昔甲子園,今本郷

宮内・飯田一派の医療改革論議を聞いていると,話が全てお金のことから出発しているから,現実感がない.倫理的に問題があるというのではない.彼らの話は,現実を踏まえていないということだ.金の話,金の流れを基点にすると,あたかも現実に即しているように見えるけど,それは違う.

医療の現場では,まず,実利が全く見えないハッタリがあって,その理屈があたかも現実に即しているように見えること必要だ.そこには実証的研究の先行やエビデンスは必要ない.それよりもスポンサーand/orステイクホルダーが面白そうだ,儲かりそうだ(注:”そうだ”が必ずつく)と思うことの方がずっと大切だ.そこで,その空想物語に人気やら金やらがついて,初めて虚業収益エンジンが回りだすのは、医学研究でも、エンターテイメントでも、公共事業でも同じ事だ.エンジンが回りだせば,しめたもの.より魅力的に見えそうなお化粧の効いた成果も出せるし,実証的研究のアウトプットも運がよければ出せる.出なくても知ったこっちゃないけど。中にはネガティブな研究結果もあるかもしれないけれど,そこはそれpubication biasで,ポジティブな物だけ表に出せばいい.

いつの時代でも予算を獲得するのは,本当に役に立つかどうかわからない,いかがわしい仕事,香具師のはったりと相場が決まっている.新潟の道路にしたって,分子生物学にしたって,一体どこでアウトカムの価値が検証されたのさ?鹿やサルしか走らない道路や,ゲルやバンドの写真の経済的価値が証明されてから,初めてみんな安心して予算をつけたの?ちがうでしょ.予算のつきはじめから今まで,経済的評価がまともになされたことはない.

買うから上がる,上がるから買う.それが相場だ.いつかはバブルは崩壊するが,バブルの崩壊は次のバブルの予兆に過ぎない.分子生物学の弔鐘が鳴り終わり,プロテオミクスやトランスレーショナルリサーチと言ったカタカナ言葉遊びが火葬場の骨拾いをしている今日,次のパラダイムシフト,すなわち金の流れる先がどこか,みんな鵜の目鷹の目だろう.再生医療,ナノテクノロジー,医療倫理,医療管理・経済学,リスクマネジメント,パブリック・メディアリレーション,医学教育・・・・この賭場では,どれもいかがわしさでは優劣はつけがたい.さあ,張った張った.

佐川急便が,昔阪神タイガースを買収するという噂が盛んに流れていたのを覚えているだろうか.今は,佐川急便は野球には目もくれず,ホスピタル・ロジスティクスにお金を出している.だから,ライブドアと楽天が競ってお参りすべきなのは,今の時代,仙台ではなくて,本郷である.

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