− 森林浴(森林環境)による免疫機能への影響 −
当研究室の李(卿)らは、健康増進及び予防医学の視点から森林浴(森林環境)による免疫機能への影響について検討を行い、その結果をInternational Journal of Immunopathology and Pharmacology誌及び
Journal of Biological Regulators & Homeostatic Agents誌において公表しました。
森に入るとほっとするという人は多いでしょう。森林浴はなんとなく気持ちいいのは誰も認めるでしょう。しかし、「森林浴をするとストレスホルモンが減少し、免疫力が上がり、がんをはじめとするさまざまな病気の予防につながる」
と聞けば、驚かれる人が多いのではないでしょうか。
森林浴による免疫機能への効果を検討するために、まずは東京都内大手企業に勤める健常な中年男性社員及び東京都内大学病院に勤務する健常な女性看護師を対象とした2泊3日の森林浴実験を行いました。対象者は長野県飯山市(男性)、
上松町(男性)及び信濃町(女性)の森林環境中に2泊3日間滞在し、それぞれ3ヶ所の森林遊歩道を散策し、その前後に免疫学指標等を測定しました。
その結果、男女を問わず、森林浴がヒトNK(ナチュラル・キラー:Natural killer)細胞数及びNK細胞内の抗がんタンパク質の増加によって、人NK活性を上昇させることが判明しました。
一方で、都市部での一般旅行ではこのような効果が得られませんでした。さらに森林浴によるNK活性等の上昇効果は、1ヶ月ぐらい持続することも明らかとなりました(図1)。
次に中年男性を対象とした日帰り森林浴実験を実施し、その効果を検討しました。その結果、日帰り森林浴もヒトNK細胞数及びNK細胞内の抗がんタンパク質の増加によってNK活性を上昇させ、この効果は、
1週間くらい持続することも明らかとなりました。
森林から放出されたフィトンチッド及び森林浴によるリラックス効果がこの活性化に寄与したと考えられます。森林浴はNK活性を上昇させ、健康増進とがんの予防効果に寄与することが期待されます。
本研究は平成16-18年度 農林水産省高度化事業研究および平成21年度 森林総合研究所助成金により行われました。
(原著)
Li Q, Morimoto K, Nakadai A, Inagaki H, Katsumata M, Shimizu T, Hirata Y, Hirata K, Suzuki H, Miyazaki Y, Kagawa T, Koyama Y, Ohira T, Takayama N, Krensky AM, Kawada T. Forest bathing enhances human
natural killer activity and expression of anti-cancer proteins. Int J Immunopathol Pharmacol 2007; 20: 3-8.
[PubMed]
Li Q, Morimoto K, Kobayashi M, Inagaki H, Katsumata M, Hirata Y, Hirata K, Suzuki H, Li YJ, Wakayama Y, Kawada T, Park BJ, Ohira T, Matsui N, Kagawa T, Miyazaki Y, Krensky AM. Visiting a forest, but
not a city, increases human natural killer activity and expression of ant-cancer proteins. Int J Immunopathol Parmacol 2008; 21: 117-127.
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Li Q, Morimoto K, Kobayashi M, Inagaki H, Katsumata M, Hirata Y, Hirata K, Suzuki H, Li YJ, Wakayama Y, Kawada T, Ohira T, Takayama N, Kagawa T, Miyazaki Y. A forest bathing trip increases human natural
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activity and the expression of anti-cancer proteins in male subjects. J Biol Regul Homeost Agents 2010; 24: 157-165.
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