ある介入試験
医師のストライキのアウトカム評価は伝統的に関心を引く論題だが、今回の場合はどうだろうか。彼等のことだから、2016年のBMJのクリスマス特集に必ず今回の介入試験のデータを出してくるだろう。
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【イギリス】英NHS勤務医,政府との交渉決裂で初のストライキへ 英国医師会
Medical Tribune 2016.01.07
https://medical-tribune.co.jp/news/2016/0107038180/
英国医師会(BMA)は1月4日,国民保健サービス(NHS)関連施設に勤務する卒後15年以内の勤務医(junior doctor)の診療報酬や勤務体系の改善に関する政府との話し合いが決裂したとして1月12日から2月10日にかけ3回のストライキを実施すると発表した。ストライキは関連病院が創設された40年来初めて。
「政府の過小評価にうんざり」
BMAによると,junior doctorの多くは20歳代後半から30歳代で家庭医(GP)やコンサルタントなど,キャリアアップに向けた修練の最中にあり,NHS関連施設の屋台骨を支える存在。政府が新たに示した,この若手医師の労働条件や報酬に関する契約内容が「医療安全や彼らの生活を脅かしかねない」と反発。1回当たりの最長シフトの上限を13時間から短縮することや,医師を長時間労働させた場合の雇用者に対する財政面の罰則廃止の撤回などを求めている。
一部メディアの報道では,政府の提示した条件に反発する医師は多かったようだ。昨年(2015年)12月には調査に回答した若手医師の98%以上がストライキに賛成の意向を示すなどしていた。今年1月4日,政府とNHS関連施設側に再交渉のテーブルが設けられたが,話し合いは決裂。BMAが1月12日,26日と2月10日に24~48時間のストライキに突入する見通しを示した。
BMAは一般市民向けに「決して望んだことではないが,政府がわれわれにストライキの選択を余儀なくさせた」と発表。「あなたたちと同じ,われわれの多くは親であり,介護者。自分たちの医師人生と家族の世話をやりくりしている」「政府当局の私たちの労働に対する過小評価や患者からの信頼を揺るがす物言いにはうんざり。私たちの多くは限界に来ている。海外で職を探すか,この仕事を辞めようと考えている者さえいる」と強い調子で批判している。
ストライキ中の診療への影響は?
勤務医の労働問題は日本だけではないと思い知る出来事だが,一方で心配されるのは診療への影響だ。BMAはこの点についてストライキ期間中も救急部門は例外で通常通りの勤務を行うよう求めている。
医療関係者のストライキによる診療への影響は実際にあるのか。「一般に考えられているのと違い医療従事者のストライキによる医療サービスの中断が即,患者の死亡増加や医療サービス全体の低下につながるわけではない」との見方もあるようだ。南アフリカUniversity of Kwazulu-NatalのSylvester C Chima氏によると,イスラエルや米国を含む世界各所の研究で救急医療やプライベートクリニックが機能している場合には医療従事者のストライキで患者に明らかな健康影響は生じないことが報告されている(BMC Med Ethics 2013;14 Suppl1:S5)。同氏はまた,病院全体のストライキにより待機手術が減り(短期の)死亡率が減ったと見られるとのスウェーデンの報告やイスラエルの報告では患者の社会経済的状況により医師のストライキへの反応が異なるようだとも考察している。
NHS関連施設で働く若手勤務医の数は約5万3,000人。「彼らは1週間に400万人以上の患者を365日診療している」とBMA。政府に対し労働環境の改善と一般市民のストライキへの理解を求めている。
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