シャーガス病 |
主に中南米などに見られるクルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)という原虫による感染症です。サシガメと呼ばれる虫が媒介しますが、サシガメ糞便のなかに潜む原虫がヒトから吸血する際に、刺された傷や眼の周囲の組織から体内に侵入します。急性期の症状としては、刺された傷または眼の周りが腫れたり、発熱がみられたりすることがあります。その後、無症状の期間が長く続いた後に、何年も経過してから慢性期となると治療法のない心肥大や巨大結腸症などの重篤な合併症を呈します。中南米ではマラリアに次いで患者数が多く、2千万人以上の患者がいると推定されています。
感染者からの輸血や臓器移植で感染することもあり、また原虫が妊婦の胎盤を通過し、胎児に感染して流産や死産を引き起こす場合や、ときに死に至る重篤な障害を新生児に及ぼす場合があります。
米国をはじめ、この感染症がみられる多くの国では、感染した血液の輸血または臓器移植による感染拡大を予防するために、血液や臓器の提供者に対するスクリーニング検査が行われています。
日本でも、日本赤十字社はブラジルやアルゼンチン、メキシコなどの中南米諸国で「生まれた、又は育った方」や「連続して4週間以上滞在、又は居住したことがある方」に加えて「母親又は母方の祖母が、中南米諸国で生まれた、又は育った方(Trypanosoma cruziが胎盤通過性があるため)」からの献血は、シャーガス病の抗体検査(T.cruzi抗体検査)を実施し、安全性の確認された献血血液については、血漿分画製剤および輸血用血液製剤の原料血液としても使用しています。ただし、前に述べた方々でも、抗体が検出されない可能性があるため中南米地域の対象国・地域を離れてから、6ヵ月以上経過していない方の献血を断るようになっています。
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