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眞柳誠「ベトナム國家圖書館の古醫籍書誌」(茨城大学人文学部紀要『人文学科論集』45号1-16頁、2006年3月)、2010年8月16日補足
Makoto MAYANAGI, The Bibliography of the Old Medical Books in the National Library of Vietnam.
Bulletin of the College of Humanities, Ibaraki University, Studies in Humaities, Vol.45 p.1-16, March 2006.

眞柳誠「ベトナム國家圖書館の古醫籍書誌 補遺(一)」(茨城大学人文学部紀要『人文コミュニケーション学科論集』10号21-39頁、2011年3月)
Makoto MAYANAGI, The Bibliography of the Old Medical Books in the National Library of Vietnam --Addendum(1)--
Bulletin of the College of Humanities, Ibaraki University, Studies in Humaities and Communication, Vol.10 p.21-39, March 2011.

眞柳誠「ベトナム國家圖書館の古醫籍書誌 補遺(二)」(茨城大学人文学部紀要『人文コミュニケーション学科論集』11号51-73頁、2011年9月)
Makoto MAYANAGI, The Bibliography of the Old Medical Books in the National Library of Vietnam --Addendum(2)--.
Bulletin of the College of Humanities, Ibaraki University, Studies in Humaities and Communication, Vol.11 p.51-73, September 2011.

ベトナム國家圖書館の古醫籍書誌

眞柳 誠

The Bibliography of the Old Medical Books in the National Library of Vietnam

MAYANAGI Makoto



はじめに

 中國周圍の民族・國家は古くから中國の醫學を受容し續け、それを取捨選擇・發展させて自國化してきた。この過程と樣相の概要は、各國に現存する古醫籍の調査と内容分析からある程度の理解が可能だろう。それらの中には臨牀上・文化上・歷史上・書誌學上など、多方面において貴重性が認められる書も少なくない。だが多くは利用も研究もされることなく、各國の書庫奧深く眠り續けているのが現狀といっていい。それゆえ、かつて東アジアにおいて流通し、相互に影響を及ぼしていたこれら古醫籍個々の書誌調査による流通經緯の研究は、東アジアの醫療文化史を檢討する上でも大きな意味がある。

  そこで各國・各地域の所藏機關にて醫藥古典籍を手に取り、實地に調査する研究を二〇〇〇年八月より本格的に開始した。ベトナムについては二〇〇一年九月三日~十七日および二〇〇四年九月十日~十五日の期間ハノイに滞在し、主要な二藏書機關のうち國家圖書館の主な古醫籍について調査をほぼ完了させることができた。殘るベトナム社會科學研究センター所屬漢喃研究院の藏書も近年中に調査を完了させる予定だが、それ以前に國家圖書館の調査記錄について諸賢の批判を仰ぐことも必要と考え、報告することにした。

 さて當國家圖書館(Thuvien Quocgia Vietnam)はベトナム文化情報省の所屬で、ハノイの31 Trang Thiにある。代表電話は4-8248051、ファックスは4-8253357、メールはinfo@nlv.gov.vn。ウェブページはhttp://www.nlv.gov.vn/で、ベトナム語と英語で閲覽できる。各月第二水曜日と祝日に休館する以外、月曜から日曜まで每日、朝八時から夜八時(善本室は夜七時)まで開館しており、とても利用しやすい。

 藏書は正面建物一階のパソコンで檢索できるが、そのデータベースおよび既刊の目錄に古典籍は收められていないため、カードで調べる。建物一階左側中間あたりのカードケースにHan Nom(漢字と字喃〔日本の國字と同類のベトナム固有漢字〕の文獻)、と書いてあるのが古典籍部分。著者別・書名別が各々二ケースあり、藏書數は五二〇五册とのこと。カードには漢字で書名・著者名も書いてあるので、閲覽希望書の書名と架藏番號を調べる。またこの付近に出ているテーブルで、一〇枚で五〇〇ドン(日本の四圓ほど)の閲覽申請用紙を買う必要がある。

 正面階段を上がった二階に善本閲覽室がある。閲覽にはベトナム政府機關の紹介狀が必要とのことだったが、あまり關係ない樣子。どちらかというと、茨城大學圖書館長から當圖書館長宛に書いてもらった英文紹介狀が有效に思えた。また最初はパスポートの提示が必要となる。閲覽は一回に三書までで、一書につき一枚の閲覽申請用紙に名前・パスポート番號・所屬・閲覽書名・架藏番號・サインの順に記入する。これを受付の箱に入れると、十分もたたずに原本がでてくる。受付擔當者は親切で、佛語か英語でなんとか通じる。

  調査はカードで醫家類に分類される書について實施したが、それ以外でも明らかな醫藥書、あるいは醫藥關聯記述の多い書に氣づいた場合は調査した。なお古典籍は基本的に漢字と字喃で書かれており、その多くは漢喃研究院に收藏されているが、ほとんどは寫本である。一方、當國家圖書館の藏書には刊本が多い。したがって閲覽調査では刊本および中國關聯書を優先させ、寫本のベトナム固有書は漢喃研究院での調査にゆずった。

  以下に當訪書記錄の凡例を記すが、本調査にあたり多くの古典籍原本を閲覽させていただいたベトナム國家圖書館および館員諸氏のご厚意に深甚の謝意を申し上げる。


ベトナム國家圖書館の古醫籍書誌 補遺(一)(二)

眞柳 誠

The Bibliography of the Old Medical Books in the National Library of Vietnam -- Addendum (1)(2)

MAYANAGI Makoto

 かつて「ベトナム國家圖書館の古醫籍書誌」(本學人文學部紀要『人文學科論集』四五號、二〇〇六年三月)を報告した。これは二〇〇一年と二〇〇四年の調査によったが、時閒不足で約半數の書は調査を割愛した。それら割愛書についても二〇〇九年八月三日~同年九月二四日と二〇一〇年一二月二五日の再調査で書誌データをほぼ網羅できたので、「補遺」として追加報告する。

 前報の二〇〇四年段階では圖書館入り口横のカウンターで買う閲覽申請用紙が一〇枚五〇〇ドンと記したが、二〇一〇年には一〇枚一〇〇〇ドン(約四圓)となっていた。また古典籍藏書のカードケースが一階左側にあると記したが、二〇〇九年には二階古籍閲覽室のカウンター左にある古籍配架室內の窗側に移動されていた。二〇一〇年には古籍閲覽室がパソコン利用室になり、古籍は向かい側のDynamic KOREA室で申請・閲覽するよう變化していた。また未完成ではあるが、以下のURLで古典籍のカラー畫像を徐々に公開し始めている。
http://nom.nlv.gov.vn/nlvnpf/vindex.php

 今回は配架室で架藏狀態を見せていただくことができた。古籍は各册每にR.1から始まる通しの架藏番號が與えられているが、それらは番號順に一〇册前後が一函に收められ(寫眞)、各函にも通し番號が與えられている。そして一函から二二八函(R.2059~R.2070)までは函番號を墨書し、二二九函(R.2191~R.2198)から末尾の三〇九函(~R.3664)までの函番號は墨書を消した上に青マジックで書いてあった。つまりR.2071~R.2190までの一二〇册が函ごとどこかに移動されたため、それ以下の函に新たに青マジックで二二九~三〇九の番號を記入し直している。これで申請しても出てこない書がある理由の一部を理解できた。また現所藏の古籍數は番號からすると、末尾のR.3664より一二〇少ない三五四四册となるだろう。なお再調査した書の一部には、新たに裝訂され、新製の紙ケースに收められる場合があったので、藏書は徐々に補修されているらしい。以前調査した書が今回見あたらない場合もあったのは、こうした理由かもしれない。

 當圖書館の古籍についてはNGO DUC THO主編『越南國家圖書館所收藏漢喃文古籍書目(Thu Muc Sach Han Nom O Thu Vien Quoc Gia)』(試作本、二〇〇五)があり、これにて一部のデータを補足・修正した。しかし當書目の著錄書は七九五點のみで、中には書名のみの著錄や、重複して載る書もある。またLÂM Giang主編『TÌM HIỂU THƯ TỊCH Y DƯỢC CỔ TRUYỀN VIỆT NAM(ベトナム傳統醫藥書籍考)』(Nhà xuất bản Khoa học xã hội, Hanoi, 2009)の附錄にも當圖書館の古醫籍が載り、書名・架藏番號・頁數・書高幅を記すので、これにて一部データを補足した。

 今回の報告も古醫籍の分類と書誌データの內容・書式は前報に從った。詳細は前報の凡例を參照されたい。http://mayanagi.hum.ibaraki.ac.jp/paper01/nlv.html
http://ir.lib.ibaraki.ac.jp/bitstream/10109/490/1/200700395.pdf

 本調査にあたり多くの古典籍原本を閲覽させていただいたベトナム國家圖書館、および館員諸氏のご厚意に深甚の謝意を申し上げる。


凡例

一 當訪書誌はベトナム社會主義共和國ハノイ市・ベトナム國家圖書館所藏の古典籍から、ベトナム人と中國人が著した醫藥に關聯する書を調査した記錄である。

二 漢字は特殊な文字を除き、JISコード漢字の範圍内で正字に統一した。このため、一部の漢字は必ずしも正確な正字ではない。

三 各書のカードは内容別に項目分類されていないので、當記錄では眞柳が假に【鍼灸】のように分類した。同一項目内ではおおむね架藏番號順に著錄したが、同一や同類の書名は前後に一括した。また中國人著述の漢籍は各項目の後方に配した。本ウェブ版では2006年の報告と2011年の補遺報告とを合併して分類配列し、畫像を付加した。また公開中のウェブ畫像により補足した書誌データもある。

四 各書の冒頭に架藏番號、ついで( )内にカード著錄の著者名・書名等を記した。なお古典籍の架藏番號は全てに「R.」が付く。また[一九〇二]のように記されるのは、當圖書館が判斷した序跋や刊行・筆寫の年代である。原本調査を割愛した書は四だけを記し、以下五の内容は當記錄にない。

五 四の後、改行して始まる文は眞柳の調査部分で、カード記載に補足すべき書誌事項を主に以下の内容と順次で記錄した。

 刊寫の別、册數・葉數、裝訂法、表紙の質、書の寸法、帙の有無等、外題・書根の記載等の外觀。

 次に書物の各葉を順に開いて分かる情報として、封面、序文の年・作者・タイトル・葉數、目錄等の葉數、刊記等、本文卷頭に記載の内題・著編注者等の題署、本文の卷數、跋文の年・作者・タイトル・葉數、刊記・木記・奧附等。

 次に全體の書誌情報として、料紙の種類・質、補修の樣子、界の有無、匡郭・版心魚尾の種類、版心内の文字、卷一冒頭半葉匡郭の内側寸法、行數と毎行の字詰め、小字の字詰め等。なおベトナムの傳統手漉き紙のDóゾー(楮のベトナム音)は素材が楮コウゾではなく、ジンチョウゲ科のRhamnoneuron balansae Gilg (Duake)、漢名・鼠皮樹の靱皮から製造され、柔軟で微かに赤茶色を帯びる。日本の三椏ミツマタもジンチョウゲ科だが、ゾー紙に三椏紙の強靱性はない。

 次に全書に捺された藏書印記を記し、さらに當該書全體の蟲損狀態等の現狀を記した。

 最後に改行し、特徴的な内容、適切な書誌、眞柳の私見等を記した。


【鍼灸】

R.374(鍼灸法總要[一八二七])
  寫本一册、後補ベトナム包背四鍼眼裝。後補肌色中手表紙の中に、澁引き焦げ茶中手原表紙を存し、書高二五・四×幅一四・四㎝。帙なし。外題なし。雜紙四葉あって「嗣德三十三年(一八八〇)歳時庚辰二月云々」、第五葉に「述前賢之妙法/針灸法總要/訓後學之通知」、ウラに「明命捌年(一八二七)柒月貳拾陸日奉寫/右弟子(以下破り拔く)撰」を記す。序・目錄なし。内題・編著者名なく、本文は漢文で五四葉、おおむね經穴論・經脈論・治療の三篇からなる。跋なし。書末に「甲辰年三月云々」「嗣德參拾壹年(一八七八)歳時月月之山」等の識語。料紙は薄葉ゾー紙で、全體に黄變する。無界、無邊、無魚尾。每半葉、一〇行・行約二五字、小字雙行。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引きあり。蟲損なく、やや破損し、版心切れ。
 當本は一八二七年成立の越籍で、おそらく一八八〇年の筆寫。


【診法】

R.5602(舊R.1570、醫學解音入門)
 ウェブ畫像によるが、書名を醫學説疑に誤記する。存卷三、一册六四葉。 仲景張先生傷寒纂要・内外傷辨ほか各書より各醫門の診断を摘録する。

R.620(究息脈)
 寫本一册三二葉、後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・七×幅一六・二㎝。帙なし。外題・背記なし。無記年・無記名の「究息脈」と題する序に、「脈者…察其流…叔和・東垣・楊其浚…尤善于太素者僧智緣、精于太素者張子發…不足以語此也」を記す。以下本文は內題なく、診脈・脈名・脈辨凡八條・保元玄妙賦・憑脈用藥・得妻脈・眞臟脈・七怪詩・十二月司天在泉歌、および二七脈の六八體歌、太素脈論・太素通玄賦(彭用光著新訂)・吉凶脈詩・七表脈吉凶の各篇あり。歌と賦を含め漢文の書。跋・識語なし。料紙は中葉ゾー紙で、全體に黃變する。無界、無邊、無魚尾。下部に葉次を記入する。每半葉八行・行二二字。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損なく、わずかに破損。
 脈論・脈訣の書。筆寫は一九世紀か。

R.645(脈部位解)
 寫本一册四六葉、ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高一九・九×幅一四・三㎝。帙なし。外題・背記なし。書頭を缺き、序・目錄なし。本文首に「又脈部位解」と題し、以下は漢文で脈診の總論、次に六部脈主病詩・脈訣賦あり。「又新刊脈訣」では目次・二七脈以下に漢喃文の序あって、脈訣諸詩を國語で述べると記し、末尾に「喃哪共沛達成篇」と題す。第一九葉から漢文で脈部位・四脈狀詩・有力無力辨・主脈十六部(詩)の各篇、第二六葉より方位部位圖あり。第二九葉より太素脈論・太素玄通賦・吉凶脈詩・七表脈吉凶詩・八裏吉凶脈詩・貴格脈・賤格肝(ママ、脈)・人身賦・七死圖歌訣・病機捷法(以下缺)の各篇あり、漢文と漢喃文の混合。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、やや黃變する。無界、無邊、無魚尾。下部に葉次を鉛筆記入。每半葉九行・行約一七字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損・破損なし。
 脈論・脈訣の書。四時を四辰に記す。これは阮朝・翼宗の嗣德年閒(一八四八~八三)の「嗣」が「時」と音通するための避諱。古びからも一九世紀の筆寫。

R.647(脈法祕傳)
 寫本一册六〇葉、ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二七・五×幅一五・〇㎝。帙なし。外題・背記なし。序・目錄なし。書頭に「脈法祕傳」と題し、以下本文は診脈有七法・臟腑定位・六部應六腑…三部主病…七表八裏九道の脈訣…大衍叔和脈歌・傷寒脈法・雜病脈法…死脈無總疑訣・論四辰五行相剋脈・四時平脈…吉凶脈詩・七表脈吉凶・八裏脈吉凶…貴格脈・賤格脈・憑脈用藥・國語脈訣などの諸篇からなる。漢文と漢喃文の書。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、一部黃變する。無界、無邊、無魚尾。下部に葉次を鉛筆記入。每半葉七行・行約二六字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れ等あり。蟲損なく、やや破損と版心切れ。
 脈論・脈訣の書。四辰とも四時とも記すので一九世紀~二〇世紀の筆寫。

R.673(洪錦居士著、脈訣輯要)
 當番號で見つからず、ベトナム人の數字筆寫で673と紛らわしい693・675・613・615でも見つからなかった。ただし本書の右畫像がウェブ公開されているので、所藏はされている。

R.1698(二十七脈體狀歌)
 當番號で見つからず、配架室で確認するとR.1698を收める一八九函自體はある。

R.1884(脈頭歌括)
 寫本一册二三葉。表紙を缺く後補ベトナム四鍼眼裝で、綠色厚紙で表紙樣に包む。書高二七・六×幅一五・九㎝。帙なし。外題なし。序・目錄なし。卷首に內題なく、本文は六八體の脈頭歌括が第一四葉まであり、漢文・漢喃文が混在。第一四葉ウラから漢文で診法常以平旦・脈度・部位など脈論あり、末尾に「通一子按、上下來去至止、此六字者…其眞診家之綱領乎」と記す。文中には黃帝・五十營篇・滑伯仁の引用および四辰の表現あり。跋・識語なし。料紙は中葉ゾー紙で、全體に黃變する。無界、無邊、無魚尾。上部に葉次を鉛筆書き。每半葉、八行・行約二四字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引きあり。蟲損・破損なし。
 脈診の歌訣と論の書。一九世紀の筆寫か。

R.3002(脈頭南音歌括)
 ウェブ畫像による。寫本一册八二葉、漢喃文。羅溪先生や澤園門傳輯要醫書と関連あり。

R.3001〔脈頭南音歌括〕
  ウェブ畫像による。寫本一册七九葉。脈診歌訣の書。

R.1897(愼齋著、愼齋阮先生醫寶家書[一八六〇])
 寫本一册、後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二六・九×幅十五・四㎝。帙なし。外題なし。序・目錄なし。書頭に「脈法精微意會心思爲醫最大關鍵」と記し、以下本文は漢文で、字喃は見えない。脈論・臓腑論に續き、傷寒・雜病・中風等の診斷を問答で論じる。跋なく、書末に「庚申嗣德拾參年(一八六〇)梅月吉日上浣/愼齋阮先生醫寶家書」の識語。料紙は中葉ゾー紙で、全體に黄變する。無界、無邊、無魚尾。每半葉、八行・行約二四字、小字雙行。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損ないが、疲れ本。
 越籍で、一九世紀の筆寫だろう。

R.58(診家正眼)
 寫本一册、後補ベトナム包背裝。灰綠色厚手表紙、書高二三・〇×幅一三・八㎝。帙なし。外題なし。頭五葉は處方等の書き入れ紙。康煕丁未年の尤侗「合鐫三書序」四葉、無記年の尤乘「増補診家正眼序」二葉、無記年の董序三葉、凡例三葉。目錄三葉。卷首に「診家正眼卷上/雲間李中 梓士 材父著述/門人尤 乘生洲父増補」と題し、以下本文二卷一册。書末に難經脈義を附錄する。漢文書。跋なし、書末に雜記七葉を付す。料紙は薄葉ゾー紙で、全體に黄變する。無界、無邊、無魚尾。每半葉、七~八行・行一五~一七字、小字雙行。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損なし。
 當本は漢籍で、康煕丁未年『合鐫三書』本の明・李中梓『〔増補〕診家正眼』二卷、および『景岳全書』卷六「難經脉義」のベトナム寫本。一九世紀の筆寫だろう。


【醫論】

R.312(藥文)
 寫本一册一六葉、後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二六・四×幅一四・六㎝。帙なし。外題・背書なし。序・目錄なし。卷首に「藥文」と題し、以下本文は漢文で、一部にベトナム式略字あり。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、かなり黃變する。無界、無邊、無魚尾、版心の記載なし。每半葉、七行・行約二二字。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、誤字訂正の書き入れあり。わずかに蟲損・破損あり。
 醫論書で、發病機序・體質から補陰・補陽を論じる。書中に張景岳が六味回陽湯を製したが、ただ海上懶翁が保陰湯を製したと記す。なかなかの漢文。達筆だが、求を朮に記すなど明瞭な誤字があるので、自筆本ではない。一九世紀の筆寫だろう。

R.1963(醫學説疑[一八八五])
 寫本一册、ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二六・五×幅一五・八㎝。帙なし。外題なし。扉に「同慶元年(一八八五)孟秋月之七日起編/醫學説疑/在養蒙堂正本」を墨書、附諸法備考五葉、嗣德甲寅年(一八五四)の英川居士裴叔貞恬齋「醫學説疑序」一葉、無記年の裴惟忠叔貞「小引」二葉、目錄なし。卷首に「醫學説疑卷之首」の内題、以下本文は存卷一・三~五・七。跋・識語なし。料紙は中葉ゾー紙で、全體に黄變する。無界、無邊、無魚尾。每半葉、八行・行約二五字、小字雙行。不詳舊印および四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。全書に朱點・朱引きあるが、書き入れ等なし。僅かに蟲損と破損あり。
 本書は醫學の基礎理論を問答式の漢文で論説する醫論書で、著者はベトナムの裴叔貞か。圖も多い精寫本で、内容は高度。おそらく一八八五年の筆寫。

R.23(陳直著、石室秘錄)
 寫本一册七八葉、ベトナム四鍼眼原裝。澁引き焦げ茶厚手表紙、書高二七・三×幅一五・八㎝。帙なし。背・小口すべてに澁を塗る。外題なく、書根・頭に「石室」を墨書。扉に紫筆で「啓定六年(一九二一)辛酉壯月穀月書於學舍/阮藏春敬書」の識語(この筆で目次に書き入れするので、元の筆寫より後代)。序なく、目錄二葉。卷首に「石室秘錄摘要」の内題、以下に「原板陳達公敬習 潘志齋手稿」の書き入れ。本文は漢文で、正治法から奇症まで。跋なし。料紙は中葉ゾー紙で、色變なし。無界、無邊、無魚尾、版心に「石室 篇名 葉次」を寫す。每半葉、一二行・行約三五字、小字雙行。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損・破損なし。
 『石室秘錄』は淸・陳士鐸の著。當本はその版本からベトナムの潘志齋が摘要したもので、恐らく一九世紀末の筆寫。

