「真犯人」探しごっこ

「ミトコンドリア病という話はわかりましたが,結局真犯人は誰なんですか?」という「素朴な」質問をしばしばいただく.「真犯人」探しごっこにこだわる人特有の質問である.

「真犯人は病気である」という,北陵クリニック事件の面白さの本質は,警察官も検察官も裁判官も,誰一人として脈の取り方一つ知らないのに,「筋弛緩剤中毒」という珍妙な診断をでっち上げたドタバタ劇にある.その一番おいしいところが分からない人がいる.

この事件の本質,すなわち,土橋均による「筋弛緩剤」というでっち上げは,ミトコンドリア病の知識をいくら学んだところで,決して理解できない.もちろん私は意見書の中で,このでっち上げを診断学的に完全に排除しているだが,それを理解しろなんて無理難題は要求しない.

ミトコンドリア病はこの事件の本質ではなく,筋弛緩剤中毒が完全なでっち上げであることが本質である.そして,そのでっち上げは土橋均という一人のエセ科学者によって完成されたのではなく,科捜研が,科学のかの字も知らない警察官達に支配されるエセ科学「研究」組織であるというシステムエラーに起因する.そしてそのエセ科学「研究」組織が発信するデマを支えてきたのが,国民の皆様の信仰心である.

北陵クリニック事件の場合,
1.原発巣デマ
「ミトコンドリア病のA子さんに筋弛緩剤を注射して亡き者にしようとした極悪人守大助」
↑ これは確定審まで,土橋・警察・検察・裁判所がぐるになってばら蒔いてきたデマである.

2.転移巣デマ
「ミトコンドリア病のA子さんに筋弛緩剤を注射して亡き者にしようとした極悪人が別にいる.そいつを捕まえることこそが守さんを救う道だ」
↑ これがいまだに,事件性のない事件=でっち上げの張本人土橋均,という事件の本質を理解できない人々の頭の中に自然に植え付けられて容易に除去できないデマである.転移巣デマは確定審までの原発巣デマと本質的な構造は変わっていない.

土橋と検察はこの転移巣デマを利用して,我々の追求の手から逃れ,原発巣デマも維持してきた.

原発巣デマも転移巣デマも,多くの人の意識の下にある,「科学捜査が事件をでっち上げるなんて・・・・まさか・・・・」と思ってしまう,「科学捜査」に対する篤い「信仰心」に根付くものだから,その人の科学に対する信仰を排除しなければデマも排除できまない.

本来,この信仰の排除は,「疑問を持つ,定説を打ち破る」という科学の本質を理解することによって可能なのだが,今はそんなに悠長なことは言っていられないので,「警察官・検察官・裁判官が,揃いも揃って誰も全く科学を知らないのをいいことに,自分の業績をでっち上げたエセ科学者・ペテン師.それが北陵クリニック事件の真犯人である」という,わかりやすい構図を示して,守君を解放する.我々の今の戦略を言語化するとそういうことになる

本来の質量分析とは,精密質量を測定して分子式を特定して初めて完結するのであって,その装置も持たずに「ベクロニウムが出た」とは,笑止千万,臍が茶を沸かす,お話しにならない.「質量分析データの正しい見方を知ってますか?」には,全くの素人の私にもわかりやすく書いてある.土橋鑑定(というより科捜研全体に)に証明能力がなかったことは,この解説を読めば一「読」瞭然である.

一般市民としての医師と法