− 新たな素材を用いた唾液採取器具の作成 −
当研究室の勝又らは、新たな素材を用いた唾液採取器具を作成し、その結果を日本衛生学雑誌(2009年64巻、811-816ページ)において公表しました。
唾液は生体情報を得る生体試料の一つです。さらに、採取に際して苦痛を伴うことがほとんどありません。しかし、採取する手法により、測定結果に影響を及ぼすことが知られています。そこで今回、新しい素材を用いた唾液採取器具を作成し、
従来から用いられている唾液採取器とその性能を比較しました。
今回作成した唾液採取器具(サリソフト®及びサリキッズ®)は、ポリプロピレンとポリエチレンの重合体を素材としました(図)。本器具を用いて、唾液のpH、唾液中のコチニン(タバコ由来のニコチンの代謝物)、コルチゾール、
デヒドロエピアンドロステロン及びテストステロンの測定を行いました。比較対象として流涎唾液及び別の唾液採取器具(サリベット)を用いました。
その結果、コチニンとコルチゾールの測定値には三者間に有意な差は見られませんでした。しかし、デヒドロエピアンドロステロン及びテストステロンでは、サリソフトを用いた唾液と流涎唾液では測定値に有意な差は有りませんでしたが、
サリベットではテストステロン濃度が約1.9倍高く、デヒドロエピアンドロステロンにおいては測定範囲の上限(1000pg/mL)を超える結果となりました。
さらに、唾液のpHは流涎唾液で7.9±0.6(平均値±標準偏差)、サリソフトでは7.9±0.6で有意差は見られませんでしたが、サリベットでは6.4±0.6と唾液が酸性化していました。
以上の結果から、今回開発したポリプロピレンとポリエチレンの重合体を素材とした唾液採取器具サリソフトは、唾液中のコチニンを始めステロイドホルモン等の測定に適していることが示されました。
本唾液採取器は、実用新案登録(第3138944号、平成19年12月26日)及び意匠登録(第1345092号、平成20年10月24日)されています。
(原著)
勝又聖夫,平田紀美子,稲垣弘文,平田幸代,川田智之.新しい素材を用いた唾液採取器具による唾液中のコチニン, コルチゾール, デヒドロエピアンドロステロン及びテストステロンの測定.日本衛生学雑誌 2009; 64: 811-816.
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