私は忙しい

問診と診察のことばかり強調するなという。医者には検査という「武器」もあるのだからという。そして検査の素晴らしさを得々と喋る。私にはそんな 暇人に付き合っている暇はない。

確かにMRIは脳卒中の病巣を描き出す。そしてMRIは脳梗塞と脳出血の区別に役立つ。でもそれがどうしたというのだ?

発症後2時間ほどの右片麻痺・運動性失語症の患者が来て、脳卒中と考えるのは人間である。その患者のMRIで左後頭葉皮質下に境界明瞭な梗塞巣を 見いだして、急性脳虚血で血栓溶解療法の準備を急がせるのか、そうではなくて、もしかしたら低血糖かもしれないと考えるのも人間である。

急に倒れたとの訴えで昏睡の患者が来て、脳卒中と考えるのは人間である。その患者のMRIで左後頭葉皮質下に境界明瞭な梗塞巣を見いだして、急性 脳虚血で血栓溶解療法の準備を急がせるのか、そうではなくて、もしかしたら低血糖かもしれないと考えるのも人間である。

MRIが素晴らしい機械になるか、誤診製造器になるかは、MRIを使う人間によって決まる。そんな簡単なことも知らない奴に限って、MRIの自慢 をする。私にはそんな暇人に付き合っている暇はない。

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