薬剤誘発性免疫性溶血貧血
【薬剤誘発性免疫性溶血貧血とは】
薬剤によって自己免疫性溶血性貧血(AIHA)そのもの、もしくはAIHAと同様の溶血性貧血が惹起される病態です。病態としては概ね下記の2つに分類されます。
1. 薬剤に対する抗体が産生される場合。
a. ハプテン型(hapten type)
赤血球の膜蛋白質を担体として原因となる薬物がハプテンとして作用し、免疫原性を獲得することで薬物もしくは担体(赤血球の膜蛋白質)と結合した薬物に対する抗体が産生される病態です。その結果、赤血球膜表面で免疫反応が惹起され、溶血性貧血が発症します。ペニシリンで起こりやすのでpenicilline型とも呼ばれます。この反応は薬剤が抗原となる病態ですので容量依存性です。

b. 免疫複合体型(Immune complex type)
薬物がハプテンとして作用する機序以外で、薬物に対する抗体が産生され、溶血反応を惹起するものですが、必ずしもその定義や病態がはっきりしているものではありません。薬物に対する抗体が産生されその状態で薬物が赤血球に吸着した場合に、赤血球表面で免疫反応が進行し溶血を引き起こす機序や、薬物が赤血球の膜構造や膜蛋白質の構造を修飾し、免疫原性や抗原性を高め、溶血を惹起するなどのメカニズムが提唱されています、

2. 薬剤によって赤血球に対する抗体が産生される場合。
薬剤に対する抗体が産生されるものではなく、薬剤によって赤血球に対する抗体産生が誘発される病態ですαメチルドーパがその代表でしたが、現在では慢性リンパ性白血病に対するフルダラビンによって起きるとの報告があります。

どのタイプの薬剤誘発性免疫性溶血貧血も直接抗グロブリン試験は陽性となる場合がほとんどで、そのほかの臨床検査もAIHAと変わりなく、臨床検査上の鑑別は一般に困難です。薬物投与後の発症や薬物の中止によって回復することによって診断に至ることがほとんどです。