巨悪の安眠
特捜敗れたり!!ディオバン「事件」は,やっぱりでっち上げだった-

日本高血圧学会は,組織ぐるみの利益相反に基づき,(特定の品目ではなく)降圧剤全体の有効性を包括的に誇張した.その点でこれ以上の悪質な誇大嘘大広告はない.それでも日本高血圧学会のお歴々がお縄にならない.この事実は,以下のような特捜の判断を示している。

1)ディオバン「事件」は,決して東京地検特捜部が主張するような,白橋伸雄氏個人犯罪ではなかった。
2)ディオバン「事件」は,ノバルティス社から奨学寄付金を受けた,日本高血圧学会幹部のお歴々にによる組織ぐるみの犯罪だった。
3)しかしながら,東京地検特捜部はそのような真実を公訴事実として起訴する能力がなかったので,白橋伸雄氏個人の犯行としてお茶を濁すしかなかった。(←これを世間では「でっち上げ」と呼ぶ)
4)今回,またしても,日本高血圧学会による組織ぐるみの誇大嘘大広告(エビデンスがないのだから当然そうなる)が作成された。しかも今回はディオバン事件よりも数倍悪質である。なんとなれば
 4)-1 ディオバン「事件」の場合には
 4)-2 「メタ解析」と称する証拠偽造手段(もちろん検察には全く理解できない手法を用いた
 4)-3 さらに堂々と「ガイドライン」として公開するという大胆極まる犯行
5)こんな難しい案件は,罰ゲームも同然である。絶対やりたくない。

かつて「巨悪を眠らせない」と大見得を切った特捜自らが,「どんなでっち上げをしてでも,起訴して有罪にする」という社是を撤回する,コペルニクス的転回を果たし,組織ぐるみの誇大広告なんて筋の悪い案件は,GCPが何の略かも知らない我々にとって,労多くして功少なし(=でっち上げるだけの価値がない)と判断できるようになったことを意味する。
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「疑念」が深まるばかりの改訂高血圧GL「130/80mmHg未満」の科学的根拠はどこに 医薬経済2019/6/1

4月25日、日本高血圧学会から新たな高血圧ガイドライン(GL)が刊行された。今回の目玉は「降圧目標値の引き下げ」だ。合併症や臓器障害のない、つまり心血管系リスクの低い高血圧の降圧目標が、前回GLまでの「140/90mmHg未満」から「130/80mmHg未満」に引き下げられた。
しかしこの推奨には科学的根拠(エビデンス)がない。GL自体が認めているところで、14年に公表された前回GL作成時に「合併症のない高血圧患者を対象とした介入試験において、130mmHg未満への降圧による予後の改善は明らかでなく」、その後もこのような低リスク高血圧に対する収縮期血圧「130mmHg未満への降圧」が有用と証明する臨床試験は報告されていないと、52頁に記されている
にもかかわらず、「これらのいくつかの臨床試験のメタ解析」では、収縮期血圧130mmHg未満への降圧で「冠動脈疾患や死亡のリスクが有意に低くなっている」と続け、「130/80mmHg未満を75歳未満の成人の降圧目標とする」と断ずるのである。しかしこのメタ解析の対象は、ほとんどが、糖尿病や腎臓病などの合併症を持つ「高リスク」高血圧例が登録されたランダム化試験だ。決して「低リスク高血圧」の収縮期血圧目標を「130mmHg未満」に設定する根拠とはならない。

