英国医療へのBrexitの影響

いくら「もうダメだ」からといっても,カイテルもヨードルも最期まで総統閣下を見捨てずに看取りました(その後彼らはニュルンベルクへ連行→絞首刑).でも,Theresa Mayの場合には,まだ締め切りまで8ヶ月以上も残しているのに,離脱実務最高責任者だけでなく,Brexitの旗手である外務大臣からも見放されました.実は,見放したというより,泥舟に残った挙げ句にA級戦犯として糾弾されちゃたまらん,てことなんしょうが.

二番目の記事の「GDPR始動」を読むと,この施行によって,たとえば,それまで数々の輝かしい業績を生み出してきた,NHSのデータ利用による臨床研究 なんか,もうできなくなるんじゃないか,全く無関係の私でもそう心配するぐらいですから,英国にとってのEUとは,様々な面で諸刃の剣なのでしょう.「落 としどころ」が見えるわけがありません.

締め切りまであと8ヶ月.無秩序離脱の「恐れ」なんてものではなく,それしか選択肢はないでしょう.そうなれば,肝心の首相も(もし現在の地位に留まった としても)「私は最善の妥協策を目指してこれだけ頑張った(のに誰も協力してくれなかった→私の責任を問うことはできない)」と言えるでしょうし,その前 に,物好きが「お前じゃだめだ,俺がやる」と言ってくれれば,これ幸いとばかりに(形ばかりの対決姿勢を見せて),投票で負けて首相の座を譲ればいいだけ だし.
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英NHSや大手製薬 Brexitの混乱に備える ミクスオンライン 2018/07/06
 2019年3月29日のBrexit(英国のEU離脱)が迫る中、NHS(英国民保健サービス)や大手製薬企業は、離脱後のスムースな医薬品の安定供給確保に向けた対策に追われている。
 米医薬専門誌「Fierce Pharma」(7月2日付)によると、NHSのSimon
Stevens事務総長は、英BBC放送の取材に応じ、「Brexitまでに英国とEUの適切な貿易協定がされない場合を考慮し、医薬品不足を回避するために重要な計画を練っているところだ」と混乱回避への対応策を打ち出すことを明らかにした。一方、医薬品業界は、国民の生命を危険に晒す可能性のある業界であるということを保健当局から改めて説明され、その準備を進めてきた。
 米メルク社は、Brexit前に6か月の在庫を確保する計画で、Brexit時に医薬品が国境を移動する際に、事務作業などで混乱、時間がかかるなどの支障が生じた場合、サプライチェーンにおける「一時的供給停止」を回避するために、別の供給ルートに変更する考えも視野に入れている。
 ブルームバーグ通信の報道では、メルク社は、Brexitに伴う新規法規制施行や税関業務で製品デリバリーに少なくとも2日は余分にかかると予測している。このため、オランダのハーレムに規制上などの問題が生じた場合の対応に30人の従業員を配置する考え。オランダのアムステルダムにはEMA(欧州医薬品庁)が移転するため、EMAと緊密な連絡を取りたいとの意向もみえる。
 仏サノフィ社は、Brexit後に英国以外のEU諸国に業務の重点が移動するとみて、英国ハーバーにある、EU向け製品のためのQC(品質管理)やラベリングおよび包装など薬事規制関係担当の人員の一部をEU諸国に移すことを決めた。同社は、「我々の責任は、Brexitの初日である2019年3月29日にEUおよび英国の患者に必要とする医薬品を確実に届けることである」とコメントした。NHSや製薬企業のBrexitへの対応がスムースに行くか注目されるところである。
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【World Topics】GDPR始動 ミクスオンライン 2018/07/17
 2018年5月25日、EUの新しい個人情報保護法the General Data Protection Regulation (GDPR)が始動した。
 GDPR施行以前は、規制対象は、EU内で個人情報を収集あるいは使用する組織、あるいはEU内に個人情報処理装置を置いている組織のみに限定されていた。が、GDPRの施行によって規制対象はEU内に居住する個人の情報を取り扱う組織全般に拡大され、EU内で個人の行動をモニターしたり、あるいはEU内で個人にサービスや商品を提供する組織のすべてが、その組織の所在地を問わず、規制対象となることとなった。
 GDPRはあらゆる個人情報を対象とするだけでなく、直接間接を問わず個人を特定できる情報のすべて、たとえば人種、宗教・信条、政治的立場、業界組合等への加入の有無、遺伝子情報、生体情報、健康状態に関わる情報、性別あるいは性生活に関わる情報なども規制の対象とする。
 すでに明らかだが、GDPRは個人情報全般に対する規制法であるから、規制対象とする組織についても、規制対象とする情報についても米国のthe
Health Insurance Portability and Accountability Act (HIPAA)
よりはるかに広範である。今後EU内ではこれが医療情報にも適用される。
 GDPRの規制はさらに個人情報取り扱いの「環境」条件にも及ぶ。HIPAAが主として個人情報の使用と開示を規制しているのに対し、GDPRは個人情報を処理する上での条件を厳しく規制するとしているのであるが、この処理(process)という概念には広く解釈すればデータの収集、記録・保存、整理・構造化、変更、さらにはあと利用から削除までのすべての処理が含まれる可能性があり、今後の動向が注目されている。
 GDPRに関する最新情報はEU GDPR Information Portal (https://www.eugdpr.org)で得られる。
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