R.431(醫無閭、趙氏醫貫)
 寫本一册、ベトナム包背原裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二七・三×幅一五・八㎝。帙なし。外題なく、書根・天に「醫貫 上」を縱書き墨書。第一扉に四周雙邊で「陳氏家寶」の墨印記。第二扉に匡郭なしで「太醫院増補圖註/趙氏醫貫/附 殷九峯經驗/宦邸千金異 方/三多齋梓行」の封面。目錄二葉の頭に「醫貫目錄/醫無閭子著/呂山人醫評」と題し、全六卷本。圖二葉、無記年の薛三省「醫無閭子醫貫序」二葉、無記年の無名氏「敍」一葉。卷首に「醫貫卷之壹」の内題、以下本文は漢文で卷二まで存。識語なし。料紙は中葉ゾー紙で、色變なし。無界、無邊、無魚尾、版心に「卷幾 篇名 葉次(通册)」を寫す。每半葉、八行・行二四字、小字雙行。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。全書に朱點・朱引き、文字訂正、書き入れあり。表紙は激しく蟲損するが、内側の三葉で止まる。紙魚はゾー紙が苦手か。
 本書は明・趙獻可(無閭子)の著。當本には『景岳全書』等を引く呂留良(一六二九~八三)の評がある。呂留良評本は淸初刊本が中國科学院圖書館にあるが、「三多齋梓行」の封面ある中國版がなければ、當本はベトナム版から轉寫の可能性もある。當本自體は一九世紀の筆寫だろう。


【醫案】

R.643・644(黃氏寬甫著、樂生心得)
 寫本二册、九六葉と八九葉、後補ベトナム四鍼眼裝。ピンク中手表紙、書高二六・八×幅一五・二㎝。帙なく、外題ほかなし。目錄なし。第一册書頭に「樂生心得左(右)卷 東舎華軒黃氏寬甫著」と題し、「纂集治驗方法」と題する無記年・無記名の序一葉あって、古くからの醫案を精選して本書左右二卷を編纂と記す。本文は漢文で、馮氏治療方論第一が六三葉、第六四葉から易氏醫案第二、第八五葉から芷園臆草存按第三が書末第九六葉まで。第二册は喩氏寓意草第四が書末第八九葉まであり、以下を缺く。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、全體に黃變する。無界、無邊、無魚尾。版心上部に各册の葉次を記す。每半葉、九行・行約二八字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損なく、版心切れほか破損は補修濟み。第二册は絲切れ。
 中國の醫案を纂集した越籍で、書名は『纂集治驗方法』が適切か。一九世紀の筆寫。


【傷寒】

R.291(傷寒集解國音歌)
 寫本一册七九葉、後補ベトナム包背裝。灰色厚手表紙、書高二五・三×幅一五・五㎝。帙なし。外題は表紙にベトナム文字を赤ボールペンで書く。書根・頭に「醫學解音」を墨書。序・目錄なし。卷首に「傷寒集解國音歌」の内題、以下本文は漢喃文。上段に藥方、下段に太陽病から解説を記す。易老冲和湯・葛根解肌湯など仲景方以外も多い。跋なし。料紙は藁繊維の混じる中葉ゾー紙で、全體に黄變する。無界、無邊、無魚尾、版心に葉次を寫す。每半葉、八行、上段・行六字、下段・行一四字、小字雙行。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。全書に朱點・朱引、墨筆の文字訂正あり。蟲損・破損なし。
 傷寒の治療書で、附子を父子、桂枝を桂支と書く俗字が多い。一九世紀の筆寫だろう。

R.3578(舊R.1553、傷寒)
  ウェブ畫像による。寫本一册二五葉。傷寒の診断・治法の書。


【內科】

R.2076・R.2077(阮嘉璠著、療疫方法卷一・卷二)
 二度閲覽申請したが、發見できず紛失だろうとのこと。番號メモのミスで、あるいはR.2096・R.2097か。R.2071~2190までの書がある段階で紛失しているので、いずれの番號にせよ當圖書館には現存しないらしい。


【婦人・小兒】

R.534(樂生心得經治國語歌)
 寫本一册五五葉、後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二八・九×幅一四・六㎝。帙・外題ほかなし。書頭に目錄なく、內題に「樂生心得經治國語歌」と題し、序的漢喃文あって「南年甲子節秋…經旨…喃字…幷馮先生…家傳…」の文字が讀める。本文も漢喃文で治病の總論を第一七葉まで記し、欄上に陰虛發熱・治小兒疳蟲積熱・六味補水・八味補火などのキーワードを墨書、第一七葉ウラより處方の藥味・調整法を列記。第一九葉ウラに「風寒暑濕總論」と題し、簡單な論と治方あり。以下に題はないが、同樣に虛證・治痰ほかの篇あって論治を記す。第四〇葉ウラに婦人門の題あって長論を記す。以下は書末まで治方を列記し、一部は婦人科以外。書尾に治驗半葉あり。書末に「樂生心得」を墨書、跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、かなり黃變する。無界、無邊、無魚尾、欄上に葉次を記入。每半葉、八行・行約三四字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損なく、書頭にやや破損あり。
 簡便な越籍の小兒科書『樂生心得經治國語歌』で婦人科を附す。ベトナムでは小兒を樂生という。一九世紀の筆寫か。

R.1690(經治婦人小兒諸症總錄)
 寫本一册八一葉、後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二七・〇×幅一四・〇㎝、帙なし。外題・背記なし。扉に「庚午(一八七〇)春略輯/經治婦人小兒諸症總略」を墨書。書頭を缺き、序・目錄なし。版心に「外科新集 婦人 葉次」を記入し、第一六葉より存し、婦人篇は第二二葉まで。上段に治方を大書、主治・藥味・服用法を小字で主に漢文、下段に病症を大書の漢喃文で記す。次に幼科あって第一九葉まで同樣に記す。次に「小兒科」と題し、版心に「兒科新略 篇名 葉次」を記し、第二七葉まで。篇名は風熱發熱・咳嗽・傷寒~各症丹・衆鬼藥があり、各篇では漢文で病症の治方を列記する。次に「別宗全卷」と題し、版心に「別宗婦科(~小兒門・大小雜病) 葉次」を記し、書末第二八葉まで。各篇では病症每に漢文で治方を列記、また歌訣あり。文中に避諱で「四辰」を記す。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、全體に黃變する。無界、無邊、無魚尾。『外科新集』は每半葉六行、他書は每半葉、八行・行約二八字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引きあり、書き入れ等なし。蟲損・破損なし。
 婦人・小兒の治方を越籍の『外科新集』『兒科新略』『別宗』から拔抄した書。一八七〇年の筆寫で能筆。

R.383(保胎神效全書解音[一八五五])
  刊本(附寫本)一册一三葉、後補ベトナム包背四鍼眼裝。肌色の後補表紙の中に澁引き焦げ茶薄手表紙あって、書高二四・九×幅一四・四㎝。帙なし。外題なし。扉に四周單邊で「嗣德捌年(一八五五)參月新刊/保胎神效全書解音/海上原本 〔海上/原本〕の印記風」の封面。序・目錄なし。卷首に「保胎種子國音纂要」の内題、以下本文は漢喃文。跋なし。書末に成泰甲辰年(一九〇四)の識語あって、夢で眼鏡三件を得、その一つを懸けると萬里が見える云々。多くは二段に分かれ、上段書に小字で處方を刻す。料紙は薄葉ゾー紙で、やや黄變する。有無界、四周單邊、版心白口・無魚尾、象鼻に「保胎」、中央に葉次を刻し、一部下象鼻は黒口。每半葉匡郭、全縱一九・五×横一一・七㎝、八行・下段行一四字、上段の小字一六行・行六字。上記識語と同筆の寫本が後附され、やはり成泰甲辰年一一月の筆寫、料紙は中葉ゾー紙。書頭に小兒門とのみ記す小兒科書。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。全書に朱點・朱引きあって、書き入れ等なし。蟲損なく、やや破損。
 本書名は「保胎種子國音纂要」とするのが適切で、一八五五年の刊行。漢喃研究院にも同版がある。封面に「海上原本」と名うつので、黎有晫『〔海上懶翁〕醫宗心領』の胎産部分を摘錄した書か。

R.1780(保胎神效全書解音[一八五四])
 刊本一册一三葉、後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶厚手表紙の下に澁引き焦げ茶中手表紙を存す。書高二四・九×幅一三・四㎝。帙・外題ほかなし。扉に四周單邊で「嗣德捌年(一八五五)參月新刊/保胎神效全書解音/海上原本 〔海上/原本〕の刻印風印刷」の內封。目錄なし。卷首に「保胎種子國音纂要」の內題あり、以下本文は漢喃文。上段に小字で治方、下段に論を記し、一部に六八體喃歌あり。跋なし。料紙は薄葉ゾー紙で、やや黃變する。無界、四周單邊、版心白口・無魚尾、象鼻に「保胎」、中央に葉次を刻し、一部下象鼻は大黑口。每半葉匡郭、全縱一九・五×横一一・七㎝、八行・下段行一四字、上段の小字一六行・行六字。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損・破損なし。
 胎産の書。前報R.383と同版で一八五五年の刊本。當本の刊年をカードが一八五四と記すのは不適切。書名も「保胎種子國音纂要」が適切。

R.1762(治小兒諸症)
 寫本一册五五葉、ベトナム四鍼眼原裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二六・〇×幅一六・〇㎝。帙なく、綠厚紙で包む。外題ほかなし。序・目錄なく、書頭に「□方治小兒諸症」と題し、病症每の治方を列記し、第五葉に手掌と顔面の圖。第六葉から別書で小兒賦、第八葉ウラから第二四葉まで治方。第二五葉から別書で「室女賦」と題し、第二九葉より婦人科・産科の方論が第三八葉まで。第三九葉に家傳方赤痢。第四〇葉から別書で「人身集成賦」と題し、第五二葉まで醫學全般の總論あり、末尾に「啓定捌年歳次癸亥(一九二三)仲秋月阮克」の奧書。全體を漢文と漢喃文で記す。料紙は薄葉ゾー紙で、わずかに黃變。無界、無邊、無魚尾。版心上部に舊册葉次を墨書、欄上に新合册葉次を鉛筆記入。每半葉、八行・行約二五字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損なく、破損・版心切れ甚。
 治小兒諸症・小兒賦・室女賦・人身集成賦の四篇からなり、小兒・婦人の方論と醫學總論の書。一九二三年の阮克筆寫。

R.1908(撮要治小兒)
 寫本一册、後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶手中表紙、書高二四・八×幅一四・七㎝。帙なし。外題ほかなし。序・目錄なし。書頭に內題なく、辟邪丹など小兒の治方を列擧、主治・藥味を漢文で記し、以下に漢喃文で鬼病の治法。また「經治婦人諸症」と題す治方三葉、「一門治小兒各症」と題し、漢喃文で呪符・呪文・藥方を記す。次に「治小兒諸症」の處方を漢文で列記し、四時の字句あり。續く別書は「杏林摘要、由四民便用、不求人書」と題し、四季の「用藥活法」ほか治方の主治・藥味を列記。さらに別書あって、治目痛神效ほかの治法、末尾に小兒科の處方あり。さらに風邪關聯の治方が漢文で雜多に列記される。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、全體に黃變する。無界、無邊、無魚尾。每半葉、約六行・行約二三字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損・破損なし。
 小兒・婦人を中心とした雜多な醫方・治法の拔抄書で、呪法もある。亂丁あり。一九世紀の筆寫か。

R.1757(萬氏婦人科)
 刊本一册四三葉、後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・四×幅一五・三㎝。帙なし。外題なし。扉に四周單邊で「西昌裘琅玉聲氏/萬氏婦人科/阮堂藏板」の封面、序なく、目錄二葉(云、二卷本)。卷首に「■氏婦人科卷之一 西昌裘 琅玉聲氏重刊」と題し、以下本文二卷の漢文書。跋なし。婦人科・産科(小兒科)の書。料紙は薄葉ゾー紙で、全體に黄變する。無界、四周單邊、版心白口・内向き雙黑魚尾、象鼻に「婦人」、魚尾間に葉次を通しで刻す。每半葉匡郭、縱二〇・一×横一三・四㎝、一三行・行三〇字、小字雙行。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。全書に朱點・朱引きあり。いささか蟲損し(蟲孔大)、一部を補修。
 萬氏は明の萬全(密齋)のこと。『萬氏女科』三卷などに基づきベトナムの阮堂が出版したもので、恐らく一九~二〇世紀の所刊。

R.2054(唐千頃著、大生要旨[一九三〇?一八七〇?])
 刊本一册九五葉、後補ベトナム四鍼眼裝。原表紙脱落し、灰綠中手表紙で包み、書高二二・七×幅一四・一㎝。帙なし。外題なし。扉に左右雙邊で「凡有善士願印送者 不取板貲/大生要旨/還劍湖玉山寺藏板」の封面。乾隆三七年の喬年光烈「大生要旨序」四葉、その末尾に「庚午年孟冬吉旦敬刊」の刊記、目錄五葉(云、五卷本)。卷首に「大生要旨卷一/上海唐千頃桐園氏纂/男 兪鈞校字」と題し、以下本文は漢文で五卷。書末に「道光 年秋七月」の刊記。種子に始まり、胎前・臨盆・産後・保嬰で終わる産科書。料紙は薄葉ゾー紙で、やや黄變する。無界、左右雙邊、版心白口・單黑魚尾、象鼻に「大生要旨」、魚尾下に「卷幾 篇名 葉次」を刻す。每半葉匡郭、縱一六・三×横一二・一㎝、九行・行二〇字、小字雙行。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。全書に書き入れ等なし。やや蟲損・破損。
 淸末・道光年間に上海の唐千頃が乾隆の原本から編纂した書で、ベトナムの玉山寺が恐らく一八七〇年に刊行した書。


【小兒】

R.1701(小兒演歌)
 寫本一册、ベトナム四鍼眼原裝。澁引き焦げ茶厚手表紙、書高二七・五×幅一五・二㎝。帙なく、綠厚紙で表紙樣に包む。外題ほかなし。目錄なし。卷首に「小兒演歌」と題し、漢喃文で無記年・無記名の序二葉あり、末尾に「仍方妙訣古今祕傳」と記す。本文は小兒各症の治方を漢文で列記し、論なし。途中より六安煎ほかの方論あり、主治・藥味・服用法を漢文で記す。また「小兒演歌」と題し、書頭と同文の序あり。次に「治小兒神效」と題する漢喃文一葉あり、以下に呪符・呪文・辟鬼法があり、末尾に「…乾鬼王、醫家四聖、寧之底傳/林先生傳」と記す。また治方を列記し、「凡醫者切宜詳察、看症增用藥、不可有誤、愼之」を記す。書末に「咽喉雜症總方經驗 陳先生傳」一葉、「咽喉十八症總方 林先生傳」四葉、「痰火初起 詔安何先生傳」二葉あり。跋・識語なし。料紙は中葉ゾー紙で、やや黃變する。無界、無邊、無魚尾、版心記載なし。每半葉、八行・行約二七字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。かなり蟲損・破損する。
 一部に呪法をまじえる小兒治法の書。一九世紀の筆寫か。

R.1954(保赤便吟[一九〇一])
 刊本一册一一葉、後補ベトナム四鍼眼裝、表紙缺、書高二六・五×幅一三・五㎝。綠厚紙で表紙樣に包む。帙・外題ほかなし。全書に亂丁あるが、首尾共に存する。扉に四周單邊で「龍飛辛丑(成泰一三、一九〇一)冬/保赤便吟/試生隆敬刊」の內封あり。ウラから六八體漢喃文歌が第一〇葉オモテまであり。次に第一一葉オモテまで漢文跋あり、婦女に熟讀させる子孫敎導の羅岸辨理杜大人の家訓、という。第一一葉ウラは七言の漢詩。識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、輕く黃變する。無界、四周單邊、版心白口・雙內向黑魚尾、象鼻に「保赤便吟」、魚尾閒に葉次を刻す。每半葉匡郭、縱二一・三×横一〇・五㎝、六行・行一四字、小字なし。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き・書き入れ等なし。蟲損なく、僅かに破損。
 非醫書で、簡便な幼兒敎育の書。恐らく一九〇一年の刊本。

R.9(周雨郇著、活幼心法大全)
 刊本一册九六葉、ベトナム四鍼眼原裝に後補包背裝。澁引き焦げ茶中手原表紙に香色薄手表紙をかけ、書高二六・三×幅一五・八㎝。帙なし。外題なし。扉に左右雙邊で「淸江聶久可先生著/東呉周雨郇編/活幼心法大全/痘疹驚瘋雜症/各有方論詳載/廣城五雲樓梓行」の封面。康煕一五年の周雨郇「活幼心法大全序」五葉、目錄三葉。卷首に「活幼心法大全卷之一/明 淸江聶尚恒著 淸 江寧周 京輯」と題し、以下本文九卷、漢文の小兒科書。跋なし。料紙は薄葉ゾー紙で、全體に黄變する。有界と無界、四周單邊、版心白口・無(單・雙・三)黑魚尾、魚尾下に通卷葉次、一部下象鼻に「向山堂」を刻す。每半葉匡郭、縱一八・五×横一三・五㎝、九行・行二〇字、小字雙行。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れ多し。蟲損なく、僅かに破損。
 本書は痘疹が中心の小兒科書で、明・聶尚恒の著を淸の周京(雨郇)が再版したもの。當本はそれに基づくベトナム向山堂版で、恐らく一九世紀の所刊。封面「廣城五雲樓梓行」の廣城は他のベトナム版にも見え、ベトナムの地名。あるいはハノイか。

R.1901(家傳活嬰秘書[一八九〇?])
 寫本一册、後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二〇・九×幅一四・二㎝。帙なし。外題なく、書根・天に「家傳活嬰」を墨書。茶色の扉に「庚寅年九月十七日/四民醫館/筆賀」を墨書。序・目錄なく、卷首に「家傳活嬰秘書」の内題、以下本文は漢喃文。跋なし。小兒科書。料紙は中葉ゾー紙で、全體に黄變する。無界、無邊、無魚尾。每半葉、一〇行・行二四字。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損・破損なし。
 古びからして、恐らく成泰二年庚寅(一八九〇)の筆寫だろう。


【痘疹】

R.1997(經驗良方[一八八四])
 一册、寫本。ベトナム包背の原裝から表紙が取れ、灰綠色中手紙で表紙風に包む。書高二〇・〇×幅一三・三㎝。帙なし。外題不詳、書根・天に「痘疹纂要」を墨書。封面の扉圖に「面部分五行八卦臓腑吉凶圖/痘科纂要全集/(小兒顔面圖)/建福元年(一八八四)孟秋」を寫し、そのウラ以降五葉まで歌訣など。序・目錄なし。卷首に「醫海大成痘科纂要」の内題、以下本文は漢文。跋なし。料紙は上質中葉ゾー紙で、かすかに黄變する。印刷した烏糸欄罫紙に寫し、有界、四周單邊、無魚尾、白口、版心に葉次を寫す。每半葉、八行・行一九字。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。また扉に四周單邊で「膏丹丸散/西山/醫林堂/祥峯/經驗良方」の朱印記(これは當本を舊藏していた藥店の印記で、カードはこの一部を書名に誤る)。全書に朱點・朱引あり。蟲損・破損なし。
 本書名は「〔醫海大成〕痘科纂要」が適切。本書が漢籍ならば、明・翟良(玉華)撰の同名書がある。また當本の底本とされた建福元年(一八四四)のベトナム刊本があったと分かる。筆寫は二〇世紀か。

R.2046(痘中雜症)
 一册、寫本八二葉。部位・痘中雜症歌・疹痘脈歌・初熱逆症歌・痘初熱險症ほかある痘疹の診斷・治療書。

R.5398(舊R.3375、家傳疹痘要訣)
  ウェブ畫像による。寫本一册三六葉。痘疹の書。

R.1638(費啓泰著、救偏瑣言、卷七~一〇)
R.2005(同上、卷一~三[一八八一])、R.2006(同卷四~六)、R.2007(同卷七~一〇)
 R.1638は一册、R.2005-2007は三册、刊本、ベトナム包背原裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・五×幅一五・二㎝。帙なし。外題なく、書根・天に「救偏一二三(四五六、七八九十)」縱書き墨書。扉に四周單邊で「呉興費建中先生著/救偏瑣言/雜症嗣出 福文堂原本」の封面、ウラに「龍飛辛巳 福文堂/旹嗣德三十四年(一八八一)秋月上浣新鐫/河内 錦文堂藏□(板)」の刊記。順治己亥年の費啓泰自序「救偏瑣言小敍」七葉、沈荃「費德崶先生傳」三葉、「費德崶先生像」・贊文計一葉、目錄五葉、「瑣言備用良法」一九葉。卷首に「救偏瑣言卷之一/呉興費啓泰建中父著 男 □文起/英孟育/□□□□/仝訂」と題し、以下本文は漢文で、一〇卷。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、一部黄變する。有界、四周單邊、版心白口・無魚尾、版心に「救偏瑣言卷幾篇名 葉次」を刻す。每半葉匡郭、縱一七・八×横一三・四㎝、九行・行二〇字。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。一部に朱點・朱引きあり、僅かに蟲損。
 本書は淸・費啓泰の著で痘疹治療書。當本は一八八一年の河内(ハノイ)錦文堂藏板刊本。文字は僅かに扁平な明朝體だが、横線が完全に水平で、中國版にあまり見ない。

