古色蒼然,唯我独尊

下記の記事の日付が2004年7月6日となっている。間違いではないが、内容はどう見ても博物館行きだ。大リーグボール養成ギブスの時代,あるいは,ジョージ・シスラーが257安打を放った1920年を髣髴させる古色蒼然たる記事である。

記事を書いた人間の頭の中身が,国立がんセンターができた1962年あるいはそれ以前の,”白い巨塔”マニア状態のままだから,こういうことになるわけだが、取材された医者の頭の年が31歳ってことは、どう説明したらいいだろうか.なぜ,無邪気にも,懐古趣味で凝り固まった記者の取材を受けて,こんな勝手な記事を書かれてしまうのだろうか.その答は記事の中にある.泥酔状態だったのだ.嘘じゃない.

24時間満足な睡眠をとっていない人間の仕事能力は,血中アルコール濃度0.1%の者のそれと同じくらいに劣っている.徹夜明けの医者は酔っ払いと同じだ.(Gaba DM, Howard SK.. N Engl J Med. 2002 Oct 17;347(16):1249-55.)

劣悪な労働条件の中で,睡眠不足となり,集中力が低下した結果,自分が事故を起こすことなど,夢にも考えられなくなっていた.そして,そうやって起きた事故の取材をするのも,この記事を書いた同じ記者だという,至極当然の推測もできなくなっていた.

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住み込みで技術磨く(2004年7月6日読売新聞)
東京・築地の国立がんセンター中央病院。深夜、消化器内視鏡部チーフレジデントの浜中久尚さん(31)の携帯電話が鳴った。「患者さんが吐血してます」。病棟の夜勤の看護師からだ。院内の隣の建物にある自室のベッドから飛び起き、病棟に向かった。その日、胃がんを内視鏡で切除する治療を受けた患者だった。ただちに内視鏡室に移し、口から差し入れた内視鏡で、出血個所を焼いて止血した。「がんの治療で胃の粘膜をそぐので、患部は胃かいように似て、胃液などの刺激で出血することがあります。僕は院内で寝起きしているので、深夜は最初に呼び出されるんです」レジデント。住み込みの専門研修生。医師免許を取って2年間の研修を終えた医師が、がん専門医を目指し、同病院でさらに高度な研修を積む。

浜中さんは5年目。3年間、各科を回り、がん診療の基本を身につけ、昨年からは胃がんの内視鏡診断、治療を専門に学んでいる。200人以上を治療し、もう「1人前」と言える。「がんセンターには優れた指導者がいて、患者さんも多いので、技術を習得するには最高の環境です」と言う。24時間、勉強の日々――。午前7時半から病棟の回診。午前8時と午後6時には、最新の英語論文の勉強や、患者の治療方針についての検討会。午前中に15人前後の胃カメラの検査、午後は胃がんの治療が2、3人。夜は、学会の準備や依頼された原稿の執筆などの作業がある。朝、昼の食事はとらず、夜はほとんど店屋物ですます。息つく間もない激務だが、「早期胃がんの治療で、先頭グループを走っているという自覚があるし、仕事は面白い」と言う。
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