「遠隔医療」での行き違い
マネジドケア(管理医療手法を用いて医療費を抑制することを目的とした米国の民間医療保険制度)の代表的な組織であるカイザー・パーマネンテ(Kaiser
Permanente)が経営する病院だから、そりゃわざわざ面会せずにビデオチャットで経営の効率化を図るということはあるだろう。
Wikipediaによれば、フリーモントFremont は「人口は約22万人で、サンフランシスコ・ベイエリアでは4番目の規模、郊外部では最大の都市である」とのことで、それほど「田舎」とは言えないようだが、それこそあの広い国のことだから、病院から患者さんの自宅まで一時間以上なんてこともざらだろう。今回はたまたまビデオチャットの翌日に亡くなってしまったという、誰にも予期できなかった不運な出来事を、センセーショナルに報道されたということなのだと思うが。
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ロボット画面で医師が死の宣告、家族は動揺 米カリフォルニア州 CNN 2019/1/11
https://www.cnn.co.jp/usa/35133986-2.html
(CNN) 米カリフォルニア州の病院で死亡した男性の遺族が、ロボットの画面に映し出されたライブ中継を通じて、医師から男性の死が近付いていることを告げられたと訴えている。
アナリシア・ウィルハームさんは4日夕、米カリフォルニア州フレモントにある病院の集中治療室で祖父(78)に付き添っていた。そこへロボットが入って来て、医師の姿が画面に映し出され、治療のためにできることはもう何もないと告げられたという。祖父は翌日、亡くなった。
ウィルハームさんはCNNの取材に対し、「もっと尊厳を持って対応してほしかった」「孫や家族が私のような経験をすることがあってはならない」と訴える。
祖父がもう長くないことは、家族にも分かっていた。それでもこんな告げられ方をした対応には怒りを覚えたとウィルハームさんは言う。
病院側はCNNに寄せた談話の中で、「医師や看護師は常に患者や家族と面会してコミュニケーションを取っている」と説明。ウィルハームさんが見たという中継映像については「その前に医師が行った診察のフォローアップだった。患者や家族とその前に交わした会話に入れ替わるものではなく、診断の内容を伝えるために使われたわけではない」としている。
祖父は何年も前から、呼吸困難の症状を引き起こす慢性閉塞性肺疾患を患っていた。この日は医師が肺の状態を調べる検査を実施。ウィルハームさんは同日夕刻、自分の母と祖父の妻(58)に、休息をとるよう促して帰宅させていた。
そこへロボットがやって来て、画面に映った医師が話を始めた。付き添ってきた看護師は無言だった。この医師が誰で、どこにいるのかは分からなかった。ウィルハームさんは医師の言葉をスマートフォンで録画した。
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ビデオチャットで死期が迫っていると告知、遺族が「非人間的」と非難 AFPBB News 2019年3月10日【AFP=時事】
米カリフォルニア州で先週、ビデオチャットで死期が迫っていると告知された70代の男性が、その翌日に死亡する出来事があり、遺族が病院の対応を非人間的でロボットのようなやり方と非難している。
アーネスト・キンタナ(Ernest Quintana)さんは4日、同州フレモント(Fremont)にある病院で死期をビデオチャットで告知され、翌5日に死去した。
医師がビデオチャットで、キンタナさんは両肺が衰えており、帰宅することはできないだろうと告知したとき、付き添っていたのは孫娘一人きりだった。
孫娘は現地テレビ局KTVUに対し、「その時が迫っていることも祖父の健康状態が非常に悪いことも分かっていた。それでも、あんなやり方であのような知らせを伝えるべきではないと思う。人がやって来て告知すべきだった」と語った。
KTVUによると、キンタナさんは聴覚に問題があったため、孫娘がキンタナさんに伝えなければならなかったという。
キンタナさんの治療を行ったカイザー・パーマネンテ・フレモント医療センター(Kaiser Permanente Fremont Medical Center)は、米メディアを通じて家族に哀悼の意を表する一方、「ロボット」が死期を告知したという表現については異議を唱えた。
同センターは、「『ロボット』という言葉の使用は不正確で不適切」とした上で、ビデオチャットでの告知について、「医師と実際に会話するもので、病室には常に看護師1人か他の医師がいた」と説明。行き届かない点があったことに遺憾の意を表し、今回の反省を生かしてビデオ通話機能を使って患者がより良い体験をできるようにしていきたいと表明した。
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ビデオチャットではなく、直接の面談なら人間では亡く、ロボットでもいいのか?それが「臨床試験(治験)の啓発」や「改善」に繋がるのか?ロボットの説明では同意書に署名できないと言い出す被験者などいないのか?疑問は尽きない。
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日本イーラーリリー、ペッパーで治験を案内 日経新聞2019年3月12日
日本イーライリリー(神戸市)は、ソフトバンクロボティクスの人型ロボット「Pepper(ペッパー)」を臨床試験(治験)の啓発に活用する。このほど複数の医療機関で試験運用した結果をまとめた。治験への参加を募る手段として導入を検討していく。
最近は治験の参加条件が複雑になり、患者数が少ない疾患を対象とする治験も増加。患者の募集や情報の周知が課題となっていた。ロボットの活用で改善を目指す。試験運用は2018年9~12月に東京都や大阪府などの医療機関3施設で実施した。待合室にペッパーを設置し、実施中の治験情報をペッパーが患者に説明。興味を持った患者は、医師や治験コーディネーターから治験の詳細について説明を受けられるようにした。
この結果、試験運用に参加したすべての医療機関で患者から問い合わせがあった。治験参加の同意取得や登録につながったりした例も出ている。また医療機関からも「治験の認知度向上につながった」「患者との会話が弾んだ」といった回答が寄せられている。
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