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− 正常耐糖能者における頸動脈初期動脈硬化 −

  当研究室大学院生の加藤らは、耐糖能異常を有さない者における頸動脈初期動脈硬化の進展を検討し、その結果をDiabetic Medicine誌(2014年31巻、76-83ページ)において公表しました。

  我が国において糖尿病の有病者数は増加の傾向にあり、合併症予防の点からも糖尿病の進展予防および早期治療が重要といえます。糖尿病が疑われる場合は75g経口ブドウ糖負荷試験を行い、 負荷後2時間の血糖値から糖尿病型、境界型(耐糖能異常)、正常型に分類します。
  負荷後血糖が境界型では、正常型に比べ心血管疾患の発症リスクが高いことが今までの研究で示されています。 さらに最近の研究では、耐糖能正常型であっても負荷後血糖の上昇は心血管疾患のリスクを増加させる可能性があることが報告されています。

  そこで、本研究では群馬県内の病院にて人間ドック受診し、ブドウ糖負荷試験で正常耐糖能と診断された663人(男性565人、平均47±9歳)に対し、早期の動脈硬化指標である頸動脈内膜中膜複合体肥厚度 (CIMT)を超音波検査で測定し、負荷後血糖を含む血糖関連指標とCIMTとの関連を検討しました。

  結果、負荷後1、2時間値血糖、HbA1cの各々を3分位に分けた場合、各指標とも分位が上昇するにつれCIMTは増加しました。これに対し、空腹時血糖の3分位間でCIMTに差は認めませんでした。

  多重線形回帰分析では、年齢、男性、高血圧、脂質異常症、現在の喫煙に加え、負荷後2時間血糖がCIMTを規定する有意な因子となりました。一方、その他の血糖指標は有意な因子とはなりませんでした。

  さらに、高血圧を有し負荷後2時間血糖値が3分位で最も高い群のCIMTは、高血圧を有さず負荷後2時間血糖値が3分位で最も低い群と比較し、他の因子で補正した後も有意に増加していました(図1)。

  以上の結果より、正常耐糖能者において、負荷後2時間血糖値と頸動脈初期動脈硬化の進展とは有意な正の関連性を示し、特に2時間血糖高値と高血圧の組合せは、その進展に寄与することが示唆されました。

負荷後2時間血糖が正常範囲内であってもその上限に近く、かつ高血圧を有するものは、動脈硬化進展予防の視点から早期の対策が必要であると考えられます。

(原著)
Kato K, Otsuka T, Kobayashi N, Kon Y, Kawada T. Two-hour post-load plasma glucose levels are associated with carotid intima-media thickness in subjects with normal glucose tolerance. Diabet Med 2014; 31: 76-83. [PubMed]



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