第百十七段

今,こうして曲がりなりにも臨床をやっていられるのは,実は,10年前のある親友の一言のおかげです.スコットランドから帰ってきた先が,新任教授主宰の教室で,当時はまだ最先端だった分子生物学の研究をばりばりやっていました.そんな研究の右も左もわからない私は,こりゃ大変なことになったなと思っていると,彼が誰に言うとでもなく,ぽつりと一言.

”これからは臨床をやっていた方がオリジナリティを出しやすいんじゃないか”

小学校の時から徒競走ではいつも後ろから数えた方が早かったのが祟り,なんとか競争せずに自分のペースで仕事ができる方法がないものかと探す癖がついてしまった私の脳に,しっかり刷り込まれた言葉でした.

宝の言霊をくれる知恵のある医者は三重の意味でよき友であります.

よき友、三つあり。一つには、物くるゝ友。二つには医師(クスシ)。三つに は、智恵ある友。

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