1.癌抑制遺伝子の機能解析

 代表的な癌抑制遺伝子であるp53は、癌の約半数に変異や欠失などの異常が見られる。またゲノムレベルの異常だけでなく、タンパク質分解の亢進や転写・翻訳レベルにおける発現抑制など様々な機序により不活性化されている。p53は転写因子として機能し、細胞周期制御やアポトーシス誘導などに関連する様々な下流遺伝子の発現を誘導することによって癌抑制機能を発揮するが、我々のグループではこれまでにマイクロアレイ解析によって数多くの新規p53下流遺伝子を同定してきた(図1,21-4

1−1.p53下流遺伝子の機能解析

 p53による翻訳後修飾の制御についてはこれまでほとんど明らかとなっていなかった。我々は最近、p53がタンパク質修飾酵素であるPADI4を発現誘導し、複数のタンパク質の翻訳後修飾(シトルリン化修飾)を制御していることを明らかとした5。現在、シトルリン化修飾がどのようにp53の癌化抑制機能に関与するか、ノックアウトマウスも用いて解析を進めている。またPADI4以外にも40以上の新規p53下流遺伝子を同定しており、これらの解析を通じて、p53を介した発癌抑制機序を明らかにすることを目指している。

1−2.新規癌抑制遺伝子の探索

 

また、p53の解析に加え、新規癌抑制遺伝子の探索を進めている。1000例を超える癌検体の遺伝子発現情報を用いて6, 7、癌細胞で発現が顕著に低下している複数の遺伝子を抽出した。癌においてこれらの遺伝子がどのような機能を担っているか解析を進めている。

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