先天性凝固第VII因子欠損症
【先天性凝固第VII因子欠損症】
先天的に凝固第VII因子が欠損・低下している遺伝性疾患です。

【遺伝形式】
常染色体潜性(劣性)遺伝形式です。

【臨床症状】
出血傾向を呈しますが、因子活性によって出血傾向の出現の程度は異なります。また因子活性が著しく低下している場合は血栓症の合併頻度が高いとの報告があります。
【検査所見】
  • PTの延長、APTTは正常。

  • 延長したPT補正試験で補正される。

  • 凝固第VII因子活性低下

  • その他の凝固因子は正常

【鑑別疾患】
  • ビタミンK欠乏症・ワルファリン過剰状態のごく初期
    凝固第VII因子はビタミンK依存因子であり、また半減期が凝固因子の中で最も短いため、ビタミンK欠乏症・ワルファリン過剰状態に陥ると、他の凝固因子が低下する前に凝固第VII因子が低下し、先天性凝固第VII因子欠損症と同じ様な病態を示し得ます。

  • 急性肝不全
    凝固第VII因子は肝臓で産生されるため、肝合成能が急激に低下した場合、ビタミンK欠乏状態と同じ様に肝不全のごく初期には、先天性凝固第VII因子欠損症と同じ病態を示す場合があります。

  • 後天性凝固第VII因子インヒビター
    後天性凝固因子インヒビターの一つであり、凝固第VII因子に対する自己抗体が出現する病態です。後天性凝固因子インヒビター自体が稀な病態ですが、中でも第VII因子に対する抗体は極めて稀な病態です。検査では補正試験で補正されない延長を認めます。

【治療】
日常生活では出血傾向が必ずしも出現するものではありませんが、打撲などを契機として出血傾向を呈する場合があります。このため外傷などを可能な限り避けるなどの患者教育が必要となります。外傷時や手術をはじめとする観血的手技などの場合で、止血困難な出血を呈している場合、もしくは呈する可能性が高い場合には凝固第VII因子の補充が必要になります。濃縮因子製剤としては遺伝子組み換え活性型凝固第VII因子製剤(ノボセブン)がありますが、後天性血友病やインヒビター陽性先天性血友病に対して用いる使用量とは異なります(少量です)。先天性凝固第VII因子欠損症では血栓症の頻度が高いとの報告もあり、遺伝子組み換え活性型凝固第VII因子製剤は慎重な使用が必要と考えられます。また軽症の場合には新鮮凍結血漿も有効です。クリオ製剤ではプレシピテート側に濃縮はされていません(上清中に多くは含まれています)。