プロゾーン現象
【プロゾーン現象とは】
免疫学的検査の中で、抗原抗体反応を用いる検査では、抗原及び抗体が適切な比率の場合に効率良く正確な検査が実施できます。しかし抗原に対して抗体が過剰な場合、もしくは逆に抗体に対して抗原が過剰な場合には適切な検査目的としては適切な反応がおきらず、見かけ状反応が抑制されてしまします。
凝集反応におけるプロゾーン現象
 
 
例えば凝集反応を例にとると、抗原と抗体が適切な比率で存在する場合、アニメーションの最初の状態のように凝集反応が惹起されます。しかし抗原に対して抗体が過剰な場合(抗原<<抗体)や、抗原が抗体に対して過剰な場合(抗原>>抗体)には、凝集反応が認められません。この適切な濃度比で凝集反応が惹起されるのは、二重免疫拡散法(オフタロニー法)で沈降線が認められる原理となります。逆に沈降線が出現する領域以外の、どちらか一方が過剰な状態で、反応が抑制される濃度領域が現れることを、地帯現象(zone phenomenon)と呼び、抗体が過剰なために反応が抑制されれいる領域を前地帯(prozone)、抗原が過剰なため反応が抑制されれいる領域を後地帯(postzone)呼びます。一般には両者を区別せずにプロゾーン現象(prozone phenomenon)と呼びます。
サンドイッチELISAにおけるプロゾーン現象
 
 
凝集反応のみならず、ELISA系の測定(サンドイッチELISA)でも同様の現象が起こります。特に固相化抗体(一次抗体)との反応後に洗浄を行わず、検出用の二次抗体を添加・反応後に洗浄を行う場合に偽低値を示します。二重免疫拡散法などとは異なり、反応する領域とは直接関係ないものの、この場合もプロゾーン現象と呼びます。また検量線が、ある値から低下に転じるため、その線の形からフック現象とも呼ばれます。多くの測定キットはプロゾーン現象も勘案した設計になっていますが、自家測定キットを作成する場合や、極めて異常高値を示す症例などではプロゾーン現象による偽低値を示す場合があります。検査部門だけでは気がつきにくく、また臨床側でも注意しないと気がつきにくい現象ですので、実臨床では厄介な問題の一つです。