新技術を応用した第二世代搬送システムの構築
【はじめに】
搬送システムを導入した病院では検査の効率化、迅速化、省力化が達成され、
施設の機能として十分活用されていると思われるが、一方では導入前には
まったく無かったような雑用が発生したり、機能的な不具合も各メーカーの
搬送システムにみられる。今回、我々は搬送システムの更新にあたって、
今までの搬送システムによる良い点は継承し、さらに、新しい発想と新技術により、
真の意味での省力化と迅速化が達成できるユーザーの求める第二世代の搬送システム
(東芝・ids社)を構築したので報告する。
【新しい発想と新技術】
1)自走車の活用:
ラインとラインが切断されるため導線が確保される。
自走車の誘導テープを貼る事で自由なレイアウトが可能である。ラインを分断して
構築できるのでラインごとの入れ替えができ、リプレイスが容易。
また、自走車で接続することによりトータルシステムの構築も可能である。
搬送システムは、検体がラインへ届かなければどんなに早く処理できる装置を導入しても
無意味であり搬入ユニットまでいかに早く検体を運ぶかが問題点となる。
今回は採血台と仕分けライン間の検体を自走車が運び検体放置時間を無くしている。
2)採血台への搬送システムの組込み:
検体の放置時間解消のため採血後検体を、採血者が採血後すぐに搬入できるシステムを構築。
さらに採血台にモニターを設置し、採血管の要求や採血患者の属性、検査依頼項目の確認、
ラベル再発行といった採血者にとって必要な情報を集約し、採血者が必要な時にいつでも
情報を出せるシステムとした。
3)至急検体の追い越しユニット:
分析装置の混雑状況を見て検体の振り分けを行うユニットである。ラインに渋滞が発生すると、
1本搬送の利点を生かし通常検体をこのユニットに待避させ、至急の検体のみを先へ進ませる。
渋滞が緩和されると外来、入院の順に検体をピックアップし優先度の高い順に測定へと進ませる。
これにより、技師による搬入順の確認や検体の入れ替えといった作業の負担が無くなった。
4)生化学消耗品の自動供給ユニット:
今までのシステムでは分注用子検体チューブと分注チップの供給は1本ずつ技師が並べていたが、
今回は並べる必要がなく、ランダムに供給すれば、自動で並び替え、分注器に供給できるユニットを
導入した。
5)フィブリン析出検体の自動再分注:
自動でポリスチレン製のビーズを注入し、再度自動で遠心、分注するシステムを開発した、
これにより、フィブリン析出検体の手作業による分注がほぼ無くなり、
エラー検体も迅速に処理が進むようにした。
6)搬出ラックの活用:
ラインでの測定後の検体は次のステップへ進むためのスペースへ分別収納されるため、
リストによる確認や選別の作業を必要としない。
以上6点は、どれも1本搬送だからこそできるフレキシブルで無駄のない動きによって制御されている。
【まとめ】
第一世代での問題点を大幅に改善した第二世代搬送システムの構築を行ない、さらなる自動化を達成した。
今後はこうした自動化によって、得た技師の余力を人員削減の方向だけではなく院内でいかに有効に
使うかを考えていく必要がある。
なお、詳細はホームページ
http://square.umin.ac.jp/sugi/
を参照下さい。
スライドです。
スライド1
システムの全景
スライドにラインの全景を示しました。採血ライン、仕分け、血液、凝固、血糖、生化学、
尿ラインです。
スライド2
平均報告時間の推移
平均報告時間の推移を示しました。
結果報告時間に関しましてはラインの中だけの
数字を見ても病院としてはまったく意味のない数字なので、今回は受付後、採血、採尿、
待ち時間を含めた報告時間も示しました。
生化学では・・・・血算では・・・血糖では。。。凝固では・・・、尿に関しまして
今回からの搬送接続なので比較はできませんが・・・・・です。
スライド3
採血システムの全景
こちらが採血システムの全景です。
採血台の中に搬送システムを組み込み、採血管の供給と採血後検体を採血者がすぐに
搬入できるシステムとしました。
また、手元にはモニターを設置し、採血管の要求や採血患者の属性、検査依頼項目の確認、
ラベル再発行といった採血者にとって必要な情報を集約し、必要な時にいつでも
情報を出せるシステムとしました。これにより、少量しか採血できなかった場合などに
採血者の手元に検査項目が表示されるので採血量の判断がその場でできるようになり、
患者の待ち時間の解消にもつながりました。
スライド4
採血システムの写真、搬入口など
