治安維持法が安泰のままになりそうだ.この問題は憲法第九条,日米安保,ガイドラインなんかよりずっと大切なのに.なぜなら,あなたの命に,いますぐ直接結びつく問題だからだ.
厚相の諮問機関である医療審議会で,カルテ開示を法制化できるかどうか雲行きが怪しくなってきたという(99/4/1の朝日新聞3面).大本営たる厚生省は,直接金がかかる医療費抑制方面ではあの手この手で強力な作戦を展開するが,利の少ないカルテ開示方面には全然戦力を割かない.全国自治体病院協議会司令長官旭将軍諸橋芳夫が孤軍奮闘しているが,鬼畜米英ならぬ日本医師会,歯科医師会,族議員の連合軍の前に旗色が悪くなっているらしい.保険医総辞退で武見太郎に刃向かったかつての青年将校も,もはや齢八十を越えなんとしている.老将軍を孤立させ前線に置き去りにするのは虐待以外の何物でもない.
カルテ非開示は医療での治安維持法である.その治安維持法を支持しているのは,厚生省でもなく,医療審議会でもなく,ましてや医師会でもない.沈黙を保っている”国民”であり”医療消費者”である.黙ってみていれば,”じゃあ,いいんですね”ってなことになるのは世の中の常識ってもんだ.
一人一人が黙っていれば,自分自身の不幸につながる.大東亜戦争へのプロセスと全く同じだよ.あるいは現在の日本の政治そのものじゃないか.いや,政治の面でさえ,どこそのこの小役人が,いつどこの料亭で,誰とどんな飯を食っていくらかかった,なんて,どーでもいいことが公開される時代だぜ(99年4月1日から三重県では,県の食糧費:全くなんて日本語だ:ばかりではなく,県が50%以上出資する外郭団体の食糧費まで公開される).なのに自分の命に関わる文書が自由に見られねえってのはべらぼーな話だと思わねえのかい?思わねえんなら殺されても文句はいえねえよ.あたしゃその方がずっと楽だから大歓迎だけどね.
治安維持法がなくなれば,人に見せられるものを書こうとするから,カルテがもっとまともになる.カルテは診療行為の記録であって嘘は書けないから,まともなカルテはまともな医療に直接結びつく.そんなことは医者でなくてもわかるだろう.先進国の中では驚異的に低い医療水準を高めるために.最も手っ取り早い方法なのだ.
あなた方一人一人が黙っているからなめられるんだ.あなた方一人一人が,あなたの住む地域の医師会に(医者個人じゃだめだ.カルテ開示に個人的に賛成している医者はたくさんいるから)カルテ開示に反対する日本医師会はけしからんと,カルテ開示に反対する会員は信用できないから,そんな医者にはかからず,カルテ開示に賛成する医者にかかると,今すぐにでも手紙を書けば,治安維持法は廃止できる.そうでなければ治安維持法は安泰で,屍累々はまだまだ続くというわけだ.
わたしの言うことが誇大妄想と思う人は,あなたとあなたを愛する人の命が奪われても文句は言えない.自分の命を守るということはそういうことなんだ.