学生のおもちゃ
先日,ある方から,神経局在診断システムのご紹介をいただいた.症候を入れていけば,局在診断ができるという.でも,だからといって何だというのか.
頭部CTやMRIは自分の職域を侵さないと堅く信じている正統派神経内科医の方は,このシステムには存在意義を脅かされるとでも感じるだろうか.
なあに,ご心配には及ばない.このシステムに行き着くまでがあなたの商売なのだから.つまり,予診表を見て,年齢,性別,主訴,既往歴,家族歴,嗜好品は
おろか,筆跡や文体までも診断の情報源とし,患者を呼び込む時には,ゴルゴ13のような集中力でドアが開くのを待ち,ドアの開け方,頭髪,表情,視線,瞬
目の頻度,顔面の対照性,頚部の動き,肩の肉のつき方・・・そう,三桁では収まらないかもしれない数のポイントを,患者が椅子に座るまでにチェックし,や
おら話を聞き始める瞬間から,高次脳機能,失語,聴力,構音障害のスクリーニングが開始され,その間も,視診のチェック継続され,話を聞きながら触診まで
行うこともしばしばある・・・
と,そうしているうちに,大抵は診断は一つに決まってしまう.つまり,病歴だけで,局在診断ができてしまっているではないか.それができてこその,診察である.
今回紹介してもらったシステムは,病歴よりもずっと後のプロセス,正しく取れた診察所見が揃って初めて診断できる.でも,そんなこと,ちょっと気の利いた
医学生ならできることだ.私の場合,学部の2年生で,面白がってやっていたことだ.そんな遊びが,神経内科医の診断に取って代わるというのか.まあ,今時
の神経内科医の多くは,その程度の腕しかないのかもしれないが.
今回紹介されたシステムも,学生のおもちゃにはちょうどいいだろう.
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