東大病院におけるシステム化の現状
杉岡陽介 東京大学医学部附属病院 検査部

「はじめに」
当院におけるシステム化は昭和48年の電算機設置に始まり、昭和61年病棟オーダリング稼働、
最近では平成5年度の新外来棟完成と同時にリプレイスを行い、院内各所で発生する患者情報の統合
管理、入外オーダリング、外来診療予約システムを稼働させた。また検査部においては平成4年度に
総合検体搬送(以下LA)システムを稼働させ、外来診療予約システムとの融合により全外来患者に
診察前検査を可能とした。今回は当院でのシステムの有用性について報告する。

「システム構成」
現在、病院情報システムは4年のレンタル方式とし、大型コンピューター3台(診療系、医事会計系、
検査系)をLANで結び情報処理を行っている。またLAシステムには統合CPUを設け、分析装置、
搬送系を制御させ、検査系システムの付加の軽減をはかっている。院内情報や連絡事項は学内LAN
を使った電子メールも使用可能である。

「予約診療を有効にするLAシステム」
患者にとって病院での待ち時間は深刻な問題である。この問題を解決すべく予約診療とLAシステムとを
連携し結果報告を迅速化し、全ての外来患者において診察前検査を可能とした。すなわち患者が予約
1時間前に採血を行えば、その日の結果を元に医師は診断や投薬が可能となり、患者は検査結果を
聞きに再度病院を訪れることが無くなり、システム導入により診療体系そのものを変える事ができた。
これにより患者への負担減少ならびに病院サービスの向上が期待できる。

「緊急検査システム」
ホストのクローズやダウンに左右されず単独稼働できるシステムとし、依頼は伝票対応とした。
結果は各病棟端末から参照でき、報告書の出力も可能とした。

「LAシステム」
検体をベルトコンベアで搬送し前処理から保存まで、一連の検査業務を自動で行うシステムである。
本システムの特徴は1本搬送とし、リアルタイム性、検体移動の自由度を追及し現場のニーズにあった
システムを確率した事にある。平均報告時間を表1に示す。

「診察前報告のための条件」
報告までの過程には採血、検体の前処理、測定、精度管理、報告といったいくつかのポイントがあり、
そこをいかにリアルタイムに迅速処理するかによって報告時間は変わってくる。病院規模での迅速化を
考慮する必要がある。

「問題点」
オーダリングのダウン対策、メンテナンス契約が結べない、システムの全体像が分かる人材が必要、
高齢化対策、予算との兼ね合い等がある。

「まとめ」
システム化のために重要な事は、何が検査部に求められ何を提案できるかといった事に対し、現場が
目的意識をしっかりもち、患者および臨床を考慮した経済性、業務効率を考えた病院規模での有用な
システムを構築する事である。検査部内のセクショナリズムの排除も重要な要素であり、今までの
運用にこだわり無理なシステム化を行うより運用を変える勇気も必要である。今後、当院では小規模
であるが画像処理関連強化を主としたシステム更新を平成9年度に行い、平成12年度の新病棟完成
と同時に大規模な更新を行う予定である。


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