日本医科大学大学院医学研究科 衛生学公衆衛生学分野 公式ホームページ





− 森林浴(森林環境)による血圧等への影響 −

  当研究室の李(卿)らは、健康増進及び予防医学の視点から森林浴(森林環境)による心臓血管及び代謝指標への影響について検討を行い、その結果をEuropean Journal of Applied Physiology誌 (2011年111巻11号2845-2853ページ)において公表しました。

  森林浴は交感神経と副交感神経活性への影響を介してリラックス効果を発揮することが知られています。この視点から、森林浴が交感神経活動への抑制を介して血圧降下効果があるのではないかという仮説を立て、 森林浴による血圧等の影響を検討しました。

  本研究は、心血管疾患の現病・既往歴を有さず、生活習慣病関連の内服治療を受けていない健常男性16人(平均57±12才)を対象としました。対象者は埼玉県にある森林公園の遊歩道を約3.5時間、6キロ散策しました。 その対照として都市部おいても同様な時間と距離を散策しました。散策当日午前10時半に現地に到着した後、午前2時間と午後1時間ずつ半散策し、途中数回休憩を取りつつ午後3時半に散策を終了しました。血圧は、 静かな部屋で10分以上の休憩を取った後に朝8時、昼1時及び夕方4時に全自動血圧計にてそれぞれ3回測定しました。また散策当日及び翌日の朝に空腹採血・採尿して各種検査を行いました。

  その結果、1)都市部での散策と比べ、森林浴は有意に血圧を低下させました(図1)。2)森林浴は有意に尿中ノルアドレナリン及びドーパミン濃度(ストレスホルモン)を減少させ、そのリラックス効果が実証されました。 3)森林浴は有意に血中アデイポネクチンとDHEA-S(デヒドロエピアンドロステロンサルフェート:アンチエージング指標)レベルを上昇させました。

  これらの結果より、森林浴は、交感神経活動の低下(尿中ノルアドレナリン濃度低下)を介して血圧を低下させ、さらに血中アデイポネクチン及びDHEA-S にも良い影響を与えることが明らかとなりました。 森林浴の健康増進と疾病予防効果が期待されます。

  本研究は平成22年度 森林総合研究所助成金により行われました。

(原著)
Li Q, Otsuka T, Kobayashi M, Wakayama Y, Inagaki H, Katsumata M, Hirata Y, Li Y, Hirata K, Shimizu T, Suzuki H, Kawada T, Kagawa T. Acute effects of walking in forest environments on cardiovascular and metabolic parameters. Eur J Appl Physiol 2011; 111: 2845-2853. [PubMed]


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