真柳誠「水戸藩の医学と医療」資料
1 水戸藩医等の医学関連著述・翻訳と出版
○徳川光圀:奇方西山集8巻16冊(水戸の文籍による)、(和蘭訳語1冊)
○小川宗本(1652--95):方書摘要5巻5冊(天和2、1682序・跋)
○板垣宗憺(1638--98):水戸彰考館所蔵本の明・李中梓(1588-1655)『医宗必読』10巻を復刻(1687)
○穂積甫庵(鈴木宗与): 救民妙薬1冊(元禄6、1693刊)、妙薬単方1冊(元禄7刊)
○加藤宗博(1664--1728):脈位弁正1冊(享保5、1720刊)、医学澄源1冊(享保7刊)、廬経(衣+臼)腋(ろけいほうえき)2巻或問1巻5冊(享保7刊)
○谷田部東壑 (とうがく) :撃蒙篇1冊(1771--73頃)、克成編(近世漢学者著述目録大成による)、東壑筆記1冊
○原南陽(1752--1820):脚気篇(本朝医家著述目録による)、寄奇方記 1冊(安永9成立)、{ヤマイダレ+契}狗傷考1冊(安永10序、天明3刊)、経穴彙解8巻8冊(文化4序)、解毒奇効方1冊(天保9刊)、西遊雑記(本朝医家著述目録による)、三喜直指篇3巻3冊(寛政2刊)、産論経験(本朝医家著述目録による)、産論翼治験(本朝医家著述目録による)、傷寒夜話5巻5冊(弘化3刊)、針図、叢桂遺草1冊、叢桂偶記2巻2冊(寛政12序・跋)、叢桂亭医事小言7巻8冊(享和3自序、文政3跋)、叢桂亭随筆(水戸の文籍による)、叢桂亭蔵方1冊、叢桂亭薬語1冊、 痘策1冊(寛政6成立)、痘疹論、痘瘡策1冊、痘瘡書1冊(寛政6成立)、砦艸1冊(文化元序)、南陽先生遺稿2冊、南陽先生薬語1冊、南陽原子柔蔵方1冊、南陽原先生文集2巻2冊、年疫治験1冊、百金録 (本朝医家著述目録等による) 、腹候、復坐録1冊(文化元序)、査魚志(まんぼうし)1冊、水戸原氏家譜1冊、薬記叢記(本朝医家著述目録による)
○木内玄節(1769--1833):奇方録3巻、草木形状録8冊(文政10、1827成)、常陸物産誌24巻(文政間成)、本草綱目記聞校(文政12写)
○佐藤中陵(1762--1848):異色鷹譜(いしょくたかのふ)1軸(文化頃?成立)、温故斎菌譜1冊【別書名】菁莪堂菌譜、温故斎五瑞編1冊(寛政8成、国書解題による)、温故斎{艸+浸}志(しんし)1冊、温故斎附子弁1冊【別書名】附子弁飼籠考(かいここう)10冊、飼籠鳥(かいこどり)20巻(文化5成)、怪石志3巻3冊(寛政7成)、奇説雑編、救荒本草訳説1冊(寛政8成)、驚蕈録(きょうしんろく)【別書名】五瑞編(ごずいへん)1冊(寛政8序)、金薯録1冊(寛政7成)、採薬録5巻5冊【別書名】採薬記(寛政6成)、薩州産物録(寛政4成立)、山海庶品、七十二候新撰1冊(天保14成立)、周游雑話1冊、{艸+浸}志(しんし)1冊、{艸+浸}性秘録1冊(寛政4成)、石炭1冊、剪燈録 (せんとうろく)1冊(寛政7成立)、草花写生図譜1冊、楚辞草木略1冊、鼠族図譜(そぞくずふ)1冊、中陵漫録、博物図20冊、黴瘡秘録薬名考1冊(寛政7序)、蘋弁1冊【旧書名】蘋辨(うきくさのべん)(寛政4成立)、聞見雑記1冊(弘化4成立)、聞見小録2冊、本草和名1冊、流{虫+(乱-舌)}(りゅうきゅう)百花譜2巻、六物弁、和名鈔塞問1冊(文政10成立)
○関口玉岡:医門{門+規}観1冊(文政8、1825刊)
○青地林宗(1775--1833):医学集成1巻(文政11成立)、依百乙(いぺい)薬性論、和蘭産科全書3巻、気海観瀾1冊(文政8序、同10刊)、気海観瀾補数1冊、居家備要 (天保3成立)、金備輿地誌65冊(本朝医家著述目録による)、工斯牛痘編1巻、工斯貌爾觚 (こんすぶりっく)、公私貌爾(こんすぶりっく)内科書18巻、昆斯貌觚(こんすぶりっく)凡例7巻、衆家経験千方1巻(本朝医家著述目録による)、製剤篇2巻(本朝医家著述目録による)、西洋奇器叢記8巻(本朝医家著述目録による)、遭厄日本紀事12巻付録2巻、泰西医家書目3巻(本朝医家著述目録による)、地学示蒙、内科嚢記1巻(天保3、1832成立、日本医学史による)、訶倫(ほーるん)産科書3巻3冊、奉使日本紀行(文政年間成立)、輿地誌65巻(西洋学家訳述目録による)、輿地誌略6巻(文政9成立)
