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不要核物質、国が集約断念 1200カ所の大学や病院 核テロ悪用、散逸懸念も 所有者管理の負担重く 共同通信 2018年3月5日
全国の大学や病院、民間研究機関など約1200カ所で使用しなくなり保管中の核燃料物質について、原子力規制委員会が、国内最大の原子力研究機関である日本原子力研究開発機構(茨城県東海村)の施設に集約して保管できないか協議していたが事実上、断念したことが3日、分かった。費用面などで折り合わなかった。保管中の大半の核物質は少量だが処分先はなく、所有者は引き続き、周辺に放射線の影響が出ない適切な管理を求められ、負担にもなりそうだ。
核物質は核テロ悪用の懸念がある上、核兵器への転用を防ぐため、国は全所有者の数量を確認し、国際原子力機関(IAEA)に報告する義務がある。処分場や専門の管理機関など国の制度整備が不十分なまま散逸すれば、日本の原子力利用に対する国際社会の信頼低下につながりかねない。
規制委によると、問題の核物質は法規制が始まった1960年ごろまでは国内で比較的自由に流通しており、電子顕微鏡の試料の染色剤や陶磁器の塗料に使われていた。
天然ウランか劣化ウランを300グラム以下か、トリウム900グラム以下の所有者は約1800に上る。ほぼ全ての都道府県にいるとみられるが、規制委は「盗難などの恐れがある」として名称や所在地、個別の所有量を公表していない。3種類の核物質の総量は2016年末で36~49キロ。
これとは別に、ウラン300グラム超などを所有し、担当者の被ばく管理が義務付けられているのは37都道府県の210。規制委は名称や所在する都道府県を公表しており、メーカーや電力会社、大学が多く、個人もいる。核物質ごとの総量は天然ウラン122トン、トリウム4トン。
規制委が約1800の所有者に意向調査した結果、回答した8割に当たる約1100が核物質を現在は使用しておらず「譲渡したい」と答えた。所有量が多い210のうち約100も使用予定がない。代替品の導入で、核物質を使う必要がなくなったことなどが理由だ。
規制委は集約保管に向け15年6月以降、機構と十数回協議したが、昨年2月を最後に途切れている。機構は「費用などの条件を規制委に提示したが回答がない」と説明。東海村は受け入れに慎重姿勢だ。規制委は、所有者側が保管費用を負担するのかなどについて「機構の提案が現実的でなかった」としている。
※核燃料物質
原子炉等規制法の規制を受けるウランやプルトニウム、トリウム。核兵器への転用を防ぐための保障措置の対象で、日本国内の全ての所有者は種類や数量を、原子力規制委員会を通じ、国際原子力機関(IAEA)に報告する必要がある。300グラム以下のウラン、900グラム以下のトリウムを所有している場合、少量のため年2回、規制委へ報告すれば済み、他の厳しい規制を受けない。300グラム超を所有している場合は、保管場所を、不要な被ばく防止のため立ち入り制限をした「放射線管理区域」に設定して管理するなどの義務も追加される。
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