「日本だけ孤立する必要はない」
確固たるランダム化試験というエビデンスもないのに、なぜ降圧目標が「130/80mmHg未満」に引き下げられたのだろうか。ヒントは、本GL作成委員長を務めた、横浜労災病院・院長の梅村敏氏の発言にある。
日本のGL改定をめぐって、18年4月27日に開催された日本高血圧学会プレスセミナーで梅村氏は、17年に改定された米国高血圧GLによる高血圧基準変更(「140/90mmHg以上」から「130/80mmHg以上」へ引き下げ)に言及し、18年6月に公表予定の欧州新高血圧GLも同様の変更に踏み切った場合、「日本だけ孤立する必要はない」と述べた。欧米学会の出方次第で日本GLの基準値が左右され得るという事態に、驚きを覚えた記者も少なくなかった。
そして18年に改訂された欧州新GLは、高血圧基準こそ「140/90mmHg以上」で変更しなかったものの、「140/90mmHg未満」だった低リスク高血圧患者の降圧目標を加筆し、「まず140/90mmHg未満、忍容できれば130/80mmHg以下」とした(GL本文の記載。まとめの表とは不一致あり)。ただ、この変更がエビデンス・ベースであるかは大いに疑問である。GLそのものが、ランダム化試験のメタ解析を根拠として、高血圧患者に対する収縮期血圧「130〜139mmHg」への降圧で、「130mmHg未満」と同等の心血管系イベント抑制が得られたと認めているためだ。つまり、収縮期血圧到達値は「140mmHg未満」「130mmHg未満」のいずれでも、心血管系イベント抑制作用に差は認められなかった。欧州GLが降圧目標を「まず140/90mmHg未満」と限定的に設定したのは、このためだろう。
他方、改定後、高血圧基準を「130/80mmHg以上」に引き下げ、全例で「130/80mmHg未満」をめざすとした米国の高血圧GLにはどのようなエビデンスがあるのだろうか。実は、低リスク例に対する、降圧薬を用いた「130/80mmHg未満」降圧の有用性は、やはり確固たるエビデンスに支持されているわけではない。17年の米国心臓病協会(AHA)学術集会における、同GL解説セッションで、「エビデンス」として示されたランダム化試験は、PREVER-Prevention、PHARAO、TROPHYの3つだったという。いずれも、臨床イベントを1次評価項目として評価した試験ではない。
しかしながら「130/80mmHg」という数字の「理論的根拠」は存在する。それは観察研究だ。すなわち「120/80mmHg未満」(正常血圧)に比べ、「130~139/85~89mmHg」では、心血管系イベントによる死亡リスクが1.5倍以上、有意に上昇していたことが、メタ解析の結果、明らかになった。これほどリスクが上昇している以上、「疾患」と分類せざるを得ない――これが米国の採ったスタンスだった。そのため高血圧を「130/80mmHg以上」と分類し直し、その理論的帰結として、降圧目標は「130/80mmHg未満」となった。伝わるところと異なり、今回の変更に関し、SPRINT試験の結果はほとんど考慮されていない。しかし繰り返しになるが、低リスク高血圧患者で「130/80mmHg未満」目標降圧を支持する確固たるエビデンスは存在しない。
これらの、エビデンスに乏しい推奨から「日本だけ孤立する必要はない」と欧米に追従して、降圧目標を引き下げた。引き下げの有用性を証明するエビデンスが提示されていない以上、今回の日本ガイドライン改訂はお粗末な改訂と言われても仕方がない。
もうひとつ、日本の改定高血圧GLの問題を指摘したい。それは「降圧薬を用いて低リスク高血圧例を治療する場合の目標血圧」だ。
GL公表に先駆けて4月19日、都内での記者発表会においてGL改定のポイントを解説した横浜市立大学准教授の平和伸仁氏は、質問に答えるかたちで、低リスク高血圧患者への降圧薬治療を開始する場合、降圧薬による目標血圧は「140/90mmHg未満」であり、あとは生活習慣改善を強化して「130/80mmHg未満」をめざすと説明した。だがGLに、その点を明確に記載した個所は見当たらない。
すでに一部メディアは、「新たな降圧目標は130/80mmHg未満」と報じ始めた。低リスク高血圧患者に対する降圧薬治療の目標血圧と誤解されれば、不要な降圧薬処方が増えるのは必定である。患者負担、副作用の増加、そして医療経済、いずれの観点からも問題と言わざるを得ない。
この点、高血圧学会は改めて、明確なメッセージを出すべきではなかろうか。
実際に、低リスク高血圧例を降圧薬で「130/80mmHg未満」まで下げると何が起きるか。今年に入り、興味深いデータが筑波大学から報告された。日本30地域から集めた、脳心腎疾患既往のない降圧薬服用高血圧例を観察したところ、血圧「120〜129/80〜84mmHg」という、新GL推奨値到達例では、「130〜139/85〜89mmHg」到達例に比べ、循環器疾患による死亡のリスクは1.68倍、有意に高くなっていたのだ。
同様の傾向は韓国からも報告されている。高血圧と診断され降圧薬を開始した、脳心腎疾患・糖尿病を合併していない2万例以上を観察したところ、収縮期血圧到達「120〜129mmHg」例では「130〜139mmHg」例に比べ、統計学的に有意ではないものの、心血管系疾患による死亡リスクは1.20倍、全死亡リスクも1.11倍、高い傾向にあった。低リスク例「130/80mmHg未満」への降圧は有害の可能性さえある。
日本高血圧学会が一般医や国民に対し、このGLをどこまで正確に、そして誠意を持って説明するのか、注視していきたい。

*1 [Ettehad D et al. Lancet 2016; 387: 957]
*2 [Thomopoulos C et al. J Hypertens 2016; 34: 613]
*3 [Fuchs SC et al. JAHA 2016; 5: e004248]
*4 [Lüders S, et al. J Hypertens. 2008; 26:1487]
*5 [Julius S, et al. NEJM. 2006; 354: 1685]
*6 [Curr Hypertens Rep. 2013; 15: 703]
*7 [Yamagishi K et al.J Hypertens. 2019 Mar 14.]
*8 [Seo J et al. Am J Hypertens. 2018; 31: 1033]。
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