R.59(若淑著、治疹痘各症)
R.328(疹痘科)
R.1210(疹痘國語歌)
R.2147(種牛痘書)
 右四書、閲覽請求するが、紛失とのことで閲覽不可。


【外科】

R.200(瘡瘍經驗全書 卷八)
 寫本一册九七葉、後補ベトナム四鍼眼裝。香色中手表紙(佛語會計紙?の轉用)、書高二六・八×幅一五・二㎝。帙なし。外題・背記なし。書頭に面部發疹部位の吉凶圖説一葉あり。「瘡瘍經驗全書目錄/第八卷」一葉あって、小兒痘瘡圖説・禁忌十歌~四聖丹・痘毒圖までを記す。卷頭に「瘡瘍經驗全書卷之八/宋燕山竇漢卿輯著/天都洪騰宕/桐川陳友恭/仝校」と題し、以下は圖と本文。第五四葉ウラに「瘡瘍經驗全書目錄/第九卷」一葉半あって、瘡瘍總論・灸瘡瘍法~太一膏・麒麟竭膏までを記す。また卷頭に「瘡瘍經驗全書卷之九/宋燕山竇漢卿輯著/天都洪貼巖/桐川陳友恭/仝校」と題し、以下は論と治法。漢文の書。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、全體に黃變する。無界、無邊、無魚尾。下部に通し葉次を鉛筆書き。每半葉、八行・行二四字、小字雙行。藏印記なし。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損なく、やや疲れ破損。
 本書はもと一二卷本で宋・竇漢卿の著、明清版がある。恐らく清版からの筆寫で存卷八・九。やや丁寧な一九世紀の筆寫。

R.320(良醫家傳外科治癰疽門)
 圖書館では見あたらないとのことだったが、某氏が當本を偶然コピーしており、これにて調査。寫本一册、裝釘・表紙・書高幅・帙・外題ほか未詳。書頭に「良醫家傳外科治癰疽門」と題し、冒頭の序的短文に陰陽癰疽の治療要訣を漢文で述べ、末尾に「千金不可傳」と記す。目錄なく、本文は發症部位別の治方から記す。「癰疽門終」とある後に「二十四症」と題し、以下に發症部位の圖説と治方を列記。次に「瘡瘍經驗全書第一卷目錄」あって咽喉説・又説二篇・纏喉風説~口緊圖説・木舌乳蛾圖説を記し、末尾に「本燕山竇漢卿輯著/天都洪貼巌桐川陳友恭/仝校」を記す。以下は目錄通りに圖説と治方を列記するが、目錄にない圖説があり、圖を省略する記載もある。末尾は漏睛瘡圖・鴉陷瘡圖・繭唇之圖で、ともに繪圖は描かれない。漢文の書。跋・識語なし。料紙未詳。無界、無邊、無魚尾。每半葉、八行・行約一八字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れ等なし。蟲損・破損なし。
 「良醫家傳外科治癰疽門」と宋・竇漢卿『瘡瘍經驗全書』卷一の合寫本。一九世紀の筆寫か。

R.1937(薛己著、外科樞要大全)
  寫本一册、原表紙(四鍼眼裝)脱落し、灰綠色中表紙で表紙樣に包む。書高二二・七×幅一三・〇㎝。帙なし。外題等不詳。刊本からの轉寫で、本文以前は模寫。扉に四周雙邊で「太醫古先賢院造原本/外科樞要大全/丁卯新寫 校正無訛」の封面、ウラに「旹/嘉隆六年(一八〇七)歳丁卯冬月穀旦寫/板/新建安樂永姥寫」の刊記(筆寫)あり。序なく、目錄一一葉に東西南北の四卷を記す。卷首に「外科樞要卷之一(二)/古呉薛 己著/後斈(學)周 南校」と題し、以下本文は漢文で、卷二まで存。識語なし。料紙は中葉ゾー紙で、一部黄變する。無界、無邊、無魚尾、目錄のみ版心に葉次を寫す。每半葉、八行・行二一字および七行・行一九字。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。全書に朱點・朱引き、訂正の書き入れあり。蟲損なし。
 本書は明・薛己の著。當本は一八〇七年のベトナム版からの轉寫で、一九世紀の筆寫か。


【眼科】

R.485(異傳眼科)
 寫本一册、後補ベトナム四鍼眼裝。灰靑色中手表紙、書高二八・五×幅一四・〇㎝。帙なし。外題なし。序なく、目錄二葉は一問から六十八問を記す。卷首に「異授眼科」の内題、以下本文は漢文で、眼科の總論・用藥・處方等を記し、最後が「七十二問答症治」で、本文も七十二問まで記される。跋なし。料紙は薄葉ゾー紙で、全體に黄變する。無界、無邊、無魚尾。每半葉、八行・行約二三字。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損なく、疲れ本。
 當書名は「異授眼科」が適切で、淸後期に各種出版された『〔異授〕眼科七十二症』の系統だろう。一九世紀の筆寫か。

【方集・方論】

R.69(懶翁新制諸方)
 寫本一册五四葉、後補ベトナム四鍼包背裝。綠厚紙表紙の下に澁引き焦げ茶中手表紙あり、書高二二・一×幅一二・七㎝。新製黃紙帙に入れる。外題ほかなし。扉に「懶翁新制諸方」、裏に「傳家寶」を墨書。序・目錄なし。書頭に「懶翁新製諸方」と題し、以下本文は漢文で培土固中方・滋水潤燥方より調元救本方・溯源救腎湯まで、藥味・主治・論・加減ほかを記す。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、やや黃變。無界、無邊、無魚尾。欄上・下欄に葉次を記入する。每半葉、七行・行約二一字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損・破損なし。
 方論の書。書名は『懶翁新製諸方』が適切。內容は『〔海上懶翁〕醫宗心領』卷四六「傚倣新方」に該當するが、構成・文章表現の細部が異なるので、その拔抄か別傳本らしい。末尾の溯源救腎湯は『醫宗心領』卷四五「心得神方」所載の處方。一九世紀の筆寫か。

R.74(黎先生正傳痛目祕方)
 寫本一册九葉、後補ベトナム四鍼眼裝。綠厚表紙下に澁引き焦げ茶中手表紙あり、書高二四・八×幅一四・三㎝。帙・外題ほかなし。序・目錄なし。書頭に「黎先生正傳痛目點藥祕方/在北寧省嘉林縣/順{艸+共}社」と題し、以下本文は漢文で點眼藥の藥味・調整法、また內服藥を記す。これ以下は雜多な病症の治方を書末まで漢文で列記。藥味に洋參あり。跋・識語なし。料紙は中葉ゾー紙で、輕く黃變する。無界、無邊、無魚尾、下欄に葉次を記入する。每半葉、八行・行約二〇字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れ等なし。わずかに蟲損・破損。
 雜多な方集。「黎先生正傳痛目點藥祕方」を書名とするのは不適切。二〇世紀の筆寫か。

R.140(百症藥詩家傳)
 寫本一册四四葉、後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高一三・七×幅八・三㎝。帙なし。外題・背書なし。序・目錄なし。書頭に「百症藥詩家傳經驗」と題し、以下、本文は漢文。醫方書で補氣類・補脾胃類・補血類・補眞(陰)類・行氣調氣類・治痰類・消食積類、婦人類に補氣血・補氣類・補眞陽類・補眞陰類、行氣降氣類、消食類、治濕利水類、散陣・寒陣(出典は『景岳全書』だろう)・吐類・下法類・婦人・眼類・{王+京}(璟?瓊?)玉膏(「出醫方集解書以下」と記す)・齒蟲症・嬰兒部、脇癰圖・赤白癜症に分類。跋・識語なし。料紙は中葉ゾー紙で、全體にやや黃變。無界、無邊、無魚尾、版心に葉次を記す。每半葉、七行・行約一八字。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。朱點・朱引き、書き入れ等なし。わずかに蟲損し、破損なし。
 效能別と病門別の方集で袖珍本。『景岳全書』『醫方集解』など漢籍からの抄錄らしいが、未整理。一九世紀~二〇世紀の筆寫。

R.284(楊氏醫方國語歌)
 寫本一册一九九頁、後補ベトナム四鍼眼裝。表紙なく、書高二七・〇×幅一五・〇㎝。帙なく、綠厚紙で表紙樣に包む。外題ほかなし。序・目錄なし。書頭に「楊氏醫方國語歌」と題し、以下本文は漢喃文で記す雜多な方論。四一頁に婦人胎産門、四五頁に中風門を記す。六七頁に「捷效卷」と題し、上段に六八體漢喃文の歌で中風他の論、下段に治方を記す。以下も同形式で一一五頁より一三九頁まで舌診の三六圖説あり。一八八頁上段に國語…萬病回春…あり、ここで歌訣は終了。以下に雜多な治方を一九七頁まで列記する。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、やや黃變する。無界、無邊、無魚尾、欄上に頁を記入。每半葉、八行・行約二二字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。版心切れと蟲損・破損は甚大。
 醫方および歌訣方論の書。漢籍『傷寒金鏡錄』『萬病回春』などの影響あり。「辰(時)」の記載あって、古びからも一九世紀の筆寫だろう。

R.1697(指南備用)
 寫本一册七二葉、後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二七・二×幅一五・二㎝。帙なく、外題なし。書根に「歌括」、天邊に「脈書」を縱書き墨書。扉に「CHI NAM BI YEU(指南備用)」を赤ボールペンで記入。序・目錄なし。書頭に內題なく、「六腑五臟部位(左寸心小腸…右尺三焦腎火)國語演歌脈」が漢喃文で第五葉まであり、二七脈について記す。第六葉に「誌群書撰成國語歌括自號指南備用」と題し、以下は上段に漢喃文で病門別論治、下段に漢文で治方を記す。病門は欄上に記され、中風・傷寒・瘟疫~血淋・痰閉・脚氣が第二四葉まで。第二五葉に外科諸瘡瘍風疹、第二六葉ウラに婦人室女科(經後~産後脚氣)、第三六葉に小兒科、第三九葉ウラに疹痘門、第四三葉ウラに麻痘門あって、上下段に記す。第四五葉に「痘疹」と題し、以下は漢文で發熱論・治論ほかの論と治方が第五四葉まで。第五四葉ウラに「活幼歌」と題し、以下に漢喃文で論治が第六六葉まで。第六六葉ウラに「雜記諸方」と題し、書末第七二葉まで治方を列記する。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、全體に黃變。無界、無邊、無魚尾。欄上に葉次を記入する。每半葉、九行・行約二四字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損・破損なく、かなり版心切れ。
 越籍の病門別方集『〔群書撰成國語歌括〕指南備用』と漢喃文の「六腑五臟部位國語演歌脈」「活幼歌」、および漢文の「痘疹」などからなる。一九世紀の筆寫だろう。

R.1699(中風門)
 寫本一册六四葉、後補ベトナム四鍼眼裝、絲切れ。澁引き茶色薄手表紙、書高二六・六×幅一六・〇㎝。背・天邊・書根とも澁引き。帙なく、全體を綠厚紙で表紙樣に包む。外題・背記なく、天邊・書根に「源流/綱病/諸症」を縱に墨書。「目錄源流綱病諸症」一葉あって、中風門 壹・四辰傷寒 三~健忘 五十七・不寢 五十七・補遺(痰門 五十八~婦人血瘕・赤白帶下・五臟熱口五味・頭痛)を記す。卷首に內題なく、第一葉に「源流綱病諸症總論 中風門」と題し「夫中風者、凡…而療食、其病愈矣」を記す。以下本文は病門每に論・治方・藥味を列記するが、處方の主治文・加減はなし。各門は四時傷寒論(『傷寒論』の直接影響なし)・內傷論(東垣の直接影響なし)・中暑論・中濕論・燥門論~不寢まで。また「皇朝惠民經驗選要神效三十柒方」と題し、目錄に記す補遺の痰門(家傳)~帶下の治方藥味(主治なし)を第六三葉まで列記。すべて漢文。跋・識語なし。料紙は中葉ゾー紙で、全體にやや黃變する。無界、無邊、無魚尾、版心に「門名 葉次」を記す。每半葉、一〇行・行約二五字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。輕い蟲損と破損あり。
 病門別の越籍方集で、正しい書名は『源流綱病諸症 附・皇朝惠民經驗選要神效三十柒方』。體裁の統一性と四時・四辰の混在より、もと嗣德年閒以前の刊本があり、その系統に基づく嗣德年閒一九世紀後半の筆寫らしい。

R.1752(政征醫官家傳)
 寫本一册五〇頁、後補ベトナム四鍼眼假綴。表紙缺、書高二七・一×幅一五・九㎝。帙なく、綠厚紙で表紙樣に包む。外題ほかなし。書頭に「□(北)寧慈山東岸東邑正御醫家官(官家)傳書」と題し、上段に六八體歌、下段に處方・藥味を記す。序・目錄なし。本文は漢喃文で、中風・傷寒・瘧・內傷・鬱症・咳嗽・霍亂・泄瀉・痢症・嘔吐・關隔・呑酸・浮腫・膨脹・積聚・虛損・勞熱・眩暈・腹痛・腰痛・麻痺・聾耳・目痛・口症・咽喉・齒・鼻・厥冷・出血・痔瘻・脱肛・癲狂・驚悸・消渴・淋濁・瘡疥・癰疽・墜下・婦人(各症に細分)が四五頁まで。四七頁に「附治麻疹國語歌」と題し、上段に七言の歌訣、下段に治方を記す。書末五〇頁に「傷寒六絶脈歌」あって、末行に「黃奉草 黃」を記す。跋なし。料紙は薄葉ゾー紙で、かなり黃變する。無界、無邊、無魚尾。欄上に頁を記入する。每半葉、八行・行約一八字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損なく、かなり破損と版心切れ。
 簡便な病門別歌訣と醫方の方論書。書名は『〔北寧慈山東岸東邑〕正御醫官家傳書』が適切。四時を四辰と記す一九世紀の筆寫。このタイプの方論書はベトナムに多く、日本の『古今方彙』や朝鮮の『方藥合編』に相當する。

R.2048(羅溪先生著、澤園門傳醫書輯要)
 寫本一册、後補ベトナム四鍼假裝。表紙なく、書高一八・五×幅一二・九㎝。帙なく、綠厚紙で表紙樣に包む。外題ほかなし。扉に「千金不可露輕言」を朱書。書頭に「澤園門傳醫書輯要 羅溪先生著 門生註幷附」と題し、無記年・無記名の序あって、祕書『醫學入門』より國語にしたという。目錄なし。本文は漢喃文で泄瀉治療の口訣・處方・藥味・治驗から記す。以下は寒熱・中風・中濕・暑氣・治瘧・婦人・咳嗽・血・□□・男子・浪柴?・癰疽・保胎生子歌・治方列記・再論回生丹功效(~第一九)・治痢要訣の各篇あり。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、やや黃變する。無界、無邊、無魚尾。每半葉、九行・行約二二字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損なく、かなり破損と版心切れ。
 病門別の簡便な口訣方論の書。一九世紀の筆寫か。

R.646(八陣全書)
  ウェブ畫像による。寫本一册四四葉。醫方集。

R.3043(古方)
  ウェブ畫像による。寫本一册七二葉。小柴胡湯など仲景方も含めた醫方集。書頭は「傷寒隨宜」から。

R.5482(舊R.3378、古方要藥并性藥全攷)
  ウェブ畫像による。寫本一册一六葉。病門別醫方集で、要藥の藥性も記す。

R.4862(舊R.311)〔家傳醫方〕
  ウェブ畫像による。寫本一册一四四葉。病門別醫方書。

R.3195(舊R.749、靜耘齋集驗方)
  ウェブ畫像による。寫本一册一二〇葉。存卷四の病門別醫方集で、急救門・頭痛門・鼻門・眼門あり。

R.5059(新刊普濟良方)
  ウェブ畫像による。ベトナム刊本、八卷・一二一葉。内封に「嗣德乙亥(一八七五)孟夏/新刊普濟良方/河内玉山祠藏板」と記す。清・嘉慶四年(一七九九)の德軒氏「原序」あり、靜耘齋の集驗方八卷から簡要の諸方を擇取し、效驗の方も補入して一册とし、出版するという。またベトナム秀才・陳光練の嗣德二八年(一八七五)「重刊普濟應驗良方序」あって、德軒氏の普濟應驗良方の卷末にベトナムの潘光暉琔記が集驗辰(時)方を附して重刊する、と記す。目錄に卷一時症各方、卷二瘡毒各方、卷三婦女各方、卷四小兒各方、卷五急救各方、卷六雜症各方、卷七・二便各方、卷八眼科各方、後集謹附諸病通却・補遺の見出しと收載處方を記す。卷頭に「普濟應驗良方 容山德軒氏纂輯」と題し、以下八卷は病門毎に簡單な病論があり、治方を列記する。卷末に集驗辰方を附錄し、書末に楊珪玠「後跋」一葉あり。
 中國の靜耘齋集驗方を清の德軒氏が擇補して普濟應驗良方八卷として一七九九年に刊行、これをハノイの潘光暉(琔記)が附錄して一八七五年にハノイの玉山祠から重刻した醫方集。書名は〔重刊〕普濟應驗良方が適切。漢喃研究所のVHv.487も同版。

R.3099(舊R.1832。滴暾、筆花醫鏡)
  ウェブ畫像による。清版にも見える翰文堂刊本、存卷二(小兒・婦人)五九葉。清末一九世紀に幾度も刊行された清・江涵暾(筆花)『筆花醫鏡』四卷だろう。

R.1932(醫書演歌)
R.2086(集驗良方)
R.2089(經濟神方廣錄)
*非醫書か
 右三書、 閲覽申請するも見つからない。

【道敎系醫方】

R.125(南藥神經)
 刊本、存一~三卷三九葉一册(書末に第一三葉を重複して補入)。ベトナム四鍼眼原裝、澁引き焦げ茶薄手表紙、書高二六・〇×幅一五・三㎝。帙なく、後補綠色厚紙で表紙樣に包む。外題・背書なし。書頭に男科・婦科・幼科の目錄二葉+三行、無記年の「陳朝顯聖興道大王序(庚子より六〇餘年で本書成る)」と無記年の「孚佑帝君降開經序」が二葉。卷首に「南藥神經天集卷之一/專治男科三十方」と題し、以下第二〇葉まで卷一。第二一~三三葉に「南藥神經地集卷之二/專治婦科三十方」、第三四~三九葉に「南藥神經人集卷之三/專治幼科二十方」あり、書末に「南藥神書(ママ)三集卷完」と刻す。本文三卷は漢文と漢喃文。跋・識語なし。料紙は中葉ゾー紙で、全體に黃變。無界、四周單邊・雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、象鼻に「南藥神經」、魚尾下閒に「天(地人)集卷之幾」、下象鼻に通葉次を刻す。每半葉匡郭、縱一九・六×横一三・〇㎝、八行・行二一字、小字雙行・行二一字。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點あり、書き入れ等なし。蟲損なく、破損部を裏打ち。
 方論書で道敎系。樣々な神が降臨して病症について述べた「解」や「神丹」歌や詩の治方があり、張景岳や海上懶翁も降臨し、ベトナム的。字樣は正方形の明朝體で、書中に四時を「四辰」と記し、古びからしても一九世紀後半の版本。

R.325(人身賦)
 寫本一册六二頁、後補ベトナム四鍼眼裝。ピンク色中手表紙、書高二六・七×幅一四・八㎝。帙・外題ほかなし。序・目錄なし。書頭に「人身賦」と題し、以下本文は漢文で、生命の誕生、身體機能、臟腑ほかを第三葉まで簡單に記す。第四~六葉に「室女賦」、第六葉後半より「百方賦家傳祕法」一葉あって、以下を缺く。次に「禮天地及天官科/祈病通用」あり、書末まで漢文と漢喃文で治病の呪法を記す。跋・識語なし。料紙は中葉ゾー紙で、やや黃變する。無界、無邊、無魚尾。每半葉、六行・行約二六字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損・破損なし。
 主に治病呪法の『祈病通用』で、藏象の「人身賦」などを前附する越籍。一九~二〇世紀の筆寫。

