グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症
【グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症・異常症とは】
グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)はペントースリン酸経路の第一段階の酵素であり、またNADP+/NADPH比で経路の速度を調節する律速酵素です。このためG6PDが欠損低下すると,赤血球の還元能が低下し、酸化ストレスを受けやすくなります。その結果、感染症をはじめとする酸化ストレスに曝露される状態では溶血が惹起され、赤血球寿命は短くなります。溶血反応は散発的で自然治癒することが多いのですが,時に明らかな酸化ストレスがない状態でも慢性的な持続性の溶血がみられることがあります。
また過酸化物を産生する薬剤や物質への曝露後に溶血がみられることもあり、そのような薬物や物質としては,サリチル酸や一部のビタミンK誘導体,メチレンブルー、ナリジクス酸などが挙げられ、また一部の症例でのソラマメなどで溶血発作を引き起こすことがあります。

【遺伝形式】
X連鎖潜性(劣性)遺伝形式をとります。
世界的に見るとG6PD異常症は赤血球酵素異常の中で最も頻度が高い疾患です。世界で4億人以上がG6PD遺伝子異常を有するとされます。女性のヘテロ接合体変異は通常臨床症状を呈さないいわゆる保因者ですが、ライオにゼーションの関係で女性発症例もあります。いわゆる日本人における責任遺伝子を持つ頻度は約0.1%と高くはありませんが、東南アジアやアフリカ、地中海沿岸では頻度が高いことが知られています。

【臨床症状】
貧血の程度は様々ですが、大半の症例では,酸化的ストレスによる急性溶血発作を呈するのが特徴です。血管内溶血であるので、著しい溶血発作時にヘモグロビンによる腎障害が合併する場合があります。

【検査所見】
溶血性貧血の検査結果を呈します。末梢血塗抹標本で,ハインツ小体が認められる場合があります。

【治療】
多くの場合は誘因となる酸化ストレスを回避し,原因薬剤を使用しない、または原因物質を除去(ソラマメを食べない)などを行います。感染など回避できない酸化ストレス曝露時には全身管理などの支持療法を行います。輸血が放るような場合もあります(赤血球内部の原因による溶血ですので、輸血製剤中の赤血球は影響を受けません)。著しい溶血時には腎機能低下を避けるため、十分な輸液が必要になります。