【はじめに】
 近年、病院検査におけるシステム化はめざましい進歩をとげている。
なかでも病院診療体系そのものを変えうる可能性を持ったシステム化が
病院内で始まっている。検体搬送システム(以下LA)である。
本システムは、前処理、分析、精度管理、結果報告、保存までの一連の
業務が自動化でき、省力化、結果報告の迅速化、感染防止等が可能となる。
またその日の検査結果をもとに医師は診断ならびに投薬が可能となるため、
患者は検査結果を聞きに再度病院を訪れることが無くなり、患者への
負担減少ならびに病院サービスの向上が期待できる。

【ハード構成】
 仕分けライン、生化免疫イムノアッセイライン
{TBA80M,TBA80FR(東芝)各1台,AIA1200(東ソー)2台},
血液ライン
{STKS(コールター)2台,H8200(日立)1台,
HS200(NE8000,R3000)(東亜)},
血糖凝固ライン
{グルコローダーNX(シノテスト)2台,
CR-700(国際試薬)2台},
ヘモグロビンA1cライン{HLC-723GHb」(東ソー)2台}
の5ラインより構成するトータルシステムである。
当院LAシステムは1本搬送による無駄のないランダム処理を可能としたことを
特徴とする。これによりラックによる制約から解放され、検体個々での管理が
可能となり1本ずつの振り分けや検体番号順での搬出等、現場のニーズにあった
搬送システムが確立した。

【システム概要】
 検体はオーダリングシステムによりオーダー入力と同時に出力される
バーコードラベルを入院は病棟で外来は採血時に採血管に添付しペーパーレスで
検査部に提出される。検体は採血室後部のLA搬入口より搬入し各ラインで
処理される。測定結果はリアルタイムデータチェック(上下限値、前回値、
項目間差、分析装置情報)を行い正常なデータはリアルタイムに送信され、
必要があれば自動再検を行う。

【ダウン対策】
 分析装置単体での運用、各ラインの独立稼働、分析装置のバックアップ体制、
システムトラブルの自動解除、ホストへのバッチ送信機能、モデムによる
リモートメンテナンスなどを行っている。

【報告時間】
一日の平均報告時間を検査部受付から(採血時間、採尿時間含む)と
搬送ライン搬入後からに分け表に示した。

【導入前検討項目】
1.外部サンプリング機構のある分析装置の接続。
2.複数小型機種で構成する搬送システムの構築による渋滞回避策。
3.拡張性のある制御テーブル。
4.親検体から分析装置への直接サンプリングはしない。
5.小分注時泡だてない。
6.分注異常 ( 少量、フィブリン等 ) 検体との見分けを単純にする。
7.保存検体は検体番号順に収納する。
8.検体搬入口の複数化。
9.システムトラブル時の対応。 10.バーコードラベルの貼かたの制限をなくす。
11.消耗品補充の簡素化。
12.搬送ラインの騒音、熱、対策。
13.診察前検査の充実。
14.検体処理体系をバッチからリアルタイム処理へ移行。
15.無人化へのアプローチ。

【導入後改良点】
1.生化学検体凝固待ち時間の自動化(採血後すぐに検体をラインへ搬入可能となった→報告時間の短縮化)。
2.生化学用空検体引き込みレーン(分注異常検体の識別が不要となる)。
3.STKSをラック対応から1本対応へ(ラック搬入待ち時間の削除による迅速化)。
4.生化学ライン遠心器の冷却化(回転による熱を下げるため)。

【まとめ】
 LAシステムの導入によって検体検査の部門で最も遅れていた検体の前処理部分が
自動化され、検査の迅速化が達成でき、診察前検査を可能とした。また省力化により
外来採血や専門技術が増強され、単に検査部内だけではなく病院自体のサービスの
向上にもつながった。しかしLAシステム内では迅速化を達成したが、搬入までの時間が
受付、採血など人が介在する部署に左右されているのも事実であり今後、運用
その他の面でさらに充実をはかりたい。搬送導入により検体を直接見る機会が減り、
今まで得られていた情報も失ってしまうことがある。今後は今まで経験的に得ていた
情報も自動で検出できるファジーシステムが必要になるであろう。
また次期システム構築時のスペースの問題さらに予算化の問題等も重要な要素である。


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