医者のストライキのアウトカム研究
良い医者は人を幸せにするだろう.恐らく.悪い医者は人を不幸にするだろう.確実に.医者には良い医者と悪い医者がいる.絶対に.しかし良い医者がいれば長生きができるかどうかはわからない.

良い医者と悪い医者を鑑別する方法があるだろうか.あると答える人は,良い人間と悪い人間を鑑別する方法も知っているに違いない. 日本の医者の平均的な腕前は合衆国の医者のそれより優れているだろうか劣っているだろうか.日本人の平均余命は合衆国のそれより長く,世界で一番長い.良い医者が人を幸せにして,悪い医者が人を不幸にするとしても,良い医者は人を長生きさせられるとは限らないのだろうか.

この事実は,長生きすることが必ずしも幸福ではないという仮説を指示するのだろうか? 良い医者がたくさんいても長生きができないならば,いっそのこと医者なんて全部なくしてしまって,医者の教育費や医者が好き勝手に使う医療費とやらを,公衆衛生教育や予防接種や下水道の整備や栄養状態の改善にまわすべきではないのか?まともな食生活をして,たばこも酒も飲まず,車にも乗らず(平成7年に交通事故で死んだ人間は15147人で,糖尿病で死んだ14225人を上回り,結核で死んだ3178人の約5倍である:国民衛生の動向1997年より),上下水道が完備した住宅に住めば,医者なんていらないんじゃないか?

運良く医者の判断が正しければ人の命を救えるが,間違っていれば殺してしまう.医者に助けられる人と殺される人の比率を知るために一番いい方法は,医者が仕事をやめてみることだ. 1976年の年頭の数週間,ロサンゼルス郡の医師達はストライキに入り,救急医療以外の仕事を中止した.事後の調査によると,このストライキの期間中死亡率の低下がみられ,医師達が仕事を再開すると通常の率に戻った.1973年,イスラエルでは外科医のストライキの間国民の死亡率が50パーセントも下がった.ブラジルでは35パーセント下がった.(ロバート・ヤングソン,イアン・ショット著.北村美都穂訳.危ない医者たち.青土社より)

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