R.1788(活世良法[一九三一])
 刊本一册二一+七七葉、後補ベトナム六鍼眼裝。表紙缺、綠厚紙で表紙樣に包む。書高二六・一×幅一五・九㎝。帙なく、外題ほかなし。扉に四周雙邊で「活世良方」と題し、周圍に壽・康ほかの文字を配す。ウラに「原板藏在富康社志善壇/叶力恭刊與我自求多福/皇南保大六年(一九三一)歳次辛末正月上旬降乩/恒心印送在家能救萬人/沐恩弟子諸人仝奉刊」の刊記。保大六年の志善壇「活世良方序」が漢文で三葉。以下に漢喃文で病人須知・親人須知・恩人須知・神呪が第一三葉まで。第一四葉は「降乩」を依賴する見本書き。「上卷雜病目錄」二葉半に中風・傷寒~消渴・㿗疝あって、葉次と漢喃文の病名注記あり。「中卷種子目錄」一葉半に種子總論~小兒蟲疾・小兒諸胎毒。「下卷婦兒目錄」三葉に調經・經閉~疹痘發熱および諸治方を記す。目錄末尾まで二一葉。卷首に內題なく、本文は「中風第一籖…/第二籖…/第三籖…」のように、全篇で第幾籖に病症と治方を漢文で第七七葉まで記す。書末半葉に漢喃文で「恩人又須知 一則」あって末尾に「活世良方完」を陰刻する。料紙は中葉ゾー紙で、一部黃變する。無界、四周單邊、版心白口・雙內向黑魚尾、象鼻に「活世良方上」、魚尾閒に「篇名 葉次」を刻す。句讀點も刻入。每半葉匡郭、縱二一・二×横一三・四㎝、一〇行・行約二二字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れ等なし。蟲損・破損なし。
 道敎流民閒宗敎(高臺敎か)で、降臨(降乩)した神が告げる處方を靈媒(乩手)が機筆(乩筆)で自動筆記し、これを集成したと稱する病門別治方集三卷の存上卷。基本的に漢文の書。一九三一年の刊本。前報では何かの誤認でR.18を當本としたが、R.18は後揭の『南藥神效』だった。

R.2198(活世良法)
 刊本三卷一册、存一五+七七+二六+三〇葉、後補ベトナム六鍼眼裝。香色薄手表紙、書高二八・七×幅一五・五㎝。帙なし。外題なく、書根に「活世/良方/上中下」、天邊に「活世/三/卷」を縱書き墨書。書頭に腐爛破損あって扉・序・病人須知の初葉を缺き、以下は親人須知・恩人須知・神呪を一三葉まで存し、第一四葉は缺。「上卷雜病目錄」二葉半に中風・傷寒~消渴・㿗疝あって、葉次と漢喃文の病名注記あり。「中卷種子目錄」一葉半に種子總論~小兒蟲疾・小兒諸胎毒。「下卷婦兒目錄」三葉に調經・經閉~疹痘發熱および諸治方を記す。目錄末尾まで二一葉。卷首に內題なく、本文は「中風第一籖…/第二籖…/第三籖…」のように、全篇で第幾籖に病症と治方を漢文で第七七葉まで記す。卷末半葉に漢喃文で「恩人又須知 一則」あって末尾に「活世良方完」を陰刻する。卷中も內題なく、種子總論と題する總論末に「辰(時)/保大陸年歳在辛未孟夏朔日」を記す。以下に「弘化眞人降于金牌寶善之壇/普濟乩生蓮奉天」/輔政壇生花奉書/平日起居須知」と題し、以下に須知篇・保種歌~補遺婦科・補遺兒科あって、夫第一籖…や妻第一籖…、また治方を卷末第二六葉まで列記。卷下も內題なく、調經第一籖から始まり、第二八葉の治腎陰腫大方まで治方を列記。さらに「本壇供銀以下」「各諸善壇供銀以下」「珠臺同樂大成三壇生媛」と題し、本書出版費の醵出者名を書末第三〇葉まで列記する。料紙は中葉ゾー紙で、一部黃變する。無界、四周單邊、版心白口・雙內向黑魚尾、象鼻に「活世良方上(中・下)」、魚尾閒に「篇名 葉次」を刻す。句讀點も刻入。每半葉匡郭、縱二一・二×横一三・四㎝、一〇行・行約二二字、小字雙行・行字。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れ等なし。蟲損ないが、一部に版心切れ、破損あり。
 R.1788と同版で中下卷も揃う殘缺本。上卷の缺葉部分はR.1788で分かる。


【全書】

R.192(慧靖著、南藥神效)
 刊本一册、存五三葉。後補ベトナム四鍼眼裝、焦げ茶厚手表紙。書高二五・〇×幅一四・八㎝。帙なし。外題・背書なし。扉に四周單邊で「活法法中皆活法/南藥神效/奇方方內有奇方」の內封、裏に刊記なし。序・目錄なし。首卷に內題なく、「新刊南藥神效十科應治目錄」三葉あって卷之首(本草)に原草部六二種、以下は藤草一七、水草六、穀一九、菜四六、菓四八、木四三、蟲三二、鱗八、魚三五、甲六、介一三、山禽三九、水鳥一二、六畜二六、野獸三六、水一〇、土一四、金一一、石七、鹵四、人六、本草拾遺六三種を收める。また卷一・諸中科、二・氣應科、三・血應科、四・着痛科、五・不痛科、六・九竅科、七・內傷科、八・婦人科、九・小兒科、一〇・體外科を記す。首卷本文は「藥品南名氣味正治歌括」と題し、貫衆・黃精・柴胡・前胡・草龍胆…の順で、各藥二行に漢名・南名・氣味・主治・加工を漢文・漢喃文で記す。第二五葉オモテにはアルファベットでgangを刻入。末尾の第五一葉に人糞・童小便・乳汁までを記す。第五二葉に「本草拾遺 凡六十三種」と題し、第五三葉まで漢名・南名を列記。識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、わずかに黃變する。有界・無界が混在し、無匡郭葉もあって、少なくとも三系統の版木が混在する。一部の無匡郭葉を除き四周單邊、版心白口・雙內向黑魚尾、象鼻に「南藥」、魚尾閒に「卷之首 葉次」を刻す。每半葉匡郭、縱一九・四×横一三・〇㎝、一一行・行二五字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點あり。蟲損なく、やや破損、版心切れ。
 當本は本草の首卷および臨床各科の一〇卷からなる醫學全書『南藥神效』の存首卷一册。當本に一四世紀慧靖の著との記載は見えない。また本草部分の分類は概ね『本草綱目』(一五九六初版)に合致するので、慧靖の原著としても後世の改編や增補を多く受けたのは疑いない。目錄から分かる卷一~一〇の分科は漢籍に例を見ない独自性があるが、卷七の「內傷」科の表現には一五世紀以降に普及した『東垣十書』の影響が明らかにあり、慧靖の原著から相當に隔たっているだろう。したがって著者・書名は「(傳)慧靖原著 新刊南藥神效十科應治」が適切。當版は少なくとも三系統の版木を混用して印刷されている。また當版での「昏」字を後揭の一九二〇年版が「氏+月」字に作る傾向等からすると、當版→一九二〇版→一九二二版の順で翻刻されている。ただし首卷のみの現存本が多い點からすると、首卷だけが翻刻ないし單行販賣された可能性もある。さらに當版にはアルファベットが刻入されるのでフランス統治の一八八七年以降、つまり一八八七~一九二〇年の刊行となり、その段階以前に少なくとも三回は補刻があったと分かる。ちなみにハノイの漢喃研究所にある極東學院筆寫のA.1270/1-3本『南藥神效』存六九四頁には序文があり、「錦江慧靖先生集前」と記され、後黎朝の景興二二年(一七六一)に中都府(昇龍、現ハノイ)の洪福寺で刊行とある。また同研究所の目錄によると、極東學院舊藏のA.2850存一〇〇頁・聚文堂印本が一七六一年刊本に該當する。

R.1513(慧靖著、南藥神效)
 刊本一册、ベトナム四鍼眼裝で表紙脱落し、綠色厚紙で表紙樣に包む。書高二五・四×幅一五・二㎝。帙なし。他の書誌は前揭R.192本に同じ。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。朱點なく、一部に書き入れあり。蟲損なく、やや破損。
 R.192本と同版で、一八八七~一九二〇年の刊行、存首卷。著者・書名は「(傳)慧靖原著 新刊南藥神效十科應治」が適切。

R.1846(慧靖著、南藥神效)
 刊本一册、ベトナム假綴じ、焦げ茶中手表紙。書高二五・七×幅一四・八㎝。帙なし。外題・背書なし。第一~六葉を缺き、序・目錄・卷頭なく、以下は首卷末尾まで存する。識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、黃變なし。他の書誌は前揭R.192本に同じ。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に書き入れ等なし。蟲損なく、いささか破損、版心切れ。
 R.192本と同版で、一八八七~一九二〇年の刊行、存首卷、殘缺。著者・書名は「(傳)慧靖原著 新刊南藥神效十科應治」が適切。

R.1685(慧靖著、南藥神效)
 刊本と寫本を一册に綴じる。後補ベトナム四鍼眼裝、焦げ茶中手表紙。書高二五・三×幅一五・〇㎝。帙なし。外題・背書なし。前半の刊本は卷首に缺葉あり、第九葉以下から「本草拾遺」第五三葉まで存す。他の書誌は後揭のR.1740本に同。後半は越籍『診法捷要訣』の漢喃文寫本で、脈論の口訣が太素脈ほかから引かれる。料紙は薄葉ゾー紙で、強く黃變する。寫本は無界、無邊、無魚尾、版心に記載なし。每半葉、八行・行約二四字。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。強く破損し、全葉版心切れ、書頭末のみゾー紙で裏打ち補修する。
 刊本部分は後揭のR.1740本と同じ一九二〇年版『南藥神效』で、存首卷、殘缺。著者・書名は「(傳)慧靖原著 新刊南藥神效十科應治」が適切。『診法捷要訣』は一九~二〇世紀の筆寫。

R.1740(慧靖著、南藥神效[一九二〇])
 刊本一册、表紙等脱落し假綴じ狀態、綠厚手紙で表紙樣に包む。書高二五・三×幅一四・八㎝。帙なし。外題・背書なし。扉に四周雙邊の「活法法中皆活法/南藥神效/奇方方內有奇方」の內封あり、その裏に「河內行樓/啓定五年(一九二〇)九月新刊/福安藏板」の刊記。「新刊南藥神效十科應治目錄」三葉あって、卷之首(本草)に原草部六二種、以下は藤草一七、水草六、穀一九、菜四六、菓四八、木四三、蟲三二、鱗八、魚三五、甲六、介一三、山禽三九、水鳥一二、六畜二六、野獸三六、水一〇、土一四、金一一、石七、鹵四、人六、本草拾遺六三種を收める。また卷一・諸中科、二・氣應科、三・血應科、四・着痛科、五・不痛科、六・九竅科、七・內傷科、八・婦人科、九・小兒科、一〇・體外科を記す。本文は「藥品南名氣味正治歌括 附製造」と題し、各藥二行に漢名・南名・氣味・主治・加工を漢文と漢喃文で記す。卷頭から貫衆・黃精・柴胡・前胡・草龍胆…の順で、末尾の五一葉に人糞・童小便・乳汁を記す。第二五葉オモテにはアルファベットでgangを刻入。第五二葉に「本草拾遺 凡六十三種」と題して漢名・南名を列記するが、末尾の第五三葉を缺く。識語ほかなし。料紙は薄葉ゾー紙で、黃變なし。有界、四周單邊、版心白口、雙內向黑魚尾は上下邊に接し、魚尾閒に「南藥 卷之首 葉次(目錄から通し)」を刻す。每半葉匡郭、縱一九・〇×横一三・二㎝、一一行・行二五字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に書き入れ等なし。蟲損なく、やや破損。
 一九二〇年のハノイ福安藏版本で、存首卷、殘缺。後揭の一九二二年版より混亂少なく、刷りもいい。著者・書名は「(傳)慧靖原著 新刊南藥神效十科應治」が適切。

R.1979(慧靖著、南藥神效)
 刊本一册、表紙等脱落し假綴じ本狀態を綠厚手紙で表紙樣に包む。書高二五・三×幅一四・四㎝。帙なし。外題・背書なし。首卷の全葉を存し、識語ほかなし。料紙は荒い繊維を交える薄葉ゾー紙で、やや黃變。他の書誌はR.1740本と同。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に書き入れ等なし。鼠損あり、書の首尾をやや破損。
 一九二〇年のハノイ福安藏版本で、存首卷。著者・書名は「(傳)慧靖原著 新刊南藥神效十科應治」が適切。

R.18(南藥神效)
 刊本一册で、もと二册を合わせた後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶厚手表紙、書高二五・八×幅一五・四㎝。帙なし。外題なく、書根・天邊に「南藥上(集)」を墨書。扉に四周單邊で「大南啓定七年(一九二二)八月吉日幸遇良醫家有原板得新刻/南藥神效/西曆壹千玖百貳拾貳年 柳文堂公益藏板」の內封。序なく、內封ウラから「新刊南藥神效十科應治目錄」二葉半あって、卷之首「藥品南名氣味正治歌括」から卷一〇「外科」までを記し、卷一に連續する。目錄に反して卷之首なく、卷一首に「新刊南藥神效十科應治卷之一」の內題、以下本文存三卷は漢文で、字喃はどうもない。料紙は薄葉ゾー紙。有界、上下雙邊、版心白口・內向き雙黑魚尾、象鼻に「南藥神效」、魚尾閒に「卷幾 葉次」を刻す。每半葉匡郭、縱二一・四×横一三・四㎝、一一行・行二七字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き込みあり。蟲損・破損ないが、糸切れ。
 本書自體は首卷を含め全一一卷の醫學全書で、當本は首卷を缺く存卷一~三の一九二二年刊、柳文堂藏版本。著者・書名は「(傳)慧靖原著 新刊南藥神效十科應治」が適切。

R.169(慧靖著 南藥神效[一九二二])
 刊本一册、後補ベトナム四鍼眼裝。ピンク色假表紙の下に香色中手原表紙を遺す。書高二五・一×幅一四・七㎝。帙なし。外題・背書なし。扉に四周雙邊で「活法法中皆活法/南藥神效/奇方方內有□□(奇方)」の內封あり、その裏に「河內行□(樓)/啓定七年(一九二二)九月新刊/福文藏板」の刊記。序・目錄なし。首卷に內題なく、「藥品南名氣味正治歌括/原草部 凡六十二種」と題し、以下本文は貫衆・黃精・柴胡・前胡・草龍胆…の順で、各藥二行に漢名・南名・氣味・主治を漢文・漢喃文で記す。末尾の第五一葉に人糞・童小便・乳汁を記す。第五二葉に「本草拾遺 凡六十三種」と題し、第五三葉まで漢名・南名を列記。卷一は扉に四周雙邊で「大南啓定七年八月吉日幸遇良醫家有原板得新刻/南藥神效/西曆壹千玖百貳拾貳年 柳文堂公益藏板」の內封、その裏から「新刊南藥神效十科應治目錄」一葉半強あり首卷と卷一~一〇を記す。卷一頭に「新刊南藥神效十科應治卷之一」と題し、中風より論と治方を記す、卷三末の便血・溺血まで存。全體は南藥の簡便な治方が多く、中國の影響は少ない。多くは漢文で、一部に漢喃文あり。卷一は三六葉、卷二は三二葉、卷三は九葉。藥名を白字に刻す。識語ほかなし。料紙は薄葉ゾー紙で、わずかに黃變する。有界、四周單邊、版心白口・雙內向黑魚尾、象鼻に「南藥神效」、魚尾閒に「卷幾 葉次」を刻す。每半葉匡郭、縱一八・五×横一二・五㎝、一一行・行二五字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に書き入れ等なし。蟲損なく、やや破損。
 本書は首卷を含め全一一卷の醫學全書で、著者・書名は「(傳)慧靖原著 新刊南藥神效十科應治」が適切。當本は存首卷・卷一~三の一九二二年刊、柳文堂(ハノイ福文)藏版本。その全葉を一九二〇年版と比較するに、完全な別版で、誤字が增加しており、刻字も劣る。また一九二〇年版の刊記に似せ、その「福安藏」も一九二二年版では「福文藏」に作る。すると一九二二年の柳文堂(ハノイ福文)藏版本は卷一內封に「幸遇良醫家有原板得新刻」と記すことからも、あるいは一九二〇年ハノイ福安藏版本の海賊版か。

R.1847(慧靖著 南藥神效[一九二二])
 刊本と寫本の二書を合一册、後補ベトナム四鍼眼裝、焦げ茶中手原表紙。書高二四・五×幅一四・七㎝。帙なし。外題・背書なし。
 第一書は刊本で、遊紙一枚、扉に四周雙邊で「活法法中皆活法/南藥神效/奇方方內有奇方」の內封、その裏に「河內行樓/啓定七年(一九二二)九月新刊/福文藏板」の刊記。目錄の第一葉を缺き、第二~三葉に卷五不痛科~卷一〇體外科を載せる。首卷に內題なく、「藥品南名氣味正治歌括/原草部 凡六十二種」と題し、以下本文は五三葉まで全葉を存す。料紙は薄葉ゾー紙で、やや黃變する。他の書誌は上揭本R.169に同。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き書き入れあり。蟲損・破損なし。
 第二書は寫本で、外題・內題なし。書頭から人參・黨參・玄參・沙參・丹參・黃耆・白朮・茯苓・甘草・當歸・川芎・白芍・赤芍・生地・熟地の順で、各藥の氣味と主治を六六歌の一二字で一行に記す。一部に小字で別名や加工を記すが、すべて漢文。末尾は預知子・王不流(ママ)行・狼毒・藜蘆・草麻子・蓽撥・百部・京墨まで。全書に朱點・朱引き書き入れあり。鼠損のみ。
 第一書は一九二二年のハノイ福文藏版『南藥神效』の存首卷。著者・書名は「(傳)慧靖原著 新刊南藥神效十科應治」が適切。第二書は越籍の藥性書で、冒頭に參類を配す書は他に未見。また主治をベトナム的な六六歌とするが、字喃はない。

(慧靖著 新刊南藥神效十科應治)
 ウェブ畫像による。R.5484は寫本一册五九葉で、卷五の不痛科、卷六の九竅科あり。R.5162は寫本一册七二葉で、卷七の内傷科、卷八の婦人科あり。R.5863は寫本一册五三葉で、卷九の小兒科あり。三册とも同一筆寫で、分かれ本。卷一~四・一〇の存否は未詳。

R.354(呉興錢著、經驗單方[一九〇四])
 寫本一册一〇四葉+三葉、後補ベトナム四鍼眼裝。ピンク色薄手表紙、書高二六・五×幅一六・三㎝。帙なし。外題なし。康煕丁亥年の錢峻「原(自)序」一葉、乾隆一七年の周朗鶴「附刊丹(單)方補遺序」一葉、乾隆一七年の踰(ママ、兪か)燠「自序」一葉、「丹(單)方彙編總目/呉興錢 峻靑掄原編輯/婺源兪 燠膮園/金谿周 朗鶴仙/仝増補…」二葉、錢峻「凡例(云、單方彙編)」二葉。卷首に内題・編著者名なく、貿藥辨眞假(「…諺云、賣藥者雙眸、用藥者雙眼、服藥者盲臌」といい、面白い。以下は重要藥の良品鑑定)・諸症歌訣・單方(雜治)が二三葉まで。二四葉に「經驗單方彙編 婺源兪 燠文光甫重梓/呉興 錢 峻靑掄編輯…」と題し、以下本文は中風・風氣・虚勞・腫脹…獸蟲までで、漢文醫學全書。跋なし。さらに練仙藥文の漢喃文二葉あり。目錄からすると當本は卷一で、卷末の補遺雜治が書頭の單方(雜治)らしい。書頭の遊紙裏に靑筆で「啓定拾年(一九二五)云々」、書末の遊紙表裏に朱筆で「保大貳年(一九二七)九月拾七日」の識語あり。料紙は薄葉ゾー紙で、全體に黄變する。無界、無邊、無魚尾、版心に「經驗單方 篇名 通し葉次」を寫す。每半葉、八行・行二九字、小字雙行。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損なく、破損。
 越籍で、本文部分は一九世紀の筆寫か。當書の書誌記載は「經驗單方彙編、淸康煕丁亥、錢峻撰。存卷一・一册、寫本。越南・啓定拾年(一九二五)以前、據淸・乾隆一七刊本寫」が適切。

R.1201(裴叔貞著、衛生要旨卷一)、1202(同上、卷二)、1203(同上、卷三)、1204(同上、卷七) 
 寫本一册、後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高一七・八×幅一四・六㎝。帙なし。外題なし。目錄二葉。卷首に「衛生要旨卷之七 英川裴叔貞纂」と題し、以下本文は漢文で、當該卷は痘疹部分。書末に「治痘藥性摘要賦」三葉を附錄。料紙は中葉ゾー紙で、黄變なし。無界・無邊・無魚尾だが、升目狀に押し目罫あり(ベトナム本では初見)。版心に「篇名」を寫す。每半葉、九行・行字不定、小字雙行。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。全書に朱點・朱引きあり。蟲損なし。
 架藏番號R.1203-08で一帙。醫學全書。類似書名では淸・光緒一九年(一八九三)刊の鄭官應『中外衛生要旨』四卷本があるが、本書は著者名の特徴からも越籍で、二〇世紀の筆寫だろう。中に西村浩子氏の角筆調査紙を挿む。確かに角筆らしき跡あるが、眞柳には判別不能。

