記銘力障害の選択性

ここを読んでいるような読者の方々は,人は失敗からしか学べないこ とは,すでに何回も実体験なさってよくご存じだろう.また「人は失敗からしか学べない」警句の類を,高速道路で走っている時の速度規制標識よりも高頻度に あちこちで見かけるだろう.もちろんそれは,「人は失敗からしか学べない」ことを人はしばしば忘れてしまうからだ.誰でもすぐに覚えて忘れることがなけれ ば,高速道路で走っている時の速度規制標識よりも高頻度であちこちに警句が貼る必要はない.

そう,記銘力障害には選択性がある.成功体験は,鬱状態,自己評価の低い状態での認知障害の対象とはなっても,一旦認知されれば記銘力障害の対象とはならない.一方,失敗は容易に否認の対象になるし(失敗否認型認知症),記銘力障害の絶好の対象となる.

間違える自分に謙虚になる.予想がはずれた自分を忘れない.医者は繰り返しそう教育される.自分の(!)失敗に対する認知感度と記銘力があってはじめて失敗から学び,その学びを患者さんと,仲間と共有する.

ま るっきり逆なのが全国紙,キーテレビ局といった大手メディアに所属するジャーナリストのようなお気楽商売だと,誤った報道がどんなに人を傷つけても,一切 お構いなし.というより,報道とは,多かれ少なかれ,必ず人を傷つける商売だ.自分が毎日人を傷つけているのではと疑念を抱いていたら,ジャーナリストな んてやっていられない.だから,自分の失敗はどんどん忘れていく.失敗を忘れることが商売になってしまう.全く同様のことが,自らを無謬の神と自認する検 察官や裁判官で起こる(失敗否認型認知症).

二条河原へ戻る