3群以上の平均値の差の検定にはt-検定は使えない!

独立した3群以上の平均値の差の検定,例えば対照群(C群)と,降圧剤X服用群(X群),降圧剤Y服用群(Y群)(それぞれの群で,被検者(ラット でもいいですが)はまったく別の人々)では,Studentのt検定は使ってはいけません.なぜですかって,聞かないでね.t-検定の誤用の理由をどうし ても知りたい人は下記の解説をお読み下さい.

栗谷典量.医学統計の誤り.”なぜ,いけない?””どこが,わるい?”.小児内科.29;1997:1329-1336.
それと,上記論文に対する細かい突っ込み(オタクの人向け)
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/Hanasi/iron/kuritani1.html
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/Hanasi/iron/kuritani2.html

では,多群間の平均値の差の検定はどうしたらよいのか?それを以下に解説します.

1.まず,Bartlettの検定(Studentのt検定の前にF検定をして2群の分散(値のばらつきの程度)が等しいかどうか見なくてはならないことを知っていましたか?それと同じ事です)をして,C,X,Yの各群の分散が等しいかどうかを検定します.

2.Bartlettの検定の結果,各群の分散が等しければANOVAが使えます.ANOVAはその名の通り分散分析ですから,各群の分散 が等しくなければ使えません.各群の分散が等しくなければ,Kruskal-Wallisを使って検定します.Kruskal-Wallisはノンパラメ トリックな(分散に依存しない)検定ですから,各群の分散が異なる場合でも使えます.

3.ANOVAにせよ,Kruskal-Wallisにせよ,C群,X群,Y群のいずれかの間に平均値の有意差があるということがわかる だけで,ではそれが,C群とX群の間なのか,C群とY群の間なのか,X群とY群の間なのかという事はわかりません.具体的にどの群間に差があるのが知るた めには,post-hoc mutiple comparisonをしなくてはなりません.post-hoc mutiple comparisonには大きく分けて2種類あります.

1) すべての群間での平均値の差の有無を知りたいとき
2) C群とX群,C群とY群の間だけで,X群とY群の間の差は知らなくてもいい(あるいは知りたくない)とき.

1)には,Fisher, Scheffe,2)にはDunnetなどのpost hoc検定があります.それぞれ有意差の出やすさなどに特徴があり,適当に使い分けます(^^).

なお,独立2群の平均値の差の検定で,F検定で分散が等しくないと出たときはStudentのt検定は使えません.その場合には,Mann-WhitneyのU検定や,Cochran-Coxの検定,あるいはWelch検定を使います.

参考:

池田洋一郎さんの解説(私と苗字は同じですが赤の他人です)とエクセルの表は参考になります.

お医者さんと生命科学系の研究者のページへ