検体の搬入口と採血管の供給口です。トレーに乗った採血管が手元に搬送されます。
採血後の検体の搬入口も真横に設置したので採血者の負担を無くしました。
スライド5
自走車について
自走車についてですが、
1 ラインとラインが分断されていますので導線が確保されます。
2 ラインからラインへと検体の移送が可能となり、離れた場所にラインを設置しても
トータルシステムとしての運用が可能となります。
3 したがって、自由なレイアウトが可能です。
4 ラインを分断して構築できるのでラインごとの更新が容易になります。
5 走行には24Vのバッテリーを使用しており、停止中に自動で充電を行います。
動線確保のためには各搬送メーカーが、高架式や床下式を開発していますが、
レイアウトの自由度、拡張性、更新対策等を考慮しますと自走車の導入は有効かと思われます。
スライド6
フィブリン析出検体の再遠心
分注器において、フィブリン析出と判断された検体には自動でポリスチレン製のビーズを
注入し、再度自動で遠心、分注するシステムを開発しました。
これにより、フィブリン析出検体の手作業による分注がほぼ無くなり、エラー検体も迅速に
処理が進み、より、省力化が達成されました。
搬送システムの導入時の注意事項はこのようなエラー検体の処理をいかに簡略化できるかが
大きな問題になると思います。
スライド7
消耗品の自動補給
第一世代では分注用子検体チューブと分注チップの供給は1本ずつ技師が並べていましたが、
今回は並べる必要がなく、ランダムに供給すれば、自動で並び替え、分注器に供給できる
ユニットを導入しました、当院では生化学検体は1日800本、平均分注本数は3本です。
つまり800本かける3分注で子検体用チューブを2400本、分注チップを800本、
手作業で技師が並べなければならず、これは技師としての本来業務から大幅に離れた作業であり、
省力化とは言い難いシステムでした。この部分が自動化される事により、技師に余力を持たせ、
臨床検査技師としての本来業務に集中できるようになりました。
また、ラインは往復のラインなので先に進んだホルダーを元に戻すといった余計な雑用も
まったくありません。
こういった、雑用がいかに縮小できるかも省力化にとっては大きな問題になると思います。
ユーザーの運用を考慮したシステムの提案を行えるメーカーの選定も重要な事項です。
実際にこのようなユニットを提供しているのはIDSだけではないでしょうか。
スライド8
搬入搬出ユニットについて
搬入搬出ユニットについてです。
搬入口においては、ラインに渋滞が発生すると、1本搬送の利点を生かし通常検体を
このユニットに待避させ、至急の検体のみを先へ進ませます。渋滞が緩和されると外来、
入院の順に検体をピックアップし優先度の高い順に測定へと進ませます。これにより、
技師による搬入順の確認や検体の入れ替えといった作業の負担が無くなりました。
また、搬出ユニットでは、ラインでの測定後の検体を次のステップへ進むためのスペースへ
1本ずつ振り分け、分別収納させます。これによりリストを出力し検体の確認や選別といった
作業を必要とせず、ライン外での運用も簡略化できまた。搬送システムの導入には
ライン内だけではなく、ライン外の運用も簡略化できるシステム構築も重要な事項です。
スライド9
外来尿検体の搬入口
尿一般ラインの搬入部です。
ここでは、採尿室に搬送ラインを組み込み、患者さんに直接ハルンカップを搬送ラインに
セットして頂き、スタートボタンも押してもらってます。
これにより、完全に検体放置時間はゼロとなりました。
さらに安全対策、判らない場合の呼び出しボタンその他も装備しております。
本件に関する詳細は午後の演題番号191番で発表がありますのでそちらもお聞き下さい。
凝固ラインに関しましては演題番号188番で発表があります。
スライド10
まとめ
まとめと致しまして、
第一世代での経験をふまえた第2世代のシステムの構築により、大幅な機能改善、雑用の縮小に
成功しました。分析装置にこだわるばかりに運用や構築に制限のあるような技師の満足度を優先した
システムの構築ではなく、病院機能としての充実、臨床側の満足追求、検査技師の本来業務への集中
といった事を考慮し、ユーザーの立場にたったシステムの構築を行うためには1本搬送により
フレキシブルに検体を動かす事が必須でした。
また、ユーザーの意見を取り入れ構築できるメーカーの選定も重要な事項です。
おまけ1
尿廃棄ユニット
おまけ2
各ラインの平均報告時間
おまけ3
採血システムの患者情報表示モニター