薬を巡るリスクコミュニケーション

FDAで研修中の仲間が、小児への抗鬱薬SSRIの投与と自殺のリスクに関する公聴会に出席し、会議の様子を詳しく報告してくれた。子供を失った親の陳述あり、報道関係者も出席自由な会議だったが、混乱することなく進められたとのことだった。その返事の手紙。

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Uさん、丁寧でわかりやすい解説、ありがとうございました。合衆国という国のいい面がよく出た現場を目撃できて、Uさん自身も非常に面白かったでしょう。また、今回のヒアリング、コミティーの意味を正確に理解できるUさんを送り出したセンターの我々も,Uさんのことを誇りに思いますし、納税者に対しても、胸を張って、我々はいい仕事をしていると、堂々と主張できるというものです。

リスクコミュニケーションに必要な一般市民の成熟という難題を前にすると、日本では、多くの人が立ちすくんで、行動を起こさず、諦めて立ち去ろうとしてしまうのですが、Uさんの説明で、日本でも決して夢物語ではないことがわかります。

英国でも、人命にかかわる非常にセンセーショナルな問題でヒアリングが行われました。変異型クロイツフェルトヤコブ病の公聴会でした。しかし、それは、今回のSSRIに関するヒアリングと同様、秩序だって行われました。

一方、学校教育のアウトカム評価を基準にしてみると、日英米の民度に大きな差があるとは思えません(実は、日本の高校生の科学的考え方は、韓国と並んで世界で1?2位を争うという結果が出ています)。その上、公共交通機関の正確な運行、2時間刻みで届ける宅配便システム、国民皆保険精度といった世界一の仕組みをたくさん維持している日本人の能力を見るにつけ、日本人が同じことをできないわけがないと思っています。

日本でも、リスクコミュニケーションが必須な分野で、仕組みを作って人材を育てれば、FDAのようなヒアリングは十分可能であり、それに向けてできるところから手を付けていく価値は十分あります。FDAでの研修は残り2ヶ月を切りましたが、引き続き充実した日々をお送りください。
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