似たような弁当を2晩続けて食べたので、まとめて原寸大で紹介することにした。
主菜はご覧のようにトンカツに酷似したもの。もちろん豚肉の揚げ物だが、この一群を台湾では単に排骨(Pai Gu)と通称する。排骨とは本来肋骨、つまりあばら骨(リブ)のことだが、中国語では転じてリブ肉をいう。さらに南方料理ではそれを唐揚げにすることが多い。それゆえ香港でも横浜中華街でも「排骨飯」(横浜ではパイコーハン)といえば、このトンカツ風唐揚げに2、3品ついた定食をいう。
しかし日本のトンカツと違うのは肉が薄め(叩いて伸ばしている)だったり、普通は衣にパン粉を使わないということだけではない。一番重要(らしい)のは、リブ肉ということ。トンカツは基本的にロース肉だが、実際はフィレ肉でもモモ肉でも豚肉なら日本はトンカツという。
ところが中国では、この種の唐揚げに必ずリブ肉を使う。一番美味しいからだろう。そのため排骨○○という料理には証拠としてあばら骨の一部が必ず、いや絶対に付いている。以前は不注意にガブリとかじり、ありゃー骨だとあせったが、最近は衣の上から骨のある部位が一目で分かるまで目が利くようになった。下写真のカツのどこに骨の断片があるか見分けられるだろうか?答えは右上の端。
どうも以上のことから転じたらしい。台北では弁当屋の看板などに「魚排」や「鶏排」などがあって、以前は魚や鶏のリブ肉なんて、こりゃー何だ?と思っていた。でも、以上の事情が分かるなら、それらは普通、魚丸ごとや骨付き鶏胸肉の唐揚げのこと、とご理解いただけるだろう。
ただし「牛排」は本来、牛のリブステーキだったはずだが、転じてビーフステーキ全般を指すようになっているようだ。さらに「猪(ブタ)排」もポークステーキ全般に転じているから少々ややこしい。
副菜:
左上はキュウリとイカ練り物(日本のより腰がある)のにんにくドレッシング和え
下左はトウガン(冬瓜)と千切り豚肉の豆板醤炒め。でも冬瓜が妙にシャキシャキし、青臭くていただけなかった。冬瓜はトロリと煮るのが一番と思うが、台北では古い味覚なのかな?
下中央はチンゲンサイとニンジン千切りの塩味炒め
下左は大豆もやし・ニンジン・キクラゲ・挽き肉の醤油味炒めとろみ仕立て
さて下の8月7日の夕食も大差ない。仕事から宿舎に戻るのが大体夕方6時ころ。オツムは閲覧時間と争う調査でかなり疲れており、少々空腹でも外出する気にはなれない。取り急ぎビールで水分を補給したいのだが、宿舎の禁煙食堂で定食相手に毎晩一人酒では、いささかアブナイ日本人になってしまう。
ということで、定食(日本とは違い、同一価格で主菜・副菜を選択できる)を弁当に入れてと注文し(どこでも器代はなぜか無料)、部屋で個食という毎晩になってしまう。大陸中国人からすれば寂しい食事だが、この弁当個食が台湾で定着しているのは日本統治のために間違いない。合理的だけど。
副菜:
左上は豆腐干(本当に豆腐の水分を飛ばしたもの)・豚モツ・ピーナッツの醤油味煮
下左は三色ベジタブル・鶏肉練り物の胡椒味炒め
下中央は空心菜のショウガ塩味いため。空心菜は茎が中空による呼称に違いないが、和名は知らない。ほうれん草なみの濃い緑色と、シャキシャキした歯ごたえがあり、私はかなり好きな野菜。ここ10年くらいは北京でも料理に出るようになったので、たぶん南方から来た野菜のように思う。
下右は大豆モヤシ・キクラゲ・豚肉の塩味炒めとろみソース和え
このように同じトンカツ弁当ではあるが、日々違うバージョンで食べることができる。しかも美味しいし、安い。とは言っても、やっぱり飽きるね。たまには別の食事がしたい!、と心底想うのも当然だろう。でも日本に帰ったら、きっとこの定食が懐かしくなるんだろうなー。