日本医科大学大学院医学研究科 衛生学公衆衛生学分野 公式ホームページ





− 自覚的健康度評価の意義 −

  当研究室の川田らは、自覚的健康度を規定する要因について婚姻状況を含めた地域調査を行い、その結果をJ Divorce & Remarriage 誌(2011年52巻1号48-54ページ)において公表 しました。

  自覚的健康度は、主観的健康状態の総合的評価指標です。「国民生活基礎調査大規模調査」で「あなたの現在の健康状態はいかがですか」という質問文に対し、「1.よい、2. まあよい、3.ふつう、4.あまりよくない、5.よくない」という回答選択肢を用意しています。自覚的健康度は、各人が設定する健康目標に対する相対的な健康状態で、あくまで主観的 な健康評価方法です。しかし、この指標を用いて、わが国や欧米では生命予後や疾病発生の予測がなされています。

  本調査は、G県在住40〜69才男女10,268人(男性5,062人,女性5,206人)を対象としました。対象者には事前に調査に関する説明を行い、同意を得ました。解析項目は、性、年齢、自覚的健康度 (ここでも5段階評価ですが,「国民生活基礎調査大規模調査」のそれと異なり、非常によい、よい、ふつう、悪い、非常に悪い  としました)、慢性疾患の有無、学歴、交友関係、 婚姻状況(既婚、未婚、離婚、死別、その他)に加え、多愁訴および抑うつの程度として、鈴木庄亮群馬大学名誉教授らが開発した健康調査票THI (Total Health Index)の独立した2つの尺度を 使用しました。高得点ほど、訴えが多い指標です。

  自覚的不健康が「悪い」または「非常に悪い」人を自覚的不健康者とすると、その割合は7.9%でした。自覚的不健康を予測する項目として、男性(女性に対して4割増)、慢性疾患あり(疾患なし に対して11倍)、義務教育のみ(高卒以上に対して2割増)、離婚経験者(既婚者に対して5割増)、多愁訴(1得点増加に対して1割増)、抑うつ(1得点増加に対して1割増)という結果でした(表1)。

  慢性疾患があることは、自覚的不健康にも大きく寄与していることが示されています。また、他の項目については、自覚的不健康が「2倍」までにはなりませんでしたが、それぞれ統計的に「関連性がある」 と判断されました。
  例えば、男性離婚経験者は、自覚的健康度に問題を抱えやすい「健康リスク集団」と考えられます.

  客観的な身体異常が検出されなくても、自覚的違和感を訴える場合が日常臨床でも少なからずあります。その点で、自覚的健康度による評価は無視できません。 セルフケアの1手段として、ご自身の自覚的健康度を活用していただきたく思います。

(原著)
Kawada T, Suzuki S. Marital status and self-rated health in rural inhabitants in Japan: A cross-sectional study. J Divorce & Remarriage 2011; 52: 48-54. [Journal Homepage]


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