R.1965(裴惟忠著、衛生要旨卷一~二[一八九〇])、1966(同上、卷二)、1967(同上、卷三)、1968(同上、卷四)
 寫本四册、後補ベトナム四鍼眼裝。原表紙なく、灰綠色中手表紙で包み、書高二七・三×幅一六・〇㎝。帙なし。外題なし。成泰庚寅年(一八九〇)の裴叔貞(云、八十老人)「自序」一葉あって、醫學説疑一卷・會英醫門二八卷・初試便用三卷、そして衛生要旨八卷を著したという。目錄なし。卷首に「衛生要旨卷之壹」の内題、以下本文は漢文で、卷二・三および不詳卷各一册を存する。跋・識語なし。總論および病門別の醫學全書。料紙は中葉ゾー紙で、一部黄變する。無界、無邊、無魚尾、版心に葉次を寫す。每半葉、一〇行・行二四字、小字雙行。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れ多し。僅かに蟲損し、版心・糸切れする。
 越籍で、前掲本と同一。二〇世紀の筆寫だろう。カードは「裴惟忠著」に作るが、「裴叔貞著」が適切。

R.1362-1370(醫學入門)

 刊本八册、ベトナム包背原裝。澁引き茶色厚手表紙、書高二六・二×幅一五・九㎝。書根・頭・小口にも澁を塗る。帙なし。外題なく、書根・頭に「醫學卷之幾」を縱書きで墨書。扉に四周單邊で「南豐李諱梴先生編註/醫學入門/河内成文堂梓行」の封面、そのウラに「旹/嗣德十二年(一八五九)夏月吉日新鐫」の刊記(後印)。首卷は萬磿(ママ)乙亥年の李梴「醫學入門引」一葉、内集目錄三葉、集例三葉、先天圖一葉、天地人物氣候相應圖三葉、經穴撮要歌括(新増)四葉、用藥檢方總目二九葉、釋方・音字一〇葉、歷代醫學姓氏二五葉、原道統説三葉、陰隲三葉、保養・運氣等。卷首に「編註醫學入門内集卷之一」の内題、以下本文七卷。漢文書。跋なく、書末に「…時壬申仲春稿也/萬曆乙亥仲春初吉南豐邑東李梴謹書/門人族姪李 聰 校寫/門人…」および四周單邊で「是刻悉照原本校正錯誤、細加圏點、方症標/以柱圏、精工繕寫。展卷研求、豁然心目、/識者珍之。廣城書林福文堂」の木記。料紙は竹紙に似る薄葉ゾー紙で、一部黄變する。有界、四周雙邊、版心白口・黑魚尾、象鼻に「醫學入門」、魚尾下に「卷之幾 篇名 葉次」、一部の下象鼻に「福文堂」を刻す。卷一末尾に「縣庠泉東劉/君各璠贈」、卷四末尾に「縣庠輯吾劉君/各時煕贈刻」の刊記。每半葉。匡郭、縱一八・四×横一三・七㎝、一〇行・行二二字、小字雙行・行二二字。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。一部に朱點・朱引き、卷二本草引第一葉上欄に『東醫寶鑑』内景篇卷一を引く書き入れあり。蟲損・破損なし。
 本書は明・李梴の著で、朝鮮版・和刻版もある。當本は一八五九年の河内(ハノイ)成文堂刊本で、字樣は後期淸版の風。漢喃研究院藏本と同版。美本。

R.3321(醫學入門)
  ウェブ畫像は補遺眞傳醫學源流で登錄するが間違い。ベトナム刊本一册一〇五葉。編註醫學入門の存外集卷四。

R.1765(壽世保元)
 刊本存一册、後補ベトナム包背裝。灰綠色厚手表紙(原表紙は澁引きの焦げ茶色)、書高二六・〇×幅一五・七㎝。帙なし。原表紙の大破で外題等は不詳、書天に「壽世肆」を墨書。書根・天・小口に澁を塗る。序・目錄は不存。卷首に「新刊醫林狀元壽世保元庚集七卷/太醫院吏目金谿雲林龔廷賢子才編/同邑後學周亮登元龍校」と題し、以下本文存卷七(婦人科)七〇葉・八(小兒科)七六葉。漢文書。料紙は薄葉ゾー紙で、全體に黄變する。有界、左右雙邊、版心白口・單黑魚尾、象鼻に「壽世保元」、魚尾下に「庚(辛)集幾卷 篇名 葉次」、多くの下象鼻に「老會賢」を刻す。每半葉匡郭、縱一八・五×横一三・七㎝、一三行・行二八字、小字雙行。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。全書に朱點・朱引きあるが、書き入れ等なし。蟲損なく、卷八頭一~二葉の版心部やや破損。
 本書は明・龔廷賢の著で、和刻版もある。當本は老會賢藏板のベトナム版で、字樣は淸末刊本に似る。恐らく一九世紀の所刊。

R3416(舊R.1337、補遺眞傳醫學源流)
  ウェブ畫像による。寫本一册八五葉。〔太醫院補遺眞傳〕醫學源流肯綮大成の存卷七。本書は明の龔信編、余應奎の補遺による一六卷の醫學全書。万暦の成立、清刻本もある。

(辨證奇聞)
  ウェブ畫像による。寫本で、R.5509(舊R.1231)卷一・二の一册七六葉、R.3442(舊R.1232)卷五・六の一册七九葉、R.3340(舊R.1234)卷九~一一の一册八七葉、R.3430(舊R.1235)卷一二~一五の一册七三がある。缺卷の存否は未詳。本書は陳士鐸撰の醫學全書で、全一四卷に『脈訣闡微』一卷を附す。


【本草】

R.271(藥品南名氣味正治歌括)
 寫本一册一一八葉、後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶厚手表紙、書高二八・五×幅一六・三㎝。帙なし。外題・背書なし。序・目錄なし。卷首に「藥品南名氣味正治歌括 附製造」と題し、原草部凡六十二種を貫衆・黃精・柴胡の順で記載する。末尾の第五七葉は人部の人糞・童小便・乳汁までで、內題も記載順次も『南藥神效』の首卷に同じだが、末行に「嶺南本草上卷終」と記す。以下は別書の合册で、第五八葉に「新刊海上懶翁全帙卷之十三」とあり、以下は黃柏・黃精…白蘇・白力・白芷…赤花蛇…蕪荑まであり、「詩曰」として漢文・漢喃文の歌訣を記す。一一〇葉の末尾に「本草下卷終」および醵金の四名を記す。第一一一葉に「本草拾遺」と題する漢喃文藥性歌三葉があり、これは『南藥神效』首卷の末尾に同。さらに以上全体は漢喃研究所の同名寫本VHv.五二六(VHc.二一二八)に同じ。第一一四葉に「指南藥性賦」と題し、「欲惠生民、先尋聖藥、天書分定南邦、土産有殊北國」と述べて治法ごとの藥味を漢文で列記し、これは後揭のR.1199・R.1895本にほぼ同じで、慧靖『洪義覺斯醫書』所收の『直解指南藥性賦』に基づく。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、全體に黃變する。無界、無邊、無魚尾、版心に葉次を記す。每半葉、八行・行約二〇字、小字雙行。一九世紀の筆寫か。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。一部を蟲損・破損する。
 第一一三葉までは刊本『醫宗心領』卷一二・一三(別稱『嶺南本草』上下卷)、第一一四葉以下は『直解指南藥性賦』による本草(南藥)藥性の合鈔本。

R.641(増訂本草備要[一八八三])
 寫本一册、ベトナム四鍼眼原裝。澁引艶出し焦げ茶厚手表紙、書高二五・五×幅一三・七㎝。帙なし。外題なく、書根・頭に「備要」を墨書。見返しに「皇朝嗣德三十六年(一八八三)歳次癸未、/這卷照據舊本註□、其間多有/落舛、未能訂正。見者幸勿啞笑」の識語。序なく、卷每に目錄がある。卷首に「増訂本草備要」の内題、以下本文は「藥性總義」から始まる四卷。達筆な漢文書。跋なし。料紙は中葉ゾー紙で、一部黄變する。無界、無邊、無魚尾。每半葉、七行・行約二三~二五字、小字雙行。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。全書に朱點・朱引き、および朱墨の書き入れあり。蟲損なく、糸切れと表紙の破損甚。
 本書は淸・汪昂の著。書名に「増訂」を冠するので、底本は淸版ないしベトナム版だろう。見返しの識語からしても一九世紀の筆寫は間違いない。當本の表紙は日本の栗皮表紙に酷似する。

R.2117(大南藥神效)
所在不詳。


【博物】

R.43・44(鄧春榜著、南方名物備攷、上下[一九〇二])
 刊本二册、後補ベトナム包背裝。灰綠色厚手表紙の下に澁引き焦げ茶中手の原表紙、書高二五・四×幅一三・八㎝。帙なし。外題なし。扉に四周雙邊で「成泰壬寅(一九〇二)新鐫/南方名物備攷/善亭定本」の封面、成泰辛丑年(一九〇一)の善亭鄧丈「南方名物備攷小引」一葉、目錄半葉。卷首に「南方名物備考卷之上」の内題、以下本文は漢喃文。卷上に天文・地理・歳時・身體・疾病・人事・人倫・人品・職制・飲食・服用・居處、卷下に宮室・舟車・器用・禮樂・兵刑・戸工・農桑・漁獵・巧藝・五穀・蔬菜・花・果・草木・竹・禽・獸・鱗・介・昆蟲を記す。跋なし。料紙は薄葉ゾー紙で、一部黄變する。有界、四周雙邊、版心白口で内向き雙黑魚尾、象鼻に「南方名物備攷」、魚尾間に「上(下) 篇名 葉次」、下象鼻に「善亭定本」を刻す。每半葉匡郭、縱一七・七×横一一・五㎝、一〇行・行二二字、小字雙行・行二二字。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。書き入れ等なし。一部に蟲損。
 越籍で、書誌記載は「越南・鄧春榜著、南方名物備考、二卷二册、成泰壬寅年(一九〇二)善亭鄧丈刊本」が適切。

R.1436     
R.111・1434・1436(合信著、博物新編卷一[一八七七])
R.110・111・1437・1438(合信著、博物新編卷二・三[一九〇九])

 R.110・111による調査。刊本二册、後補ベトナム包背裝。灰綠色厚手表紙(原表紙は黄土色)、書高二六・七×幅一五・七㎝。帙なし。外題なし。扉に四周雙邊で「維新己酉(一九〇九)孟夏/博物新編/觀文堂藏板」の封面、そのウラに「板權所/有不準/翻刻」の木記あり。嗣德三〇年(一八七七)年の河寧・陳仲恭「重鐫博物新編序」二葉、目錄一葉、圖二葉。卷首に「博物新編初集(二集・三集)/英國醫士合信著」と題し、以下本文三卷二册。漢文書。跋なし。料紙は中葉ゾー紙で、色變なし。無界、四周雙邊、版心白口・單黑魚尾、象鼻に「博物新編一(~三)集」、魚尾下に葉次を刻す。每半葉匡郭、縱一八・九×横一三・五㎝、一〇行・行二四字、小字雙行。四周雙邊で「THUVIEN/QUOCGIA」の藏印記。一部に朱點・朱引あり。蟲損なし。
 當本は一八七七年のハノイ版に基づく一九〇九年のベトナム觀文堂藏板刊本。漢喃研究所VHv.809/1-2本と同版本。本書には本來の淸版の他に和刻版もある。


【叢書】

R.1556(慧靖著、洪義覺斯醫書下)
 刊本一册二九+三二+二四葉。ベトナム四鍼眼裝、絲切れ、表紙缺、書高二六・四×幅一五・五㎝。帙なく、綠厚紙で表紙樣に包む。外題なく、書根・頭に「南藥正本卷下」を横書き墨書。序・目錄なし。卷首に「洪義覺斯醫書卷下/洪義堂宿禪慧靖著/東開/槐衙/逸士黎德全法晟抄錄」と題し、以下本文は「十三方加減」より始まる漢喃文書。一・不換金、二・二陳湯、三・參蘇、四・四物湯、五・五苓散、六・玄武湯、七・香蘇、八・小柴胡、九・靈驗對金、一〇・十神湯、一一・烏藥順氣、一二・五積、一三・四君子湯の方論が第二九葉まで。次に無記年・無記名の「醫書慧靖重刊謹序」二葉、「傷寒格法治例目錄」一葉(祕用三十七法就註三十七槌法~加減續命湯・黃連消毒飮)あり。卷頭に「傷寒格法治例卷之下/上古老禪弘(缺筆)敞無擇慧靖撰集」と題し、本文は祕用三十七法就註三十七槌法から。漢喃文で明・陶華『傷寒六書』にある「殺車」「槌法」の語彙も使い、第一方は升麻發表湯(麻黃湯加減)で、第三七方の黃連消毒飮まで三二葉。末行に「傷寒三十七法幷三十七槌法卷之下」を記す。次に「症治方法 屬卷下」と題し、漢喃文で求醫問答要訣・治痢要訣・治泄要訣・治孕婦胎熱似痢要訣・治轉胞要訣・産後血塊□痛要訣・崩漏要訣・吐血要訣ほかの論と治方が二四葉まで存。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、やや黃變。無界、四周單邊、版心白口・無魚尾、版心に「十三方(傷寒・提綱) 葉次」を刻す。每半葉匡郭、縱一八・五×横一三・〇㎝、一〇行・行一六字、小字なし。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損なく、やや破損。
 方論・傷寒治方・婦人科の書。惠靖(一三三〇~一三八五~?)は陳代を代表する醫家で、本書二卷は黎朝の侍內府が慧靖の著として一七一七年に編刊。上卷に『南藥國語賦』『直解指南藥性賦』を收めるが、國家圖書館には見あたらない。當下卷の『十三方加減』は元・徐和用『加減十三方』(一四一三初版)を、『傷寒格法治例』は明・陶華『傷寒六書』(一五二二初版)中の『〔傷寒家祕〕殺車槌法』を漢喃文にしたのが明らかで、慧靖に假託した一六~一八世紀の付加だろう。末尾にある『症治方法』はベトナム醫書の特徴といえる痢や泄から始まるので、あるいは惠靖の著に基づくか。當本は恐らく一九世紀の刊本。

R.1077     
R.1077~1112(〔新鎸海上懶翁〕醫宗心領全帙)
R.1077 首卷
 刊本一册、序一二葉・本文六三葉、ベトナム包背改裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二四・八×幅一四・三㎝。帙なし。外題なく、書根・天邊に「海上卷首」を縱書き墨書。首卷册に嗣德丙寅(一九)年(一八六六)の武春軒「奉輯海上心領遺書原引」二葉あり、こう記す。本書は失傳していたが嗣德八年(一八五五)に本書(全二八集)の一、二集を得てから捜索を始め、醫家や儒家から計一五集までを得た。同一七年(一八六四)に香山縣情艶社の懶翁第五代子孫より正本計二一集を得て一〇中の七、八となったので、本書を廣めたい、とある。進士・黎菊齡の無記年寫刻體序一葉あって、武春軒が本書五〇餘卷を蒐集して一〇中の七、八となり出版したいので序を求め、彼の努力でほぼ完全になるだろうと記す。その末尾三行に醵銀者名・額あり。景興庚寅(三一)年(一七七〇)の海上懶翁黎氏「懶翁心領自序」六葉あって、醫道の意味や修學の經緯、數年かけて輯成した一編を「懶翁心領」と名付け家藏すると記す。その末尾半葉に醵銀者名・額あり、咸宜元年(一八八五)の「北寧省慈山府武江縣大壯社同人寺住持釋清高校刻」の刊記を末尾に記す。次に「新刊海上懶翁小引」三葉あり、こう記す。武春軒が海上懶翁(釋清高と同郡という)の醫書五一卷を見せて刊行を依賴。しかし經費がなく一〇年逡巡し、嗣德三〇年(一八七七)に紳豪の刊行助成があり遺稿四卷も名家より得、同三一年にも多くの捐貨があった。そこで嗣德三二年(一八七九)から校刻を開始し、咸宜元年(一八八五)に完了したという。その後に「大壯社同人寺藏版」の刊記と醵錢・銀者の名と額を記し、以上で計一二葉。次から首卷で、懶翁の「附錄奉先師禮儀」では科擧を棄て醫に就き十餘年で『馮氏錦囊祕錄』全部を得て奧義に達したので、先師の神像を紙上に描いて顯彰し、その祭儀式を備錄するという。以下は、上座列位に神農・伏羲・黃帝、東配列位に岐伯~華陀等一二名、西配列位に張機~王太僕等一二名、中座列位中央に天朝先正先師海盬馮氏號楚贍(馮兆張)神位あり、左右に乾正立齋先生等二〇名が第二葉まで、以下は左班列位・右班列位に皇甫謐など中國の名醫を第八葉まで列記。次に「春祭排列位次圖」あって、馮兆張を中央に祭祀する配置圖、祝文・儀節・告文が第一四葉まであり、馮兆張を天朝先正先師と祀る。第一五葉に「醫裡偸閒俚言附志」と題して二〇葉まで詩文など、二一~二三葉に「醫訓格言」を記す。二三葉後半より凡例あって、『內經』を本、『錦囊』『景岳』を提綱として群書を參合、十餘年で驗した心得を編纂して二八集・六六卷とし、各集に集名・小引・目次を記したという。以下は集名ごとに二行前後で提要を第二七葉まで記すが、計二七集しかない。第二六「傳心祕旨集」と第二七「尾集」の閒に一行空くので、出版段階でも集名未詳の部分があったらしい。第二八~三一葉に總目次あって首卷、卷一內經要旨集、卷二醫家冠冕集、卷三~五醫海求源集、卷六玄牝發微集、卷七坤化採眞集、卷八導流餘韻集、卷九運氣祕典集、卷一〇・一一藥品彙要集、卷一二・一三嶺南本草集、卷一四外感通治集、卷一五~二四百病機要集、卷二五醫中關鍵集、卷二六・二七婦道燦然集、卷二八坐草良模集、卷二九~三三幼幼須知集、卷三四~四三夢中覺痘集、卷四四麻疹準繩集、卷四五心得神方集、卷四六傚倣新方集、卷四七~四九百家珍藏集、卷五〇~五七行簡珍需集、卷五八(修刻本は五八~六〇)醫方海會集、卷五九(修刻本は六一)醫陽案集、卷六〇(修刻本は六二)醫陰案集、卷六一(修刻本は六三)傳心祕旨集、(修刻本は卷六四問策集あり)尾卷・上京記事集を記す。各卷には上記の集名および細目を記すが、卷一二・一三・一五・一六・一九~二四・五八の計一一卷には細目がない。第三二葉に「醫業神章」と題し、第六三葉まで生涯の行醫經驗と醫學の最重要點を漢文で記し、末尾に刊行醵銀・錢者名・額が一葉弱ある。料紙は薄葉ゾー紙で、僅かに黃變する。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、魚尾閒に「首卷 原引(語・自序~神章) 葉次」、第三九葉下象鼻のみに「秋宣(刻工名?)」を刻す。一九世紀刊本で、字樣は明前期版に稍似る。每半葉匡郭、縱二〇・一×横一二・七㎝、八行・行二一字、小字雙行・行二一字。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損・破損なし。辰・宗字の避諱缺筆あり。
             同人寺山門
 本書各卷の序や尾卷の記述からすると、海上懶翁(黎有倬、一七二四~一七九一)は一七六〇年前後に儒を棄て醫に轉じたらしい。首卷の自序と凡例より、懶翁は一七七〇年の數年前より中國醫學最古典の『內經』(『素問』『霊樞』)を基本、中國個人醫學叢書の『錦囊祕錄』全五〇卷(一七〇二初版)と『景岳全書』全六四卷(一七一〇初版)をモデルとして本書の著述を開始している。最も後期の自序は卷九の一七八六年なので、それから沒する一七九一年以前までに醫學叢書の本書二八集・六六卷(うち首卷・尾卷各一卷)を完成させたと考えるべきだろう。武春軒の一八六六年序からすると、春軒は一八五五年にその一、二集を得てから蒐集を開始、一八六四年に懶翁の第五代より正本計二一集を得ている。同人寺住持・釋清高の小引からすると、武春軒は一八六七年前後に蒐集した計五一卷の出版を清高に依賴。清高も一八七七年に遺稿四卷を得、一八七九年から一八八五年にかけて計五五卷を同人寺で校刻したことが分かる。現存刊本の調査からしても、未刊に終わったのは卷一五・一六・一九~二四・五九・六〇・六四の計一一卷らしい。また現存刊本には計二七集しか見えないが、缺けているのは修刻後印本の首卷總目錄のみに記される「卷六四 問策集」の一集だろう。また先印本首卷總目錄の卷五九~六一を、後印本は卷六一~六三に修刻しており、本文の卷次と合致するよう直している。なお現存刊本卷一二・一三の「嶺南本草」は、一七六一年初版の『南藥神效』のほぼ轉載で懶翁の自著とは認められず、題署にも武春軒の名がないので、清高が得たという遺稿四卷の一部に該當するらしい。
バクニン博物館所藏の本書版木(卷31幼幼須知集・土卷第5葉)
  本書刊記にある「北寧省慈山府武江縣大壯社同人寺」は、ハノイの東三五キロメートルほどのBắc Ninhバクニン(北寧)市に現在もある。當地はベトナム傳統のDó ゾー(楮のベトナム音)紙製造(素材は楮コウゾではなく、ジンチョウゲ科のRhamnoneuron balansae Gilg (Duake)、漢名・鼠皮樹の靱皮)でも有名。そこで二〇〇九年九月一一日、ベトナム社会科學院漢喃研究所のDINH KHAC Thuan(丁克順)敎授に案内いただき北寧市で調査した。左寫眞の同人寺を訪ねたところ、かつて寺には佛典の版木もあったが、それらはある段階で南(サイゴン?)に持って行かれ、のち行方不明とのこと。幸い本書の版木は完成間近のバクニン博物館に保存されており、首卷、卷一~九、一一、一三、一四、一七、一八、二五~三二、三五、三六、三八~四三、四六、四八~五一、五八、六一、六二、尾卷の現存が確認された。したがって刊行が判明している全五五卷のうち、缺けた版木は卷一〇、一二、三四、三七、四四、四五、四七、五二~五七、六三の計一四卷となる。ただし現存卷でも缺葉はあるので、全體の六〇~七〇%ほどが現存するだろう。これら最終の刻板が一八八五年につき百数十年前の物となるが、ひび割れや蟲損もなく、左寫眞のように良好な狀態だった。版木は中國の二倍ほど厚く、一般の日本版よりやや厚い。また表面と裏面の文字を上下逆方向に彫板する點が、左右逆方向に彫板する日中と異なる。なお一部だが佛典らしき版木もあった。

