中の株式市場を阿鼻叫喚の巷と化す光景を冷ややかに見つめる悪役を演じなければならなかったはずなのに.
FRB議長が怖がっているのは,ゼロ金利依存症そのものではない.
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つ
まり中国経済の鈍化で、これまで世界のGDP成長を担ってきた主力エンジンが、「ぷすぷす」と不気味な音を発して、エンスト起こしそうになっているわけで
す。そういう緊急事態が発生しているときに、米国連邦準備制度理事会(FRB)は、これみよがしに利上げなど出来ません。寅さん風に言えば「それをやっ
ちゃあ、おしめえョ」というわけです。利上げが無いのなら、ドルが買われる理由はありません。
むしろ怖いのはアメリカもリーマンショック以降のゼロ金利という異常事態を正常化することができず、EUや日本も量的緩和政策を永久に続けるという「世界中がアヘン窟」状態が定着してしまうことです。(9月利上げ観測が大幅に後退 むっくり動意付くゴールド)
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中
国だけが厳しい選択を迫られているわけではない。米連邦準備理事会(FRB)も同じ状況だ。市場の下落は、FRBが利上げの判断に向けて準備をしていると
きに起こったが、利上げは来月に行われるというのが大方の予測だった。FRBは資産価格を対象にすべきではないが、市場の激しい変動が利上げ先送り派の立
場を強めている。
中国の再調整と世界的な超低金利からの脱却は常に繊細な取り組みになると言われていたが、実際にそうなりつつある。そうした全面的な調整を行う際には不安になるものだが、実体経済への影響がない限り、さらなる市場変動がもたらす恩恵もある。
これは、投資はリスクを伴うもので、人々の資産を守るのは中央銀行の仕事ではないということを再認識させるものだ。先進国は最近忘れてしまっているかもしれないが、中国の国民が学びつつあるように、これも正常なことなのだ。([FT]暗黒の月曜日、選択迫られる中国)
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(2015/8/26)
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