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Vibram製Five Fingersシューズの問題点

Vibram Five Fingersは足の5本の指が独立している地下足袋が進化したような形状の靴である。靴底が薄く、足裏感覚が新鮮だった。鋭敏な足裏感覚は、地面の凹凸を感じるために有効だ。樹木の根の上に乗って、それを足の指で掴むように歩くことができる。私はこの靴を1年間日常的に使って、たいへん気に入っていた。7月の蝶ヶ岳登山で登山靴として使った。蝶ヶ岳山頂に到着してから4日連続で大滝山と蝶ヶ岳を往復する歩荷訓練でも使用した。この歩荷訓練中に両足の足裏全体に痛みを感じ初めていた。自分では「一晩、休めば回復するだろう」と安易に考えていたけれども、5日後に蝶ヶ岳から下山する際には、ストックを突きながらか下山せざるをえないほど両足の足裏の痛みが激しくなっていた。

蝶ヶ岳から下山して、1週間休んで、8月に入ってから2回御在所を登った。足裏の痛みに耐えながらロッククライミングした。下山中に両足裏とも痛みが激しくなった。下山後に平地を歩いても足裏に痛みを感じるようになり、特に右足の第五趾に激痛が走るようになった。

異常が続くので、休息第一と考えて8月中旬から9月下旬まで1ヶ月以上登山活動を休止した。それでも右足の第五中足骨の痛みは消えなかったので名古屋市立大学病院整形外科の名医Dr. Youhei KawagushiとDr. Yusuke Oguriのご高診を仰いだ。X-線単純撮影では骨に異常所見は認められなかった。しかし磁気共鳴コンピュータ断層撮影で、以下のような病変が発見された。

(小趾外転筋の付着部に病変)
上図矢印の部位に小趾外転筋が付着する。付着部に一致しての骨に炎症(浮腫像)が認められた。小趾外転筋は足が左右に揺れるのを防いで体のバランスを保つ作用を持つ。足首が内反する方向に動くときに、小趾を広げてその動きを阻止しする働きがある。過剰な内反する動きを阻止することで捻挫を予防している。したがって登山道で凹凸の激しい道を歩く際に、体のバランスを保つために、この筋肉が使われて筋筋膜性疼痛症候群を起こしやすい。すべての趾が独立して動くVibram Five Fingersはバランスを取りやすいので、捻挫を起こしにくいメリットがある。
私は右足首を捻挫する癖があった。確かにVibram Five Fingersを履いてから捻挫を繰り返さなくなった。体のバランスを整えるために小趾外転筋を有効に使うことができたのだう。しかし、小趾外転筋を使い過ぎた結果、今回のような症状が出てきたと推測できる。

(捻挫を予防に関連する筋肉群)
短腓骨筋と長腓骨筋は、足先の回内を司る強大な筋である。長腓骨筋の起始部は脛腓関節の関節包、腓骨頭および腓骨の上半にある。短腓骨筋は右足の第5中足骨に付着する。この二つの筋のおかげで、凹凸の激しい登山道でも足首がぐらつかず、捻挫をせずに歩くことができる。長腓骨筋からの腱は、外足から足底を超えて内側の第1中足骨に付着する。ちょうど弓の弦のように張る形で、横方向の足のアーチ構想を作り出す役割を果たしている。Vibram Five Fingersを履くことで開張足の傾向になるため、横方向の足底のアーチ構造が弱まる。この傾向は長腓骨筋の横方向の足底のアーチ構造を作り出す機能と相反するために、長腓骨筋に過剰な負荷をかける可能性がある。

(治療方針)
私は、これまで日常生活でも使っていたVibram Five Fingersを履くことを中止して、靴底の硬目の靴に履き替えた。靴の中敷(インソール)の中央に横方向の足底のアーチ構造を補強するパッドを入れて経過を観察することにした。長腓骨筋からの腱は足底を横断して弓の弦のように張る形で横方向の足底のアーチ構造を作り出す。パッドは一時的に足底のアーチ構造を作り出して、骨への負荷を軽減させるために必要かつ十分な高さのものに制限したい。

三浦 裕
名古屋市立大学大学院医学研究科分子神経生物学准教授
名古屋市立大学蝶ヶ岳ボランティア診療所 開設者
愛知県山岳連盟所属 社会人山岳会 チーム猫屋敷


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(Last modification, Oct 02, 2016)