R.1078 卷一
 刊本一册九九葉、ベトナム六鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・三×幅一五・〇㎝。帙なし。外題なく、書根・天邊に「內經要旨」を縱書き墨書。卷一首に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領全帙內經要旨卷之一/海上懶翁黎氏纂輯 後學唐郿武春軒奉較」と題し、見出し陰刻の小引(無記年、末尾は「黎氏別號海上懶翁引」)・凡例・目次(陰陽・化機・臟腑・病能・治則・頣養・脈經)計一葉あり。以下に本文九八葉あり、陰陽・化機・臟腑・病能・治則・頣養・脈經の篇名を白字で刻す。治則部分に「李東垣七方圖(大小緩急奇偶複の處方)」、また『靈樞』の引用あり。漢文書。跋・識語なく、書末醵金者名など二行を墨丁に作る。料紙は中葉ゾー紙で、僅かに黃變。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、魚尾閒に「內經要旨 陰陽(~脈經) 葉次(通し)」を刻す。一九世紀刊本で、字樣は明前期に稍似る。每半葉匡郭、縱一九・八×横一二・七㎝、八行・行二一字、小字雙行・行二一字。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引きあり、書き入れなし。蟲損・破損なし。
 當卷一「內經要旨」は『內經』の最重要點を七項目に分けて拔粹し、小字で注を加える。具体的な成立年は未詳。

R.1079 卷二
 刊本一册一〇二葉、ベトナム六鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・二×幅一五・一㎝。帙なし。外題ほかなく、書根・天邊に「海上醫家冠冕」を墨書。卷頭に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領醫家冠冕全帙卷之二/海上懶翁黎氏纂輯 後學唐郿武春軒奉較」と題し、無記年の懶翁小引に『醫學入門』を參考に編纂という。目次一葉半あって、陰陽・五行~水火病・全眞症まで。以下本文は篇名を陰刻の白字、漢文で記し、內景等の圖説あり。跋・識語なし。料紙は中葉ゾー紙で、一部黃變する。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、魚尾閒に「醫家冠冕 篇名 通卷葉次」を刻す。每半葉匡郭、縱二〇・一×横一二・九㎝、八行・行二一字、小字雙行・行二一字。一九世紀刊本で、字體は明前期に稍似る。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引きあり、書き入れ等なし。蟲損・破損なし。
 當卷二「醫家冠冕」は陰陽五行・易・內景・臟腑・經脈など、醫學の綱領を記す基礎理論書。具体的成立年は未詳。

R.1080 卷三~五
 刊本一册五〇+四五+四五葉、ベトナム包背裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二四・七×幅一四・三㎝。帙なし。外題ほかなく、書根・天邊に「海上卷三四五」を縱書き墨書。書頭に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領全帙卷之三/醫海求源集」と題す。景興四三年(一七八二)の懶翁小引一葉半あり、儒を棄て醫に就き二〇餘年といい、「醫海求源」三卷を著したという。目次半葉あり、孟卷(陰陽篇~臟腑篇)・仲卷(病機篇・化機篇)・季卷(治則篇・醫則篇)の九篇四七五章を記す。卷頭に「醫海求源孟卷/海上懶翁黎氏纂輯/後學唐郿武春軒奉較」と題し、以下本文は「陰陽篇 該四十三章」から始まり、五〇葉まで。卷末に醵金者名を刻す。次に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領全帙卷之四/醫海求源仲卷 海上懶翁黎氏纂輯/病機篇該一百四十章 後學唐郿武春軒奉較」と題し、以下に小引・目次なし。本文第四五葉末尾に「仲卷終」以下に醵金者四名の額を記す。次に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領全帙卷之五/醫海求源季卷/海上懶翁黎氏纂輯/後學唐郿武春軒奉較/治則篇該八十八章 興安施黃武三安奉攷」と題す。以下に小引・目次なく、本文第四五葉末尾に「季卷終」。以下に醵金者一〇名の額を記す。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、全體に輕く黃變する。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、魚尾閒に「醫海孟(仲・季)卷 篇名 各卷葉次」を刻す。每半葉匡郭、縱二〇・一×横一二・五㎝、八行・行二一字、小字雙行・行二一字。一九世紀刊本で、字樣は明正統版に似る。やや後印。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損・破損なし。
 當卷三~五の「醫海求源」三卷は懶翁の小引より一七八二年の成立。先哲醫家の格言四七五章を九篇に分類し、各々に説明を加える。

R.1081 卷六
 刊本一册一〇〇葉、ベトナム六鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・六×幅一五・二㎝。帙なし。外題ほかなく、書根・天邊に「玄牝發微」を縱書き墨書。書頭に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領全帙卷之六」と題し、無名氏(懶翁)・無記年の小引一葉半に先天腎氣と六味・八味丸の重要性を述べる。目錄一葉あって、先天太極圖説・人身中太極圖説・先天論~六味變法・合用最宜藥品・百病兼治・錦囊增損十二法・錦囊八味治案の三六目を記す。卷頭に「玄牝發微卷/海上懶翁黎氏纂輯/後學唐郿武春軒奉較」と題し、以下本文は先天太極圖説から始まる。第四一葉ウラ八味變法以下の五行を未刻墨丁に作り、第一〇〇葉書末に「舎龍寺沙門奉書/玄牝發微卷終」と記す。卷末に醵金者名なし。跋・識語なし。漢文書で、書中の篇名・方名を多く陰刻白字に作る。料紙は中葉ゾー紙で、輕く黃變する。有界、四周(一部左右)雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、魚尾閒に「玄牝發微卷 篇名 通卷葉次」を刻す。每半葉匡郭、縱一九・〇×横一二・三㎝、八行・行二一字、小字雙行・行二一字。一九世紀刊本で、字體は明正統版に似る。稍後印。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。一部に朱點あり。蟲損・破損なし。
 當卷六「玄牝發微」は先天腎氣・水火の醫論と六味・八味丸の方論を記す書で、趙獻可『醫貫』(一六一七初版)の圖も含めた影響が大きい。當卷の具体的成立年は未詳。

R.1082 卷七
 刊本一册六四葉、ベトナム六鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・六×幅一五・二㎝。帙なし。外題ほかなく、書根・天邊に「坤化採眞」を縱書き墨書。書頭に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領坤化採眞全帙卷之七/海上懶翁黎氏纂輯 後學唐郿武春軒奉較」と題す。次に無記年の懶翁小引一葉あって、脾胃後天氣血の重要性を述べ、先天水火の「玄牝發微」卷に續けて當卷を編纂したと記す。目次一葉あって、後天文王卦位圖説・身中後天圖説・後天論~人參養榮湯・養榮奉旨・養榮加減・錦囊變法を記す。卷頭に內題なく、本文は後天文王卦位圖説から始まる。六四葉書末に「舎龍/沙門奉書/坤化採眞卷終」と記し、卷末に醵金者四名あり。跋・識語なし。漢文書で、書中の篇名・方名を多く陰刻白字に作る。李東垣の説を中心に、朱丹溪・立齋(薛己)・節庵(陶華)・寶鑑(羅天益『衞生寶鑑』)ほかを引用する。料紙は中葉ゾー紙で、輕く黃變する。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、魚尾閒に「坤化採眞卷 篇名 通卷葉次」を刻す。每半葉匡郭、縱一九・九×横一二・六㎝、八行・行二一字、小字雙行・行二一字。一九世紀刊本で、字樣は明正統版に似る。後印で文字不鮮明多し。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。一部に朱點あり。蟲損・破損なし。
 當卷七「坤化採眞」は後天の脾胃氣血の醫論と、補中益氣湯・四君子湯・四物湯・八珍湯・十全大補湯・歸脾湯・人參養榮湯の加減も含めた方論を記し、李東垣流の書。卷六に續けての編纂だが、具体的成立年は未詳。

R.1083 卷八
 刊本一册五三葉、ベトナム六鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・七×幅一五・〇㎝。帙なし。外題ほかなく、書根・天邊に「導流餘韻」を縱書き墨書。書頭に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領全帙卷之八/導流餘韻卷 小引」と題す。この無記年の懶翁小引二葉では、「劉・張・朱・王太僕・立齋・景岳・馮氏諸先輩」の論に補遺すると述べる。目次一葉あって、醫理醫意論・論人身中有一太極~論單熱亡陰危人甚速幷治法を記す。卷頭に「導流餘韻卷 海上懶翁黎氏纂輯/後學唐郿武春軒奉較」と題し、本文は醫意醫理論から始まる各種の醫論。論中には『雷公炮炙』『伊贄(尹)湯液』『難經』・仲景『傷寒』・士安『甲乙』・啓玄子・錢仲陽『診脈』・李辰(時)珍『本草綱目』に言及し、劉河閒・『醫學正傳』『景岳』『(壽世)保元』『醫要(集覽?)』『簡易(方論?)』『士林三書』『醫宗説約』などを引く。二七・五〇葉に趙氏『醫貫』を引き、五三葉書末に醵金者一〇名あって「導流餘韻終」と記す。跋・識語なし。漢文書で、書中の篇名・方名を多く陰刻白字に作る。三六~四五葉のみ明朝體で匡郭大、他葉は正統に似た字樣。料紙は中葉ゾー紙で、輕く黃變する。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、魚尾閒に「導流餘韻卷 通卷葉次」を刻す。每半葉匡郭、縱二〇・三×横一二・七㎝、八行・行二一字、小字雙行・行二一字。一九世紀刊本、後印で文字不鮮明多し。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。一部に朱點あり。蟲損・破損なし。
 當卷八「導流餘韻」は、各書で論じられてきた醫理・病理・治法ほかの問題について、懶翁の意見を記した醫論の書。具体的成立年は未詳。

R.1084 卷九
 刊本一册六八葉、ベトナム六鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・八×幅一五・二㎝。帙なし。外題ほかなく、書根・天邊に「運氣祕典」を縱書き墨書。書頭に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領運氣祕典全帙卷之九/海上懶翁黎氏纂輯 唐郿武春軒奉較」と題す。黎朝景興四十七歳(一七八六)孟春中浣就稿の懶翁小引二葉に、幼少時に兵亂を避けて懽州で學び、五運六氣に目覺めた、と述べる。次に學易而後醫論・集例三葉あり、目次一葉に望氣説・風旗式・渾天方位占雲圖~地以五制之圖・運氣論を記す。本文は望氣説から始まり、五運六氣などの各種圖説・論・歌あり。六八葉書末に「運氣祕典終」と記し、醵金者名なし。跋・識語なし。漢文書で、書中の篇名を多く陰刻白字に作る。料紙は中葉ゾー紙で、輕く黃變。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、魚尾閒に「運氣祕典 通卷葉次」を刻す。每半葉匡郭、縱一九・七×横一二・八㎝、八行・行二一字、小字雙行・行二一字。一九世紀刊本、正統に似た字樣。後印で文字不鮮明多し。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。一部に朱點あり。蟲損・破損なし。
 當卷九「運氣祕典」は運氣論の書で一七八六年の成立。

R.1085 卷一〇
 刊本一册六三葉、ベトナム六鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・八×幅一五・二㎝。帙なし。外題に「藥品上卷」、書根・天邊に「海上藥品上卷」を縱書き墨書。書頭に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領全帙卷之十/藥品彙要上 小引」と題す。無記年の懶翁小引一葉に「神農三品一千八百九十二種」「潔古珍珠囊百品」「丹溪七十二品」といい、この編では百五十品を氣味效能で五行每部三十品に分類すると述べる。次に目次二葉に五味論・藥品陰陽辨・三治論・始因論・藥身根梢辨・水火製造法…の總論と、火部(肉桂・大附~琥珀・燈心)・木部(當歸・白芍~龍膽草・麻黃)・土部(白朮・茯苓~草菓・檳榔)・金部(人參・黃耆~瞿麥・香需)・水部(生地・鹿茸~紫河車・包衣水)の各論の項目を記す。集例では『錦囊藥性』を中心に、『景岳』『頤生』『入門』『雷公炮炙』『本草剛(綱)目』も參合したと述べる。本文各論は火部・肉桂からで、藥名以下に品種・品質・氣味・歸經・七情、また主治・合用・禁用・製法の項目を立てて記載し、末尾に藥論あり。第六三葉の書末は木部の龍膽草・麻黃・麻黃根までで、「藥品上卷終」と記し、醵金者名なし。跋・識語なし。漢文書で、書中の藥名・項目名を多く陰刻白字に作る。料紙は中葉ゾー紙で、輕く黃變する。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、魚尾閒に「藥品上 藥名 通卷葉次」を刻す。每半葉匡郭、縱一九・九×横一二・九㎝、八行・行二一字、小字雙行・行二一字。一九世紀刊本、明正統版に似た字樣。後印で文字不鮮明多し。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。一部に朱點あり。蟲損・破損なし。

R.1086 卷一一
 刊本一册八一葉、ベトナム六鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・八×幅一五・二㎝。帙なし。外題に「藥品下卷」、書根・天邊に「海上藥品下卷」を縱書き墨書。目錄なし。書頭に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領全帙卷之十一/藥品彙要下 土部」と題し、以下は土部の白朮・白茯苓から水部の紫河車・包衣水まで記す。記載形式は卷一〇に同じ。第八一葉の書末に「藥品下卷終」と記し、以下に醵金者一一名を列記。跋・識語なし。漢文書で、書中の藥名・項目名を多く陰刻白字に作る。料紙は中葉ゾー紙で、輕く黃變する。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、魚尾閒に「藥品下 藥名 通卷葉次」を刻す。每半葉匡郭、縱二〇・二×横一二・四㎝、八行・行二一字、小字雙行・行二一字。一九世紀刊本、嘉靖~萬曆初期に似た字樣。後印で文字不鮮明多し。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。一部に朱點あり。蟲損・破損なし。
 當卷一〇・一一「藥品彙要上・下」二卷は一五〇藥を收める本草書で、五行の火部・木部・土部・金部・水部に各三〇藥を分類するのは、中國ほかに見えない獨特な發想。馮兆張『馮氏錦囊祕錄』全八書・五〇卷(一六九四自序、一七〇二初版)中の『雜證痘疹藥性主治合參』一二卷を主に、『景岳全書』『頤生微論』『醫學入門』『雷公炮炙論』『本草綱目』も參照するが、博物記載は少ない。具体的成立年は未詳。

R.1087 卷一二・一三
 刊本一册五七+五六葉、ベトナム六鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・八×幅一五・二㎝。帙なし。外題に「嶺南本草」、書根・天邊に「海上嶺南本草/上卷與下卷」を縱書き墨書。卷一二の書頭に序・目錄なく、「藥品南名氣味正治歌括 附製造」とのみ題す。以下の原草部(六二種)は貫衆・黃精・柴胡…の順で、漢名・南名(字喃)・氣味・毒・主治・加工法・一名を一部小字雙行の漢文二~三行で記す。原草部以下は同樣に、藤草一七、水草六、穀一九、菜四六、菓四八、木四二、蟲三二、鱗八、魚三五、甲六、介一三、禽三九、水鳥一二、六畜二六、野獸三六、水一〇、土一四、金一一、石七、鹵四、人六を收める。末尾の第五七葉には人糞・童小便・乳汁があり、「嶺南本草上卷終」と記す。版心の魚尾閒に「嶺南本草上 葉次」を刻す。次に目錄なく、「新刊海上懶翁全帙卷之十三」と題し、以下は黃柏・黃精・黃力・蒲黃・黃蠟・黃樓・白蘇・白力…の順で、「詩曰」に續けて漢名・南名(字喃)氣味・主治・加工・七情ほかを三~四行の漢喃文で記す。記載は藥名中の色で黃・白・赤・紫・紅・黑・青・烏の順、次に藥名中にある花・果・仁・根・木・皮・子・葉・藤・草・香(他に香氣あるもの)・石(他に砂・土など)・山・天・姜の順、次に穀・金銀・獸・蟲・屎尿・菜・瓜・液體・蔕・枳・分類不詳物の順に記す。末尾の第五三葉は寄生・蕪荑の順で、「本草下卷終」以下に醵金者名四名を列記。第五四~五六葉は版心に「本草拾遺下」とあり、漢藥の南名を列記する。料紙は中葉ゾー紙で、輕く黃變する。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、魚尾閒に「嶺南本草下(本草拾遺下) 通卷葉次」を刻す。
 當卷一二・一三「嶺南本草上・下」二卷は藥性を主とする簡便な本草書。卷一二は(傳)慧靖原著『〔新刊〕南藥神效十科應治』(一七六一初版?)の首卷にほぼ基づき、一部に削補がある。卷一三末尾の「本草拾遺下」も『南藥神效』首卷末尾の「本草拾遺」に基づくが、相當に增補している。兩卷に懶翁の小引がないことからしても、懶翁の著とは考えられない。卷一三の藥名共通文字による分類配列は中國ほかに見えない獨特な發想で、漢喃研究所VNv.231『南藥指名傳』中の「新撰各味主藥性藥炮製忌及新陳性詩等五色門」に同類の配列が見える。

R.1088 卷一四
 刊本一册八九葉、ベトナム六鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・八×幅一五・〇㎝。帙なし。外題なく、書根・天邊に「外感通治」を縱書き墨書。卷一四の書頭「新鎸海上醫宗(缺筆)心領全帙卷之十四」と題す。以下に御醫正・蔡黙齋の無記年「小引序」一葉強あって、景興癸亥(一七四三)年に筆峰道人らに會った時、座中の一人に懶翁の「外感通治」一卷を示され、醫家が勝覽すべき書なので數言を序す、と記す。目錄二葉あって、上篇に心得論・論我嶺南無傷寒症~論我嶺南麻黃桂枝湯絶不可用~辨一症之中有虛有實、中篇に辨可汗症・辨不可汗症~辨汗多本是…、下篇に論諸虛症補法・論諸虛症用方~五臟苦欲補寫論を記す。內題に「外感通治 上篇/海上懶翁黎氏纂輯 後學唐郿武春軒奉較」と記す。以下は目錄通りで、外感に關する醫論と治法が第三四葉までの上篇に二五論、第五三葉までの中篇に八論、書末第八九葉までの下篇に二二論あり。見出し方名の多くを陰刻する。書末に「外感通治卷終」と記し、末尾に醵金者四名を列記。料紙は中葉ゾー紙で、輕く黃變する。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、版心魚尾閒に「外感通治 上(中・下)篇 葉次」を刻す。全書に朱點あり、蟲損・破損なし。
 當卷一四「外感通治」上中下篇は、傷寒を主とした外感病の論と治法・醫案の書で、中國とは異なるベトナム化した治療を論じる。「心得論」では『醫學入門』を五年間學び、傷寒を研究したという。「論我嶺南無傷寒症…」ではベトナムに傷寒がなく、冬に感寒、春夏秋に感冒時氣があるのみといい、ベトナムで強く發汗すると陰虛となるため「論我嶺南麻黃桂枝湯絶不可用」という。また隨處で外感症での補法、とくに補陰を強調し、ベトナムの氣候に對應した治療をいう。ただし懶翁は『傷寒論』自體を明らかに見ていない。當卷には懶翁の自序がなく成立年未詳。なお蔡黙齋「小引序」に記す景興癸亥(一七四三)年は他の懶翁の著述年より早すぎ、何かの錯誤があるように思える。「小引序」の記述からすると懶翁の沒後らしく、あるいは嘉隆癸亥(一八〇三)か。

