東京早産予防研究会設立趣意書 

周産期医療に於いて、我々が現在取り組むべき最も重要な課題の一つは早産の予防であります。日本の周産期死亡率は世界一低い水準に達していますが、妊娠30週未満の早産児の死亡率は高く、先天奇形を除く周産期死亡の約75%は早産児が占めています。また早産児は生存後も様々な困難を抱えていることが指摘されています。1000g未満の超低出生体重児の長期予後では、その20%以上が精神発達に問題を残しているとの報告もみられます。これらの児の予後を改善するためには、新生児医療の進歩に期待するのみではなく、早産そのものを減少させる事が重要なことは言うまでもありません。
 最近の研究から、早産の原因として絨毛膜羊膜炎が注目され、その前段階として細菌性腟症、頚管炎の関与がクローズアップされてきました。また、切迫早産に関する新しいマーカーや検査法も臨床に導入されつつあります。しかし、それらの新知見や検査法を実地臨床の場で早産予防にどう生かすかについては未だ模索段階にあるのが現状で、そのための臨床研究の進展が急がれている所です。
早産予防のための臨床研究では多くの症例を研究対象とする必要があります。既に欧米諸国からは多施設共同の多症例に基づく臨床研究の報告がなされ始めていますが、早産の予防対策は医療体制や社会環境にも関わる極めて臨床的な課題であり、日本の周産期医療の実状に則した日本独自の研究を実施することが不可欠であります。また、その様な共同研究の実効を高めるためにはグループとして研究会を結成することが最善の方法と考えられます。
以上の事情を鑑み、下記の活動を行う研究会を設立し、名称を『東京早産予防研究会』と致しました。


一、本研究会は、妊婦健診時のスクリーニング、ハイリスク症例の抽出と取り扱い、切迫早産の治療・管理を含めた早産の予防に関するあらゆる医療を対象とした研究を行い、その成果を基に早産率、特に早期早産率の実質的低下を目指す。

一、本研究会は、上記目標のために多施設で共同研究を行う。

一、本研究会は、研究結果を公開し、研究結果に基づく早産予防の具体的診療指針の作製及び一般臨床家への周知、啓発を行う。

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