タミフルの都市伝説

タ ミフルに限らず、医薬品と有害事象(因果関係が「わからない」という段階での「医薬品使用に伴う好ましくない事象」の呼称)との因果関係の検証は、有効性 の検証よりもはるかに困難、というか不可能です。インフルエンザ自体にもともと脳症が合併するのですから、厳密にコントロールしたランダム化比較試験をし なければ、タミフルによるものか、インフルエンザによるものかわかるわけがない。しかし、有害事象の因果関係を証明するためにランダム化比較試験するなん て馬鹿げている。

有効性の検証でさえ、百億単位の資金と人員と年単位の時間投入してようやく証明できるかできないかなのです。ましてや有 効性のイベントよりも桁違いに頻度の少ない有害事象(有効性よりもイベント高い有害事象なんてありえませんから)について、有効性と同じレベルで因果関係 のエビデンスを得るなんてことは不可能なのです。

ですから、新薬の承認時に、規制当局、製薬企業、そして「我々」医師が共有できる副作用 情報は全てnarrative, anecdotalです。では、それが市販後はどうなるか?たしかに使用例は承認前の臨床試験よりも桁違いに増えます。しかしそれは臨床試験のようなコン トロールされた群間比較試験ではありません。交絡因子だらけです。さらにそこにreporting biasが加わる。このように市販後はただのcaosです。

そこへ、有効性評価における「使った→治った→効いた」という「三た論法」 がタミフルを服用している患者さんの行動異常に適用され、「タミフルを使った→行動異常が起こった→タミフルが原因だ」という風説が、一部の無定見なデマ ゴーグや医薬品リテラシーが欠如した人々によって流布されてきたわけです。「三た論法」が抗菌薬の宣伝に利用された悪夢の再来というわけです。

では、タミフルが本当に行動異常を起こすかどうかは永遠にわからないのでしょうか?そうとも限りません。どうせおまじない程度の有効性しかない薬なのですから、タミフルを一切使わないことにしてしまえば、タミフルの「薬害」は「根絶」できるはずです。

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