R.1089 卷一七・一八(卷一五・一六・一九~二四を缺き、未刊か)
 刊本一册五八+五九葉、ベトナム六鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二四・八×幅一四・五㎝。帙なし。外題なく、書根・天邊に「海上卷/十七十八/百病機要」を縱書き墨書。序なく、書頭に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領全帙卷之十七/百病機要丙卷 目次」と題し、積聚・蟲病・痔瘻・霍亂・泄瀉・痢疾・脱肛・燥結の篇名を記す。續く本文は積聚條に審機・別症・虛實・吉凶・治法・用藥・方劑加減を記し、目錄通りの篇名が卷末の第五八葉まである。次卷は「新鎸海上醫宗(缺筆)心領全帙百病機要丁卷之十八/海上懶翁黎氏纂輯 後學唐郿武春軒奉較」と題す。續けて目次あり、關格・噎塞痞滿悶・呃逆・嘔吐・噯氣・呑酸吐酸・噎膈翻胃・血病の篇名。續く本文は關格條に審機・別症・虛實・吉凶・治法・處方・用藥を記し、目錄通りの篇があり、卷末は第五九葉まで。見出しと方名の多くを線で圍み、陰刻にはしない。書末に「百病機要丁卷終」と記し、末尾に醵金者五名を列記。料紙は中葉ゾー紙で、輕く黃變する。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、版心魚尾閒に「機要丙(丁)卷 篇名 葉次」を刻す。全書に朱點・朱引きあり、蟲損・破損なし。
 當卷一七・一八「百病機要丙卷・丁卷」は消化器疾患の病門別に記す論と治法の書。成立年は未詳。なお當書は卷一五・一六の「百病機要甲卷・乙卷」を缺く。本書首卷の總目錄は卷一五に「百病機要集甲」、卷一六に「百病機要集乙」を記すのみで、當二卷に對する「一七卷 百病機要集丙 自積聚/至燥結 該八目」「一八卷 百病機要集丁 自關格/至血病 該八目」の如き細目が記されない。調査した他の全現存本および現存版木も均しく卷一五・一六を缺くので、未刊の可能性が高い。また總目錄に記す本書卷一九~二四「百病機要戌~癸」も同じ情況で缺卷しており、未刊だったらしい。これら缺卷のゆえ、首卷にある唐郿武春軒の原引末尾に、「目今參訂、攷究編寫、成書已得十之七八。…其所未備者、請質諸君子」と記されるのだろう。このため「百病機要」が本來幾卷で如何なる內容だったかは分からない。ただし首卷凡例の提要に「百病機要集は諸家の各病門を選取し、別けて審機・別症・虛實・吉凶・治法・處方・用藥となし、以て一覽に便す」とあり、卷一七・一八の記載と一致するので、各科病門別の論と治法の書だったことは閒違いない。

R.1090 卷二五
 刊本一册四六+附存一三葉、ベトナム六鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・四×幅一五・一㎝。帙なし。外題なく、書根・天邊に「醫中關鍵」を縱書き墨書。書頭に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領全帙卷之二十五」と題し、景興四一年(一七八〇)の海上懶翁「小引」一葉あって、臨床二〇年という。次に目次一葉半あって、中風・中寒・中暑・中濕~厥症・跌撲損傷・癘風を記す。卷頭に「醫中關健卷/海上懶翁黎氏纂輯/後學唐郿武春軒奉較」と題し、以下は中風から目錄通りの病門あって、各々について論・治法の重要點を簡潔に第四六葉まで記す。末尾に「醫中關健卷終/光義/敬書」あって、以下に醵金者一〇名を列記。以上は書頭の小引から通し葉次。次に別葉次で「附四海論」と題し、五臟虛實論治・臟病皆補腎論・六腑所主見症虛實治法~五臟熱病用藥大概・論治幷方目(馮先師)・危候死症が第一三葉まであり、以下を缺く。料紙は中葉ゾー紙で、輕く黃變する。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、版心魚尾閒に「醫中關健卷 篇名 葉次」を刻す。刻字は明朝體に似る。全書に朱點あり、蟲損・破損なし。
 當卷二四「醫中關鍵」は各病治療の要點・奧義で、一七八〇年の成立。「鍵」を「健」とも記すのは避諱か。附錄の「四海論」は當卷と關聯が少なく、何かの混亂が想像される。

R.1091 卷二六
 刊本一册六三葉、ベトナム六鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・四×幅一五・一㎝。帙なし。外題なく、書根・天邊に「海上婦科/二十六/前卷」を縱書き墨書。書頭に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領全帙卷之二十六」と題し、無記年の黎氏別號懶翁「小引」一葉あり。次に「皇朝嗣德萬萬年歳次庚辰三十三年(一八八〇)正月吉日刻/板留同人寺」の刊記あり。次に凡例半葉あり、一に『錦囊』全篇に基づいて審機・別症・虛實・治法・處方・用藥增損を記し、『景岳』『醫學入門』『濟陰綱目』『婦人良方』『簡易』『士材』『薛氏醫案』『古今醫鑑』『準繩』も參照したと記す。また前卷目次に月經總論・經病條・崩漏條~受胎總論・驗胎脈、後卷目次に胎前條・胎前雜症條~玉門不閉・乳疽までを第四葉まで記す。第五葉卷頭に「婦道燦然集前卷/海上懶翁黎氏纂輯/後學唐郿武春軒奉較」と題し、以下は月經總論から目錄と凡例通りの諸篇あり。第六三葉の書末に「嗣德三十三年九月十五日刊」の刊記あり、以下に醵金者六名を記す。料紙は中葉ゾー紙で、輕く黃變する。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、版心魚尾閒に「婦道卷 篇名 葉次」を刻す。刻字は明朝體に似る。全書に朱點あり、蟲損・破損なし。

R.1092 卷二七
 刊本一册七五葉、ベトナム六鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・四×幅一五・一㎝。帙なし。外題なく、書根・天邊に「海上婦科/二十七/後卷」を縱書き墨書。書頭に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領全帙卷之二十七/婦道燦然集後卷/目次」一葉半あって、胎前條・胎前雜症條(惡阻~胎孕變常紀)・臨産條・産後條・産後雜症條(血彙~玉門不閉・乳疽)までを記す。ウラに「皇朝嗣德萬萬年歳次庚辰三十三年(一八八〇)正月吉日刻/板留同人寺」の刊記あり。卷頭に「婦道燦然集後卷/海上懶翁黎氏纂輯/後學唐郿武春軒奉較」と題し、以下は胎前條から目錄通りに諸篇あり、卷二六と同樣に記す。第七五葉の書末に醵金者多數を記し、末尾に「婦道後卷終 靈山監院苾芻戒法名清義奉書」と記す。料紙は中葉ゾー紙で、輕く黃變する。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、版心魚尾閒に「婦道後卷 篇名 葉次」を刻す。刻字は明朝體に似る。全書に朱點あり、蟲損・破損なし。
 當卷二六・二七の「婦道燦然集前後卷」二册は婦人諸病および産前産後の論治書で、成立年未詳、一八八〇年正月から九月の所刊。引用漢籍では婦人科の專書より、『錦囊祕錄』『景岳全書』『醫學入門』を重視する點が注目される。

R.1093 卷二八
 刊本一册五八葉、ベトナム六鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・四×幅一五・一㎝。帙なし。外題なく、書根・天邊に「海上婦科/二十八/良模」を縱書き墨書。書頭に寫刻體で無記年の黎氏別號海上懶翁「新鎸海上醫宗(缺筆)心領全帙卷之二十八/坐草良模卷 原引」一葉あり、資生・胚胎の重要性を述べ、臨産の危急のために門目を分かりやすく配列したという。次に目次一葉に産訓・産難・治要~産家備用方・附算胎法あって、末尾に「皇朝嗣德萬萬歳之三十三年庚辰(一八八〇)正月吉日新刻/板留北寧省慈山府武江縣大壯社同人寺」の刊記あり。卷頭に「坐草良模卷/海上懶翁黎氏纂輯/後學唐郿武春軒奉較」と題す。以下は産訓から目錄通りに諸篇あり、篇名を陰刻する。第五八葉の書末に醵金者なく、末尾に「坐草良模卷畢/清義/敬書」と記す。料紙は中葉ゾー紙で、輕く黃變する。有界、四周雙(單)邊、版心白口・雙內向黑魚尾、版心魚尾閒に「良模卷 篇名 葉次」を刻す。刻字は明朝體に似る。全書に朱點あり、蟲損・破損なし。
 當卷二八は産科の方論專書。一八八〇年刊、成立年は未詳。

R.1094~1097 卷二九~三二
 各卷一册は「幼幼須知」の金卷・木卷・土卷・水卷だが、時閒の都合で調査を割愛。

R.1098 卷三三
 刊本一册七九葉、ベトナム六鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・六×幅一五・二㎝。帙なし。外題ほかなく、書根・天邊に「海上幼集/火卷/三十三」を縱書き墨書。書頭に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領全帙卷之三十三」と題し、火卷目次半葉あって總論・辨源論化機論~榮養心肝方・調補脾肺方・兒科列方の一〇項目を記す。ウラに序的短文あって「樂生篇曰、天厚於人…製篇命額、聊以形容/黎氏別號懶翁撰/板留在武江縣大壯社同人寺」を記す。卷頭に「幼幼須知火卷/海上懶翁黎氏纂輯/後學唐郿武春軒奉較」と題し、以下本文は目錄同樣に總論から始まる。前半は小兒の醫論、後半は治方の主治と各病症の增損を第一九葉オモテまで記す。第一九葉ウラに「以上四方增損用藥、皆余之經驗…」と書き出し、第二〇葉ウラまで小兒治療の要点を述べ、末尾に「樂生篇終」と記す。以下は兒科諸方で二三七方の方名・藥味・用量・調劑法を列記し、第七九葉の「二百三七鎮心丸」まで。末尾に「火卷終」を記し、卷末に醵金(梓木も)者五名あり。跋・識語なし。漢文書で、書中の方名には番號をふる。料紙は中葉ゾー紙で、輕く黃變する。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、魚尾閒に「火卷 篇名 通卷葉次」を刻す。每半葉匡郭、縱二一・八×横一二・五㎝、八行・行二三字、小字雙行・行二三字。一九世紀刊本で、字樣は明正統~嘉靖版に似る。稍後印。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。一部に朱點あり。蟲損・破損なし。
 卷二九~三三の「幼幼須知」五卷は小兒科の論と治法の書で、五行で分卷する。これは卷一〇・一一の「藥品彙要」で收載藥を五行で分類するのと同じで、懶翁の獨特な發想を示す。卷二九にある懶翁「小引」に記年なく成立は不詳だが、多くは一八八〇年の刊記がある。なお卷三三の第二〇葉までを懶翁は「樂生篇」と呼び、これを首卷凡例では「自家心法爲樂生篇」と記す。ベトナムの古醫籍名や篇名には「樂生」がいくつかあり、小兒のベトナム表現らしい。

R.1099 卷三四・三五
 刊本一册五一+四七葉、ベトナム六鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・五×幅一五・〇㎝。帙なし。外題ほかなく、書根・天邊に「覺痘甲乙卷」を縱書き墨書。書頭に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領全帙卷之三十四」と題す。以下は第三葉オモテまで懶翁「夢中覺痘卷 小引」あり、依安縣阮舎社に住んでいた戊寅年(一七五八)に五歳の息子が痘瘡になり、二人の醫者にかかったが死に、のち醫を一五年學んで本書を著したと記す。また第五葉オモテまで凡例あり、本書一〇卷は『錦囊祕錄』を提綱、『景岳全書』を顯實、また『救偏瑣言』『保赤全書』『萬氏家藏』『痘疹心法』『痘疹金鏡錄』『痘疹玉髓』『壽世保元』『醫學入門』も參照と記す。さらに本書を十干で甲~癸卷に配し、各卷の提要を各二行で記す。次に甲卷目次あって、總論・看痘・面部圖~驗凶症・驗死症・日數歌までを記す。第七葉卷頭に「夢中覺痘甲卷/海上懶翁纂輯/後學唐郿武春軒奉較」と題す。以下本文は總論から始まり、陰刻の項目が目錄同樣にあって、第五一葉の「甲卷終 靈山監阮苾芻清義奉書」まで。卷末に醵金者九名あり。跋・識語なし。次に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領全帙卷之三十五/夢中覺痘乙卷/目次」あって、脈法・治法總論~諸忌名目・避穢諸法を記す。卷頭に「夢中覺痘乙卷/海上懶翁纂輯/後學唐郿武春軒奉較」と題す。以下本文は脈法から始まり、陰刻で項目を目錄同樣に記す。書末は第四七葉で、末尾に「乙卷終」とある。漢文書。料紙は中葉ゾー紙で、輕く黃變する。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、魚尾閒に「甲(乙)卷 篇名 通卷葉次」を刻す。每半葉匡郭、縱二〇・二×横一二・八㎝、八行・行二一字、小字雙行・行二一字。一九世紀刊本で、字樣は明正統~嘉靖版に似る。稍後印。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。一部に朱點あり。蟲損・破損なし。
 本書「夢中覺痘」全一〇卷(『醫宗心領』卷三四~四三)は痘瘡の專書で、自序から一七七三年前後の成立と分かる。他機關の別本によれば卷三六丙卷目次末行に嗣德三四年(一八八一)の刊記がある。
 國家圖書館の當本では『醫宗心領』卷三六~六〇を缺き、卷六一から存する。ついては缺卷部分の提要を首卷凡例から以下に拔粹しておく。卷四四「麻疹準繩集。諸家の方法を撰じ、己の經驗・訓誡を附す」。卷四五「心得神方集。先師馮氏『錦囊』中の新製祕方を奉じ、方意を註解して學ぶ者をして奧妙を深明せしむ」。卷四六「傚倣新方集。余、危症の變幻百出に方なく法ずべきものと、その病ありてその藥なきものに臨む每に曲盡精思せざるを得ず、別に方法を立て、以て緩急に應酬す。幸い病の去ること甚速を得ば、仍りてこれを存し、以て未だ備わざるに備う」。卷四七~四九「百家珍藏集。余、外祖公傳家祕方を奉じ、また識友を遍求して日增月積したるを門類に別分し、每に醫の手を束ぬる處に屢ば奇效を建つこと補わざるをなさず」。卷五〇~五七「行簡珍需集。本草の諸單方、およそ南北の藥品に便あり、通用簡易すべきものを略取し、以て躻傯に應酬す。八卦の名目を以て列し、以て査究に便す。最愛すべくは眼前の草木、皆く通ず」。卷五八~六〇(卷五八のみ存し、刊行は當卷のみか)「醫方海會集。諸家の方書を取り、湯丸の重なるは削り、缺くは增し、日の一卷をなし、條目を照らし分け、以て一覽に備う」。

R.1110 卷六一・六二
 刊本一册五二+四五葉、ベトナム六鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・五×幅一四・五㎝。帙なし。外題ほかなく、書根・天邊に「陽案陰案」を縱書き墨書。書頭に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領陽案全帙卷之六十一/海上懶翁黎氏纂輯 後學唐郿武春軒奉較」と題す。無記年の懶翁小引一葉あって、自分はもと儒家だったが兵亂のため母籍の香山に逃れ、雲水との緣で醫に入り、僅かに效驗あった醫案を一身一家の龜卜のために集めたという。次に目次半葉あって、消渴案・陰虛頭痛案・妊娠霍亂案~脇痛脹悶案・關格案・産難案までを記す。本文頭に題なく、陰刻の項目が目次同樣に消渴案から始まり、第五二葉に「醫陽案卷終(陰刻)」を記す。卷末に醵金者名あり。跋・識語なし。次に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領全帙陰案卷之六十二/海上懶翁黎氏纂輯 後學唐郿武春軒奉較」と題す。無記年の懶翁小引一葉半あって、儒から醫に轉じて十餘年といい、醫に志す後の君子のために活人の「陽案」以外に不治の「陰案」一卷を述べ、「醫病、不醫命」説への反論とするという。目次半葉に陰亡陽竭案・傷暑單熱亡陰案~氣血倶虛痘案・虛癆案を記す。本文に題なく、陰刻の項目が目次同樣にある。書末第四五葉に醵金者五名あり、末尾に「醫陰案卷終 山陽太保院弟子奉書」と記す。漢文の書。料紙は中葉ゾー紙で、輕く黃變する。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、魚尾閒に「陽(陰)案卷 篇名 通卷葉次」を刻す。每半葉匡郭、縱二〇・〇×横一二・七㎝、八行・行二一字、小字雙行・行二一字。一九世紀刊本で、稍後印。字樣は明正統版に似る。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。一部に朱點あり。蟲損・破損なし。
 當卷六一・六二は懶翁自身の效驗と不治の醫案集で、雙方とも病症・診斷・治法・變遷ほかを詳細に記す。自序からすると一七七〇年頃の成立で、刊年は不詳。當本首卷の總目錄は兩者を卷五九と六〇と記すが、修刻後印本の首卷目錄では卷六一・六二に作る。

R.1111 卷六三
 刊本一册四七葉、ベトナム六鍼眼裝。黃色中手表紙、書高二七・〇×幅一五・六㎝。帙なし。外題ほかなく、書根・天邊に「懶翁格言上下/參柒之/參拾陸」を縱書き墨書。書頭に「新鎸海上醫宗(缺筆)珠玉格言卷六十三」と題する。以下に無記年の懶翁小引一葉あって、この上下二卷を讀んだ客人が「珠玉格言篇」と題したと記す。目次なく、本文頭に「珠玉格言上篇 珠玉格言下篇」と題す。上篇は命門の火と六味丸・八味丸の説から始まり、陰陽虛實・藏象・藥性・四診・治法・病理・醫方・調劑・禁忌などに對する懶翁の格言と論を第二〇葉オモテまで記す。第二〇葉ウラに「珠玉格言下篇」と題し、以下は直接本文で上篇同樣に醫藥(人乳・鹿角・人參の藥論、製藥法など)の格言と論が第四三葉まである。第四四葉に「附錄傳心祕旨補遺」と題し、書末四七葉まで吐瀉の治法と加減を記す。卷末に醵金者名なし。跋・識語なし。漢文の書。料紙は薄葉ゾー紙で、輕く黃變する。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、魚尾閒に「珠玉上篇(下) 通卷葉次」を刻す。每半葉匡郭、縱一九・九×横一二・七㎝、八行・行二一字、小字雙行・行二一字。一九世紀刊本で、字樣は嘉靖萬曆閒の坊刻版に似る。先印で文字鮮明。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)と不詳の藏印記。朱點ほかなし。やや蟲損あり、破損なし。
 當卷六三は懶翁自身の經驗を踏まえた醫療全般の精髓を集約した書。附錄の補遺からしても、「傳心祕旨」が本來の書名だったらしい。第二七葉の「治傷寒以救陰爲主。寒能泣血、血虛而久熱」「治中風以壯水爲先。風先入肝、肝虛則筋急」の格言は、傷寒・中風にも補陰を強調していて獨特。これは吳有性『溫疫論』の發展といえ、何かの閒接的影響があるかもしれない。當本首卷の總目錄は醫陰案・醫陽案の後の卷六一(修刻後印本では六三に作る)に「傳心祕旨」を配し、首卷凡例では「傳心祕旨集。凡書中之義理精髓、辯論詳悉庶得、爲擇術之精焉」と記す。また修刻後印本の首卷總目錄では尾卷の上方に「卷六四 問策集」を補刻するが、現存する本書に當卷は見あたらず、未刊に終わったらしい。ベトナムで「問策」は「策問」とも書き、設問に答える形式の小論文なので、問は文、策は作に通じるかもしれない。

R.1112 卷之尾
 刊本一册九七葉、ベトナム四鍼眼裝。黃色中手表紙、書高二七・〇×幅一五・五㎝。帙なし。外題ほかなく、書根・天邊に「懶翁記事/被召至放歸/參柒之參柒」を縱書き墨書。書頭に「新鎸海上醫宗(缺筆)心領全帙上京記事卷之尾/海上懶翁黎氏纂輯 後學唐郿武春軒奉較」と題す。以下に景興甲辰(四五)年(一七八四)の蕉山居士號小竹齋序一葉半あって、友人から懶翁心領一帙を授けられ、その末尾に學醫二〇年の懶翁が敕命で壬寅年(景興四三、一七八二)に護衞兵つきで上京して王に湯藥を奉じ、諸官と詩文を交わした「上京記事」があり、これに序す、と記す。以下は一七八二年一月一二日から始まる懶翁の日記風記事で、本名は黎有卓、母籍の香山縣情艶社に居住と記す。あとは上京途中、王・皇后ほか諸人の治療、詩文の交換、翌年一一月二日に歸郷するまでの詳細を、會話まで記錄した記事が續く。文中に醫道三〇年を集成した心領一帙を私傳せず、上京を機會に世に公開したいと記す。末尾の第九七葉オモテに「皇朝景興四十四年癸卯(一七八三)仲冬記〔上京記事終〕」と記し、ウラは白紙。卷末に醵金者名なし。跋・識語なし。大部分は漢文の書。料紙は薄葉ゾー紙で、輕く黃變する。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、魚尾閒に「記事尾卷 通卷葉次」を刻す。每半葉匡郭、縱二〇・一×横一二・七㎝、八行・行二一字、小字雙行・行二一字。一九世紀刊本で、字樣は序文のみ明朝體で、本文は明の正統~嘉靖版に似る。先印で文字鮮明。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)と不詳の藏印記。朱點ほかなし。やや蟲損と破損あり。
 當卷之尾は懶翁が王(顯宗)の治療に召され、昇龍(ハノイ)に上京し、歸郷するまでの約二年閒を日記に基づき記錄した書。成立は序の一七八四年、刊年は未詳。この時までに集成していた『醫宗心領』も携行しているので、上京を機會に本書の傳寫本が作成され、出版前から一部に流布したと推測される。

