おしゃべりな貝より

ハンセン病訴訟控訴断念は,ポツダム宣言受諾儀式に過ぎなかった.つまり,あく まで本土決戦を主張する軍部の御乱心=狂った論理をエンジンに暴走する霞ヶ関,を抑えないと,自分の首が危なくなることを,一部の政治家が土壇場にな ってようやく理解できただけの話だった.(ただし,この話には後日談あり)

官僚はお縄にさえならなければ職を失わないが,政治家は人気がなくなって選挙に負ければ一貫の終わりなのに,官僚に言いくるめられて世間の矢面に立つお人好しの政治家がこれまで何と多かったことか.

いや,首相官邸から,霞ヶ関に対して,悪役になってくれという要請が出たとすれば,ある程度知恵がついてきたということで,ワイマールの終焉を覚悟せねばならない.

戦中戦後を通して変わらないのは,”国を守る”という”組織の意識”だ.組織を 離れて個人で考えれば,どうみてもぼろ負けが確定しているのに,組織の一員となると,控訴後和解という名の本土決戦に備えて,黙々と想定問答集を準備する.たとえ”馬鹿げてる,いち抜けた”と言っても,せいぜい昇進が止まるだけで,敵前 逃亡罪で銃殺になる時代ではないにもかかわらず,せっせと仕事に励むのだ.そして,控訴断念のニュースを聞いて,玉音放送を聞いた民草のように呆けてしまう.次は一億総懺悔かもしれないが,それもすぐさま喉元過ぎる.

ともあれ,私(厚生労働技官)もC級戦犯として,いつ,どのような形で断罪されるやら.

後日談:私の心配は杞憂だった.何,法務省の方から,政治家に対して,控訴を断念するように根回しがあったのだそうな.やっぱり役人は勝ち馬に乗るというより,勝ち馬を作るのに抜け目がないですな.

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