脊髄腫瘍によるくも膜下出血

(ある掲示板の書き込みを見て,たまたま調べたものの,その掲示板の水準が低いので投稿は見合わせた.しかし,せっかく調べたものを棄てるのももったいないので,ここにメモとして残す)

脊髄腫瘍を原因とするくも膜下出血は,("Subarachnoid Hemorrhage"[Mesh]) AND "Spinal Neoplasms"[Mesh] で検索すると,1973年に最初の報告がある.日本語文献に限っても,1984年の時点で,すでに46例の集積がある.『脊髄腫瘍による脊髄性くも膜下出血について. 整形外科と災害外科 1984;32:166-170』.この46例の中には脊髄動静脈奇形は入っていない.
症候面では,脊髄腫瘍からの出血でも髄膜は刺激されるから頚部痛~頭痛は生じるし,項部硬直も当然起きる.上記文献にも『頸椎部の脊髄腫瘍によるクモ膜下出血はあたかも頭蓋内クモ膜下出血であるかのような症状を呈するものもある』とある.なお,この論文が出版された(つまり掲載されているのはそれ以前の症例)1984の時点の画像modalityとしては,都市部の総合病院ではwhole body CTが備わっていたが,MRIは一部の大学病院(東京なら東大病院と当時の東芝病院)で実働していただけで,実臨床ではまだ使えなかった.だから上記論文の画像診断アプローチも脊髄造影とCTとなっている.

また下記の論文は私の指導医だった 土谷邦秋が筆頭著者となった症例報告である.私を指導してくれた彼の業績としてここに記しておく.
土谷邦秋,杉浦啓太郎 ,益沢秀明,石河利隆 :脊髄性くも膜下出血を示した脊髄腫瘍 .臨床神経 1987;27(2):228-231

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