R.1113(首卷目錄部分)     
R.1113~1172(〔新鎸海上懶翁〕醫宗心領全帙)
 多數のためR.1148のみ調査。刊本一册七九葉、ベトナム包背原眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二四・四×幅一四・五㎝。帙なし。外題・背記ないが、天邊・書根に「海上卷/三十三/幼幼須知」を縱書き墨書。目錄半葉に「新鐫海上醫宗心領全帙卷之三十三/火卷目次」と題し、總論・辨原論~調補脾肺方・兒科列方あり。裏に「樂生篇曰、天厚於人…以形容/黎氏別號懶翁撰」の類序あり、末尾に「板留在武江縣大壯社同人寺」。卷首に「幼幼須知火卷/海上懶翁黎氏纂集/後學唐郿武春軒奉較」と題し、以下本文。第二〇葉末尾に「樂生篇終」、第二一葉に「兒科諸方 該二百三十七方」と記し、各方は方名上に通し番號あり。卷末に醵金者五名と金額を列記し、內二名は「梓木一株」も寄附する。漢文の書。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、全體にやや黃變する。有界、四周雙邊、版心白口・雙內向黑魚尾、魚尾閒に「火卷 篇名 葉次」を刻す。每半葉匡郭、縱二一・七×横一二・五㎝、八行・行二三字、小字雙行・行字。一九世紀の刊本。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れ等なし。蟲損なく、破損。
 R.1148は『醫宗心領』小兒科部分「幼幼須知」末尾の卷三三。

R.1133(〔新鎸海上懶翁〕醫宗心領全帙)
  ウェブ畫像による。刊本で卷一二・一三。

R.1704(〔海上懶翁〕心傳秘決新書)
 「海上懶翁卷之壹心傳秘決新書/珠玉格言篇上」と題する書末を缺く寫本で、本書刊本卷六三に該当する。時閒の都合で他事項の調査を割愛。

R.4810(〔新鎸海上懶翁〕醫宗心領全帙)
 刊本卷五。時閒の都合で他事項の調査を割愛。ウェブ畫像あり。

(馮氏錦囊秘錄雜症)
 ウェブ畫像による。道光壬寅年(一八四二)の廣東・福文堂刊本。R.5813(舊R.1902)一册に序・凡例・目錄・卷首上下、R.5814(舊R.1904)一册に卷一・二、R.5740(舊R.1534)一册に卷三・四、R.5809(舊R.1906)一册に卷五、R.5815一册に卷七・八あり。
 本書は清・馮兆張の醫學叢書『馮氏錦囊秘錄』の一部『雜症大小合纂』で、目錄では卷二〇と附錄まである。他の卷六と九以降の存否は未詳。

R.5741(舊R.1553、痘疹全集)
 ウェブ畫像による。刊本一册一三七葉。内封に「浙江馮椘瞻纂輯/痘疹全集/〔佛山〕文華閣藏板」とあり、佛山は廣州に隣接する廣東の地名。本書は馮兆張著『馮氏錦嚢秘録痘疹全集』一五卷の清末版で、序・目錄・卷一~二を存する。

(馮氏正宗)
 ウェブ畫像による。ウェブ畫像で卷三とするR.5480(舊R.3377)一册は巻頭に「摘彔本草方劑」と題し、以下に「由武進士官王浩刊訂」と記す。ウェブ畫像で卷四とするR.3811(舊R.3386)一册は扉に朱筆で「病症大小合參」とあり、卷頭に「錦囊摘略撮要大小合纂雜症」と題し、『雜症大小合纂』によるらしい。ウェブ畫像で卷五とするR.3822(舊R.3387)一册は扉に「雜症科策略」と朱書し、巻頭は「頭痛策略」から。ウェブ畫像で卷七とするR.5481(舊R.3376)一册は、扉に「幼科診治簡約」と墨書する。ウェブ畫像で卷八とするR.3812(舊R.3388)一册は、扉に「錦囊外科病治撮要」と墨書し、巻頭は「丹毒病症治」から。ウェブ畫像のR.3813(舊R.3403)一册は、巻頭に「吐血咳血喀血唾血合參」の記載あり、上第一段に藥味、第二段に注や口訣を記し、『雜症大小合纂』ほかからの摘錄。
 主に馮兆張『馮氏錦囊秘錄』に基づく寫本で、「馮氏正宗」は全體の假題。他卷の存否は未詳。


【合抄】

R.218(六味加減法)
 寫本一册六五葉、後補ベトナム四鍼眼裝。綠色中手新表紙、書高二八・五×幅一七・〇㎝。帙・外題ほかなし。原表紙・書頭一六葉と書末を缺き、序・目錄なし。內題なく、存第一葉「方用之、…易增減也/六味加減法」から始まる。以下に方論あって、第四葉ウラに「本集諸方按引卷之三」と題する無記年・無記名の序に、速效の方を集めて「新方」と名付けると記す。第五葉に「方案本集目錄」あって、培土固中方・滋水潤燥方~保火丸・石膏散を記す。第六葉ウラより培土固中方・滋水潤燥方…の方論あって、第四三葉の石膏散まで。第四四葉に「醫海大成外感通治海上懶翁纂輯」と題し、心得論二葉半あり。第四六葉に「祕旨本集目錄」あり、珠玉格言上篇・同下篇~辨一症之中有虛有實共二十八條・辨可治病汗禁方術を記す。第四七葉に「海上懶翁心傳祕旨」と題し、珠玉格言上篇から同下篇の途中第六五葉まで存する。漢文の書。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、相當に黃變する。無界、無邊、無魚尾、版心に葉次を寫し、欄上に現存葉次を記入。每半葉、九行・行約二六字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れ等あり。蟲損なく、版心切れと破損は甚大。
 『本集諸方按』卷三新方および海上懶翁『醫宗心領』卷六三珠玉格言からの拔抄で、方論と醫論の書。一九世紀の筆寫。

R.221(南天藥性賦)
 寫本一册七八頁、後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶厚手表紙、書高二六・七×幅一五・五㎝。帙なく、綠色厚紙で表紙樣に包む。外題・背書なし。序・目錄なし。卷首に內題なく「南天藥性賦」と題する藥性賦六葉あり、漢文に小字の字喃で注記。以下本文は「南天藥性 卯堂新撰近用」と題する漢文の七葉で、藥名と藥性を大書、小字で各家藥論・應用を記す。柴胡・南星・前胡・香附・紫蘇・葛根・薄河(ママ)・荊芥・藿香・白芷の順で、扁豆・萆薢・薏苡・車前子まで。注記には東垣・仲景・丹溪・日花(華)・本草・易老・唐本を引くので、參照は『本草綱目』ないし『證類本草』と『東垣十書』の可能性あり。さらに「藥性歌括 共貳百四十味」と題し、人參・黃耆・白朮・茯苓・甘草・當歸・川芎の順で、各藥一行に氣味と一二字の主治を漢文一六葉に記す。加工等は小字で注記。末尾は天靈蓋・人乳・童便・生薑まで。次に「增補南天藥性」一葉あり、漢文で土茯苓・萆薢・松節・雲母を記す。次いで「家傳治痘演音」一六葉あって、痘疹治療を漢喃文で一論~七論まで記す。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で多く版心切れし、全體に黃變する。無界、無邊、無魚尾。每半葉、約八行・行約二〇字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引きあり。蟲損・破損なし。
 『南天藥性』『藥性歌括』『家傳治痘演音』からなる合寫本。一九世紀の筆寫か。

R.474(脈法)
 寫本一册七七葉、後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二八・三×幅一七・二㎝。帙なし。外題・背書なし。書頭に亂葉あり、これを復元して記す。オモテ部分を缺く半葉の第四葉に「新□(撰?)聚寶書卷序」と題し、「醫家德光府(今の義安省)眞福縣勇决社祖科兼良醫歸依三寶嚴師(謹□/集撰)…」、第三葉に「民生而知之…亦助國」、第二葉に「一囊之處…故曰聚寶脈書…補益云耳」の序。そのウラに「脈法目籙 阮□師謹撰籙載下」と題し、「左手仰掌圖・右手仰掌圖~腎臟主病歌・肺臟脈歌」、第一葉に「肺臟主病歌・脾臟脈歌~增補訣年月病死歌・增補訣日脈病死歌」の目錄、裏に左手仰掌圖あり。手掌の四圖のうち二圖は潔古脈訣より引用・補入。七表八裏の脈圖(運氣圖樣)は多く叔和脈訣からで、第一六葉まで圖説あり。これら圖は樣式化されるので、刊本に基づく筆寫と推定できる。第一七葉からの本文は漢喃文で七診法訣脈歌・九候應部脈歌訣とあり、第五四葉オモテまで。同ウラより脈辨・新刪國語脈訣・重訂保産經驗國語・炮製國語歌があり、第七七葉の書末には病症と治法あり。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、全體に黃變し、多く版心切れ。無界、無邊、無魚尾。上邊に葉次を鉛筆書き。每半葉、八行・行二五字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損なく、やや破損。
 『聚寶脈書』『脈辨』『新刪國語脈訣』『重訂保産經驗國語』「炮製國語歌」の拔抄書。訣を訳に書く。一九世紀の筆寫か。

R.692(加減十三方)
 寫本一册一一一葉、後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二九・三×幅一六・五㎝。帙・外題ほかなし。書頭を缺き、序・目錄なし。內題なく、本文は雜多な治方を漢喃文で列記する。第一〇葉に「華陀眞人瘡脈論」と題し、漢文で癰疽等の論と治方。第三六葉に「銀海精微卷 五輪八廓總論」と題し、漢文で眼科の治方。第四六葉に「家傳神仙經驗妙藥神機」、第五二葉ウラに「家傳經驗目痛神機」、第五九葉ウラに「以上諸方藥家傳經驗妙藥神機祕訣完卷共□張」と記す。第六〇葉に叔和脈訣、第六四葉に臟腑脈訣、第六五葉ウラに死生脈詩、第七五葉に海上懶翁心傳祕旨を記し、第八二葉まで醫書。第八三葉に「前赤壁賦 南年壬戌…」と題し、第八四葉ウラまで。次に送貧祭文、第一〇二葉に「誠齋黎先生六旬雙壽門生賀帳文」あって書末第一一一葉まで漢文で記す。跋・識語なし。料紙は中葉ゾー紙で、僅かに黃變する。無界、無邊、無魚尾。下欄に葉次を記入。每半葉、八行・行約二四字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に書き入れ等なし。蟲損・破損なし。
 『銀海精微』『家傳經驗妙藥神機祕訣』「脈訣書」、および非醫學の「前赤壁賦」「誠齋黎先生六旬雙壽門生賀帳文」など雜多な拔抄からなる合寫本で、「加減十三方」の書名は不適切。二〇世紀の筆寫だろう。

R.1199(藥性賦)
 寫本一册一三五葉、後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二八・四×幅一六・二㎝。帙なし。外題・背書なし。序・目錄なし。書頭に「藥性賦」と題す。以下本文は「醫道甚大、藥性極靈、辨寒温平熱之性、察草木土石之形…」と記し、黃耆・人參・白朮・赤芍・茯苓・地黃…の順で、氣味と六字の藥性を漢文で記す。末尾は…蘇木・藿香・神曲(麹)・青蒿・淡竹で、「以上藥性之敷陳、妙在學人之熟讀、定君臣佐使…」を記す。次に「直解指南藥賦」と題し、「天書粤(越)定南邦、土産有殊北國」と述べて治法ごとの藥味を列記する。次に「澤園門傳集要書 十三篇/上七篇 羅浚佐領官先生著/下六編 澤園先生續 先生春澤社人」と題し、吐瀉門第一から癰疽門第十三までの論治を漢喃文で記す。次に別筆で「醫學目錄/北寧太醫院阮三/所撰」と題し、上下二段に分けて病門別の論と治方を中風部~婦人部までと附錄を漢喃文で記す。次に「諸病主藥」と題し、症候別藥味を二段に列記。また臟腑別の補寫温涼藥、無關係の醫方を記す。次に「增補八陣新方詩歌輯要」と題し、補陣~因陣まで處方の主治・藥味の歌訣を記し、『景岳全書』の影響あり。以下に妊娠禁服・五臟虛實補寫・觀形察色・聴聲審音・脈訣ほかの詩訣、藏象・人身賦・用藥賦などを漢喃文・漢文で記す。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、一部黃變する。無界、無邊、無魚尾、下邊に通し葉次を鉛筆書き。每半葉、八行・行約二五字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損なく、僅かに破損。
 『藥性賦』、慧靖『直解指南藥賦』、羅浚佐・澤園先生『澤園門傳集要書』、阮三『醫學目錄』、『增補八陣新方詩歌輯要』ほかの拔抄からなる合寫本。筆寫は比較的丁寧。一九世紀の筆寫か。

R.1679(藥性賦)
 寫本一册六四葉、後補ベトナム四鍼眼裝。表紙を脱落し、綠色厚紙で表紙樣に包む。書高二八・五×幅一六・〇㎝。帙なし。外題・背書、序・目錄なし。卷首に「藥性賦 略述主治大概/寶亭居士堅如甫撰」と題す。以下本文は「百般草木、萬種禽獸、陰陽之氣有別、上下之品不同、其味…」と漢文で記し、白朮・人參・茯神・遠志・酸棗の順で主治を數文字で述べ、第一〇葉の伏翼・壁賊・喜雀まで。續けて常合藥・禁忌・七情、第一二葉の末尾に「則醫家遜席、萬病回春、雖和扁名醫、不能以擅美於前代。藥性賦完 成終畢」と記す。次に「經穴撮要略編 按醫學云」と題す漢文の經脈流注が第一四葉まで。次に「血氣灌注十二經絡晝夜週而復始歌」が漢喃文で第一六葉まで。第一七葉に漢文の造射(麝)香法、第一八葉に「何氏祖傳三十六種實籙/本方專治三十六種瘋…」と題し、漢文で第三三葉まで。次に漢文の「家傳集驗良方」が第三五葉まで。以下は非醫書との合册で、書末まで主に占術・詩論を記すが、第四四~四六葉のみ漢文の「家傳藥方」。跋・識語なし。料紙は中葉ゾー紙で、やや黃變する。無界、無邊、無魚尾。上邊に葉次を鉛筆書き。每半葉、約六行・行二〇字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損・破損あり。
 寶亭居士堅如甫撰『藥性賦』、「經穴撮要略編」『何氏祖傳三十六種實籙』『家傳集驗良方』「家傳藥方」と非醫書から拔抄の合寫本。一九世紀の筆寫か。

R.1895(直解指南性藥賦)
 寫本一册、後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二八・九×幅一六・〇㎝。帙なし。外題・背書なし。內封に「世醫家傳德旺阮四民」を墨書。序・目錄なし。卷首に「直解指南性藥賦」と題し、「欲惠生民、先尋性(聖)藥、天書粤(越)定南邦、土産有殊北國…」と述べて治法ごとの藥味を漢文で列記する(R.1199本にほぼ同)。次に「性藥賦」と題し、以下本文は「醫道甚大、藥用極靈、辨寒温平熱之性、察土木草石之名…」と記し、黃耆・人參・白朮・赤芍・茯苓・地黃の順で、氣味と六字の藥性を連續して漢文で記す。末尾は…蘇木・霍香・神曲(麹)・青膏(蒿)・淡竹まであり、「以上藥性之條陳、妙在學人之熟讀、爲君爲臣爲佐爲使…」を記す(R.1199本にほぼ同)。次に「氣味篇」一葉弱は漢文で金元流の氣味論。次に「性藥歌」と題し、温性・寒性・熱性・甘味・辛味・苦味・鹹味・酸味・平味・寒涼味に分類した各藥の氣味・主治・加工等を漢文一~二行で記す(漢喃研究所のVHv.2951『藥品寒性賦』と類似)。次に七表八裏九道脈名の漢文脈診論、漢文の「入門審候歌」あって小兒の虎口三關圖あり。以下は「世醫家傳演音歌」と題し、漢喃文で臨床全般の要訣を二名の筆で記し、汝初翁・景翁・馮先師の名を擧げる。また「家傳治病良方」と題する面部の漢文望診口訣あり、以下は「謹撰諸方經驗」と題する病門別の漢喃文方論書が書末まで。跋・識語なし。料紙は中葉ゾー紙で、全體に黃變する。無界、無邊、無魚尾。每半葉、八行・行約二五字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損なく、僅かに破損する。
 『直解指南性藥賦』「氣味篇」「性藥歌」「入門審候歌」「〔世醫家傳〕演音歌」「〔家傳〕治病良方」『諸方經驗』などの拔抄からなる合寫本。辰(時)の避諱あって、嗣德年閒(一八四八~八三)の筆寫らしい。

R.1896(集驗癰疽)
 寫本一册八五葉、後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二五・三×幅一四・六㎝。帙なし。外題ほかなし。序・目錄・內題なし。本文は治長岳(皮膚の膿腫か)門から始まり、以下は丹疽幷夆症の圖・治方が第九葉まで。第一一(實際は一〇)葉に疔瘡門と題し、治方と圖説が第一八葉まで。第一九葉に「大河外科樞要目錄卷之上」と題し半葉に發背・發脳~赤瘤・瘡癬まで三五(實際は三六)門を列記。以下、第三七葉まで各門每に上段は詩云と題する歌訣、下段は症狀・治法を列記。第三八葉から治方で、神仙金丹・奪命丹~三藥丸・人參敗毒の主治・藥味・製法・服用法を記す。第五〇葉に「祕論二十三方」と題し、定痛太乙膏~疔瘡經驗方の藥味と論を記す。以上みな漢文。第六六葉に「十三方加減」と題し、一・不換金正氣散、二・二陳、三・參蘇、四・四物、五・五苓、六・玄武湯、七・參蘇、八・小柴胡、九・靈驗對金、一〇・十補湯、一一・烏藥順氣、一二・五積、一三・四君子湯を第八五葉まで漢喃文と漢文で記す。跋・識語なし。料紙は上質の薄葉ゾー紙、僅かに黃變する。押し目罫線あって、無魚尾。下欄に葉次を鉛筆記入。每半葉、約一〇行・行二五字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引き、書き入れあり。蟲損・破損なし。
 越籍らしい『大河外科樞要』存上卷(「祕論二十三方」を含む三八~六五葉は下卷か)、元・徐和用『加減十三方』の漢喃譯『十三方加減』の合寫本。一九世紀の筆寫か。

R.2010(本國南藥品記)
 寫本一册六八葉、後補ベトナム四鍼眼裝。澁引き焦げ茶中手表紙、書高二六・三×幅一五・五㎝。帙なし。外題ほかなし。序・目錄なし。書頭に「本國南藥品記」と題し、以下本文は貫衆・三奈・茅香・蘆根の順で、各藥につきベトナム名(字喃)・氣味・主治を各一行で第一二葉まで記す。末尾は官粉・敗鼓皮・葛花・茘殻・錄(糠)粃まで。第一二葉に「本國食物記」と題し、穀部・菜部・魚部・介蟲部・禽部・獸部の順で粳米・稻米~水牛・黃牛があり、各食物につきベトナム名(字喃)、氣味・主治・禁忌を各一行に第二六葉まで記す。第二七葉に「十三方加減」と題し、漢喃文で第三〇葉まで記す。第三一葉に「一跡三車神」と題し、以下は書末第六八葉まで漢喃文で神事の方法・規則・祝文ほかを記す。漢文と漢喃文の書。跋・識語なし。料紙は薄葉ゾー紙で、やや黃變する。無界、無邊、無魚尾、欄上に葉次を記入する。每半葉、六行・行約一五字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。神事書部分のみ朱點・朱引きあり。かなり鼠損あり、やや破損する。
 越籍の簡便本草『本國南藥品記』『本國食物記』と方論『十三方加減』の拔抄で、神事書『一跡三車神』との合寫本。一九世紀の筆寫か。

R.2046(痘中雜症)
 寫本一册八一葉、後補ベトナム四鍼眼裝。表紙缺、書高二八・三×幅一五・五㎝。帙なく、綠厚紙で表紙樣に包む。外題ほかなし。書頭を缺き、序・目錄・內題なし。まず人體圖あり、本文は漢喃文で「部位/六腑五臟歌」から。以下に五行五臟屬面部圖・初熱放標各症屬五行論・疹痘圖・五行屬面部・痘中雜症歌・疹痘手脈男左女右各圖・疹痘脈歌…あり。第九葉ウラに「疹痘卷二」を記し、以下は痘疹の症每に論・圖・治方ほかを記す。第一五葉に第三卷、第二五葉に第四卷、第二七葉ウラに「傷寒大成中相舌法終」とある。以下は病門別醫方書で、治方の主治・藥味・調整法を書末第八一葉まで列記。一部處方は出典を明記し、『活幼』『回春』『本草』『景岳』『入門』『國音』あり、漢喃文の書。跋なく、書末に阮春研・陶文芍・陶文東・武文志の試驗成績記錄あるが、本書と無關係だろう。料紙は中葉ゾー紙で、僅かに黃變する。無界、無邊、無魚尾。下欄に葉次を鉛筆記入。每半葉、九行・行約三一字、小字雙行。四周雙邊で「THU VIEN / QUOC GIA」(國家圖書館)の藏印記。全書に朱點・朱引きあるが、書き入れ等なし。蟲損・破損なし。
 越籍の『疹痘』と清の張璐父子ら『傷寒大成』の拔抄、および越籍の未詳病門別醫方書からなる。一九世紀~二〇世紀の筆寫。

【分類未詳】

R.1702(衞生新錄國音[一九二七])
R.2087(醫家詩策集)
R.2121(醫家正宗捷效)

 右三書、申請するも見つからない。

※本稿は文部科学省平成十五・十六年度科学研究費特定領域研究(2)「東アジアにおける医薬書の流通と相互影響」による。