○本間道偉(1787--1866):傷寒夜話5巻5冊(弘化3刊)
○佐藤鶴城(方定、?--?):医家千字文 (本朝医家著述目録による)、医語拾遺(日本医学史・本朝医家著述目録・水戸の文籍による)、御薬考(おくすりこう)1冊(本朝医家著述目録による)、華夷班断鈔1冊、奇視2巻(国書解題による)、奇魂 (くしみたま)【別書名】尚古医典2巻2冊(天保2刊)、楮木考(こうぞこう)1冊(天保8成立)、幸魂 (さきみたま)10冊(本朝医家著述目録・水戸の文籍による)、産霊攷(本朝医家著述目録・水戸の文籍による)、衆病古名攷3巻(本朝医家著述目録による)、真仙伝1冊(水戸の文籍による)、神伝腹証論(日本医学史による)、神伝脈論1巻(本朝医家著述目録による)、神方経験(日本医学史による)、術魂2巻【別書名】神鍼方(本朝医家著述目録等による)、宗原医談1巻(本朝医家著述目録による)、忠孝招魂論1冊(水戸の文籍による)、とし玉1冊【別書名】年玉集(天保10序)、神籬伝質問(ひもろぎでんしつもん)、標註本朝食鑑11巻(日本医学史による)、備急八薬新論3巻3冊【別書名】奇魂附録/備急蓬莱八薬新論(安政5序、奇魂附録/備急八薬新論翼を付す)、八千種 (やちぐさ)(本朝医家著述目録による)、鎧之袖 (よろいのそで)1冊(金創治方、本朝医家著述目録等による)、霊運考1冊(水戸の文籍による)
○柴田方庵(1800--56):書式雑記、方庵雑話、蘭医柴田方庵先生日記
○徳川斉昭(1800--60):医弊説1冊(天保7、1836成立)、景山菓子1巻、景山奇方集(別名、仙伝秘方集)55冊、景山救痘録1巻、景山食薬1巻、景山薬方1巻、景山和薬集、香物百珍1冊、鮭漁(さけりょう)百箇条1冊(水戸の文籍による)、食菜録3巻、養蜂録1巻(諸大名の学術と文芸の研究による)
○本間棗軒(1804--72):医方纂要5冊(本朝医家著述目録による)、牛痘之弁1冊、経穴採要1巻(本朝医家著述目録による)、芸園手簡、種痘医譚1冊、種痘活人十全弁1冊(弘化3刊)、傷寒論類釈(本朝医家著述目録による)、新割血瘤記1冊(安政2成立)、自準亭経験方匱1冊、自準亭雑識2冊、自準亭治方約言1冊、棗軒翁薬室雑識1冊、続瘍科秘録5巻5冊(安政6刊)、内科秘録14巻14冊(元治元刊)、日新医談1冊、乳{山+品}(癌)新割図識1冊(嘉永2刊)、膀胱結石図1冊、薬室雑誌、薬室雑識【別書名】自準亭日診雑識、瘍科断截図1冊、瘍科秘録10巻12冊(天保8自序、弘化4刊)、療治知要5冊、蠡測編
(れいそくへん)1冊
2 医学流派
○後世方:板垣宗憺、小川宗本、穂積甫庵、加藤宗博(後世方別派)
○古方:谷田部東壑
○(後世方古方)折衷:原南陽
○蘭学(方):徳川光圀、青地林宗、関口玉岡、柴田方庵
○漢蘭折衷:本間棗軒
○和方:佐藤鶴城
○本草・博物:木内玄節、佐藤中陵、徳川斉昭
3 医療政策・制度の先駆性とネットワーク
○衛生:笠原水道の敷設(光圀)
○福祉:「お救い」制度創設(光圀)、殉死の禁止(頼房遺言、寛文元)、間引きの禁止(治保)、常平倉の設置(斉昭、天保年間)、弘道館医学館での製薬(斉昭)
○医学教育:『救民妙薬』の出版(光圀、元禄6)、小川稽医館(本間玄琢、文化元)、叢桂亭(原南陽)、自準亭(本間棗軒)、『医弊説』(斉昭、天保6)、弘道館医学館(斉昭、天保14)と各地に郷校を設立(斉昭)
○予防:種痘(人痘、天保13)、本間棗軒に種痘を実施(牛痘、嘉永3)させる(斉昭)