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− メタボリックシンドロームの発症率およびその発症に影響を及ぼす生活習慣因子 −

  当研究室の大塚らは、職域におけるメタボリックシンドロームの発症率およびその発症に影響を及ぼす生活習慣因子についての検討を行い、その結果を産業衛生学雑誌(2011年53巻3号78-86ページ) において公表しました。

  本邦において、肥満や関連する生活習慣病の集積であるメタボリックシンドロームの増加が問題となっています。メタボリックシンドロームは心臓病や脳卒中などの動脈硬化性疾患のリスクを高めますので、 動脈硬化予防の視点からもメタボリックシンドロームの改善および予防は重要です。

  そこで、本研究では、神奈川県内の精密機器開発事業所における男性従業員948人の健康診断データについて4年間の追跡調査を行い、メタボリックシンドロームの発症率およびその発症に影響を及ぼす生活習慣因子を検討しました。 メタボリックシンドロームの診断は、日本における基準に従いました。

  その結果、メタボリックシンドロームの4年発症率は、腹部肥満(腹囲径85cm以上)を有さずともその他のメタボリックシンドローム構成因子(血圧高値、脂質異常、血糖高値)を2つ以上有する群で37.9%と高率を示し、次に、 腹部肥満を有しさらにその他の構成因子を1つ有する群が続きました(24.6%)。一方、腹部肥満を有さずその他の構成因子を1つだけ有する群および1つも有さない群における発症率はそれぞれ3.7%および1.2%と低率でした(図1)。

  メタボリックシンドローム発症リスクを増加させる生活習慣因子は、睡眠不足(6時間以上と比べ5時間未満で発症リスク3.2倍)、喫煙(発症リスク1.6倍)および過剰飲酒(発症リスク2.2倍)でした。

  これらの結果から、腹部肥満プラス血圧高値、脂質異常、血糖高値といった生活習慣病を有する人のみならず、腹部肥満を認めなくてもこれらの生活習慣病を複数有する人は将来のメタボリックシンドローム発症に対して特に気を つけなければならないと言えます。また、メタボリックシンドローム発症リスク低下のためには、睡眠不足や喫煙、過剰飲酒といったライフスタイルを改善する必要があることも明らかとなりました。 これらの結果が、今後職域をはじめとする様々な分野における健康増進活動に生かされることが期待されます。

(原著)
大塚俊昭、川田智之、矢内美雪、北川裕子、菅裕彦.一職域男性集団におけるメタボリックシンドロームの発症率およびメタボリックシンドローム発症に関連する生活習慣因子の検討.産業衛生学雑誌 2011; 53: 78-86. [PubMed]


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