ADRと医師賠償責任保険

具体的な裁判外紛争解決(ADR)案が いくつかは出ている.

しかし、ADRと密接にリンクしている損害補償システムの資金をどうするかで完全に行き詰っています。現在の医
陪責がとっくに破綻しているのに、無過失責任まで含めればそれよりもはるかに損害
補償総額が大きくなるシステムなんかできっこないのです。弁護士兼医師の児玉安司
先生によれば,医師会のファンドが70億円,保険会社全体のファンドが数百億円に対
し,潜在的賠償額は3600億円/年(医療機関における年間死亡者72万人のうち、1%が
何らかの過誤:明らかなhuman errorでないものも含む:による死亡で、一人当たり
5000万円として)。

特に日本医師会の医師賠償責任保険の惨状は目を覆うばかりで、東京海上日動の完全な持ち出しになっています。さすがに医師会
もまずいと思って,事故リピーター医師の排除にようやく重い腰を上げ始めました
が,このような賠償額とファンドのけた違いの差を知ると,リピーター医師の排除や
保険料の引き上げでは,どうにもならないことは明らかです.破綻は米国だけじゃな
いんです。

では、どこが金を出すか?どこも出しません。製薬会社は医薬品医療機器総合機構に
もうたくさんの金を払っている。となると、自動車事故損害保険のように,患者が自
分のために入る医療事故補償保険商品を作って、一般市民に買ってもらうか?それも
多分駄目。というのは、自分の自動車だと思うからこそ、自分が事故に巻き込まれた
場合に金を払うのですが、医療サービスは自分固有のもんじゃない。となると、レン
タカーを借りる時や海外旅行に行く時のように、pay per serviceで入るようにする
しかない。これを医療保険の自己負担分に上乗せするか、それとも、その部分だけ
を、それこそ海外旅行保険のように任意加入の商品にして、損保会社と医療機関が契
約して、医療機関の窓口で、家電商品の購入の時保証期間延長オプションに対する割
り増し料金のようなシステムにするか、いろいろな場合を想定してシミュレーション
しなければなりませんが、どの損保会社も、もちろん大本営も、まだ手付かずのは
ず。そこからやらないとだめです。

二条河原へ戻る